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第百五十四話 長宗我部攻めに向けて

「先手を森衆と木下衆!」


「「――応!」」


 三左殿と勝三、そして秀吉配下の将達が一斉に応じる。


「――中堅を細川衆に松永衆。更に池田に梁田、そして美濃衆にお任せする!」


「「「「――はっ!!」」」」


 此処にいるのは忠興や久通、池田恒興殿の息子である元助、西美濃衆稲葉殿の次男である定通や氏家殿の嫡男である直昌等若手達だ。

 驚くべき事に、俺が兵法や武芸を教えている弟子達でもあるんだなこれが。

 因みに、父親である与一郎殿や松永――弾正は同盟諸国への饗応役として京にいて貰うつもりだ。


「……そして本陣に”軍監”から”軍監補”官兵衛に大谷吉継。彼等に此度の差配を任せまする」


 半兵衛は三国との話し合いに出て貰うので、こいつも今回は京に残る。

 そして残るは、


「――そして須藤殿と島殿に少数を率いての遊撃をお任せする」


「「――承知」」


「……じゃ、信忠。皆に檄を飛ばしてやれ」


 信長が隣に座る信忠様に目配せすると、信忠様は頷き、


「――皆! 我等との同盟を破棄し、戦乱を長引かせる長宗我部に、我等に反旗を翻した事を後悔させよ!」


「「「「――はっ!!」」」」


 自信満々の笑みを浮かべる信忠様の背後で、信長が嬉しそうに笑っていた。





 三河 岡崎城 



「……家康殿」


 南光坊天海は、その日岡崎城を訪れていた。

 織田と今川・北条・上杉の同盟の噂を聞いたからである。

 天海を視界に入れた家康は、何を思ってか深い溜息を吐いた。


「……光――いえ、天海殿」


「……聞きましたぞ」


 目的語の無い天海の発言だが、家康は直ぐに何を指しているのかを察し、苦々しい表情を浮かべた。


「…………最早我等の周囲は敵のみ。後は古河公方様を擁する里見家と、長宗我部。それに幾ばくかの反織田勢力のみ」


 呟く家康に、天海は首を横に振った。


「……古河公方という立場など、最早何の意味も成しませぬ。足利幕府が残っていればまだその立場に力はありましょうが。……織田には朝廷もついております。武田の時と同じ様にならぬとも限りませぬ」


 つまり、徳川が朝敵として認められる。

 そうなってしまえば、徳川は終わりだ。

 どうすれば良いのか、どうすればこの窮地を脱せるのか。

 どれ程考えても、良い案は浮かばない。


 天海とてそれは同じだった。

 寧ろ、彼は織田の強さを、強大さを知っている。

 武勇とて三河武士に負けぬ程の精強さを誇る”鬼柴田”や、それが率いる”柴田軍団”と言われる武者達や、森親子がおり、知略においては”軍監衆”がいる。

 更には大量の鉄砲を使った最新鋭の戦法に加え、それを熟知している雑賀衆や根来衆がいる。

 海上戦であろうと九鬼水軍や、和睦した毛利水軍を含めてしまえば勝ちは無い。

 情報戦においても、織田には伊賀・甲賀、そして武田の三つ者が統合された最大規模の忍衆がいるのに加え、同盟となる北条の風魔忍軍、越後上杉の軒猿と、隙が無い。

 あらゆる面で劣っていた。

 いや、そもそも家康とその家臣達に『天下を取り、安寧と静謐を取り戻す』という野心にも似た信念さえなければ、この様な窮地に陥る事も無かっただろう。


 しかし、今更それを悔いてもどうする事も出来ない。

 既に賽は投げられたのだ。


「……家康殿。決して、決して諦めてはなりませぬ。どれ程の窮地にあろうと、命さえあれば、機会は必ずや巡って来ましょう。……死しては”厭離穢土の志”を望むことすら出来ぬのですから」


 天海は、家康の眼をジッと見て言い聞かせる。

 自分がこうして生きている様に、必ず救いはやって来る。

 例え数年、数十年かかろうと、最後に勝てば良いのだ。


「……天海殿。…………そう、ですな。無論、私も諦めるつもりはありませぬ。……厭離穢土をこの日ノ本に実現させる為、例え泥を啜ってでもと誓ったのですから」







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