第百五十六話 一方その頃岐阜では
若干色々と間違ってるかも。
許してください。
数日後 美濃 岐阜城
織田が強大な勢力となる最初の足掛かりとなった美濃岐阜城。
そこは今、慌しさに包まれていた。
侍女や兵士達、将達までもが忙しなく動き回っていた。
理由は単純明快だ。
駿河と遠江を領地とする今川、関東一帯を治める”関東の雄”北条、戦国一と名高かった武田と並び称される上杉。
対徳川の為に同盟を組む三国の当主や、将達が同盟締結の為に岐阜城にやってくるのである。
その為、本来ならば饗応役に相応しいのだが、安土城の普請で忙しい丹羽長秀の代わりとして饗応役に任命された松永弾正久秀と細川与一郎藤孝、同盟締結するにあたっての取り決め等の決め事を考え、提案する側である”軍監”竹中半兵衛重治もまた、忙しそうであった。
「……だからといって俺が放っておかれているこの状況は良いのだろうか」
そんな中、唯一暇じ――余裕のあった織田の最高権力者たる織田信長は、城の一室で不貞腐れていた。
普段ならば信長の世話をしてくれる女中達も揃って仕度に当たっていた。
だが、この結果は信長の自業自得であった。
元々、信長の世話をする女中の数は多かったが、それを煩わしく思った信長自身が少なくしたのだ。
それに加えて、信長の隣にはお濃の方がいる事が多く女中が必要無かったという事もあるし、信長が女中に世話を焼かれる事を嫌ったのだ。
しかも、現状織田軍は多方面に展開しており、信忠の方に女中を多くつかせた事もあって、岐阜城には最低限の女中しかいなかった。
その結果、同盟者に会うとはいえ、『いつもの恰好で構わない』と言った信長は放っておかれたのである。
「……やれやれ、気付けに酒でも飲むか」
そう言って立ち上がる信長が部屋を出ると、
「…………先読みしてやがったな」
部屋の前にきっかりと徳利と杯が乗った盆が置かれていた。
嬉しそうにそれを部屋の中に持っていき、徳利から杯に注ぎ、それを一気に傾け――
「――ゴホッ!!」
思いっきり咽た。
信長は眉を顰めて杯を睨み、
「……これ、ただの水じゃねぇか。畜生」
恨みがましそうな声で、そう言った。
それを聞いた者は、勿論いなかった。
最初に到着したのは織田と長年協力関係にある今川家当主今川氏真とその家臣を代表して同行した朝比奈泰朝・駿河朝比奈氏の朝比奈元長だった。
饗応役である松永と藤孝の二人が早速出迎える。
「ようこそおいで下さいました治部太輔様。饗応役を仰せつかりました細川与一郎藤孝に御座います」
「同じく松永弾正久秀に御座います。ここに滞在する間、何か御座いましたら全て我等に仰って下さいませ」
普段の飄々とした姿とは一変、顔に柔和な笑みを浮かべ、二人は出迎える。
氏真と泰朝もまた、それに礼を以て返した。
あくまでも同盟関係である。
幾ら織田が盟主であるとはいえ、彼等が遜る必要はない。
続いて到着したのは、北条家当主氏政とその弟であり取次を任されている氏照、そして”地黄八幡”として有名な北条の闘将北条綱成だった。
「おぉ、お二方とも久方振りであるな! 北条氏政、同盟の為に参じた!」
当主氏政は旧知の友に対して向ける様な満面の笑みを浮かべ、二人の手を取った。
「ようこそ美濃へ。歓迎致しまする」
「滞在する間、何かあれば我等に申し付け下され」
「……兄が申し訳ない。……お久しゅう御座いますお二方。以降の取次は全て私に」
藤孝と松永の二人もそれに応える。
余りに純粋な兄を微笑ましそうに、しかし松永達に申し訳なさそうにしながらも、弟である氏照や綱成もまた、二人と握手を交わした。
後は上杉の到着を待つばかりである。
一つ疑問なのですが、読む側は何文字程度が読みやすいんですかね?
新作の方が三千文字、此方が千五百~二千文字程度を目標に書いているのですが、読む側としてはどちらなのかな、とふと思いまして。
自分として書き手側としては後者の方が楽という……。




