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第百三十話 指示する者、決意する者、祈る者

大晦日ですね~。

皆様、お身体に気をつけてくださいね!


 京 本能寺 



 本能寺を急襲した明智軍は、信長が弓や槍で戦っているのを見て、初めて織田軍への離反をしたのだと言う事を理解し一時は動揺したが、最早遅いと兵士達も理解したのか、直ぐに動揺は収まった。

 本能寺の前で戦況を見守っていた光秀の元に、討ち入り部隊からの報告を持って来た兵士が駆け寄り、膝を付き、報告を行う。


「――報告致します! 討ち入り部隊、内部の占拠完了致しました! 御堂に詰めていた小姓衆、厩にいた中間衆二十四名、台所口にいた将等二十四名を討ち取りました! 町内の宿舎から斬り込んできた湯浅直宗と小倉松寿も討ち取りました!」


 だが、その中に肝心の信長を討ち取ったという報告は無かった。


「……信長は討ち取りましたか?」


 明智の問いに、兵士は慌てながらも答える。


「――は、はっ!! 毒を塗った槍によって負傷はさせましたが、何時の間にか寺内に侵入していた織田忍衆により邪魔が入り、討ち取るには至っておらず……更に寺西方より雑賀衆や根来衆による銃撃によって西方の包囲が崩されており、恐らく其方に逃げた模様で――」


 兵士の報告を途中で「もう結構です」と止め、光秀は次の指示を出す。


「――逃げた信長を追います。秀満!」


「――何用ですかな兄上」


「追撃部隊を編成し、負傷した信長を追いとどめを刺しなさい!!」


「――承知!!」


 秀満は頭を下げると、直ぐに手勢に数百人の部隊を加え、信長とそれを守る雑賀衆と忍衆を追いに行った。




 京 妙覚寺



 一方その頃、京妙覚寺にいた織田信重と、斎藤道山の末子である斎藤利治や毛利良勝・団忠正等信重の家臣達は、明智謀反の報を聞き、どうするべきかを話し合っていた。


「ここは殿を救うべきだ!」


「いや、明智軍は一万を超えるという。……既に落ちているだろう。ここは御所に退き、明智を迎え撃つべきだ」


「いや、逃げるべきだろう! 丹波や大和まで退くべきだ!」


 家臣達は様々な意見を交わす。

 それを信重は、瞑目して静かに座っていた。


「……若、如何なさいますか?」


 家臣達が一斉に信重の方を見る。

 信重は考えていた。

 自分が光秀ならばどう動くか、それを考えていた。


「……光秀は父の補佐を務める程に有能だ。恐らく、我等に対しても兵を差し向けて来るだろう。……父上がどうなっているかを知りたいが…………」


 信重の考え通り、妙覚寺に信重等がいる事を知った明智光秀は、妙覚寺に向けて兵を差し向けていた。

 信重達の動きが遅ければ、何れここも本能寺同様包囲されるだけだろう。

 信重は須藤から兵法について学んでいた。


「――京を死地と定め、戦うか。先ずは父上をお助けする。本能寺に行くぞ」


 信重が決定を下し、将達は仕度を急ぐ。

 向かうは京、本能寺だ。




 武蔵国 多摩郡 恩方 金照庵(きんしょうあん)



 武蔵国恩方にある金照庵で、滅亡した武田家の英雄武田信玄の六女である松姫は、文を手にした儘まだ薄暗い空を見上げていた。


「姫様、姫様? この様な朝早くに空を見てどうなさ――あぁ、信重様の文ですか」


 松姫と共にここまで逃げてきた初老の女中が心配そうにやって来て、松姫の手に握られている文を眼にしてにこやかな笑みを浮かべる。

 そんな女中に対し、松姫は薄く笑い返す。


「えぇ。……これより四国の長宗我部を攻めると。それが終わった後、迎えに来ると。……信重様はまだ、滅亡した家の娘である私を……想って下さっているのですね」


「そうですねぇ。……中々に気骨のあるお方ではないですか。普通なら、もっと良い条件の家の娘を選ぶでしょうに」


 そう言う女中に儚げな笑みを浮かべた松姫は、信重がいる筈の京のある方向の空を見上げ、


「……どうか、御無事で。……信重様」


 ただ天に祈った。






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