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第百二十四話 長宗我部の離反

主人公=徳川絶対潰すマン。

 1564年 土佐 



「そうかい。武田が滅んだかぃ」


 草からの報告を聞き、土佐を統治する長宗我部家当主、長宗我部元親は上座で愉快そうに笑う。


「いいねぇ。……織田は随分とでかくなったじゃねぇの」


 それは、闘争本能からくる獰猛な肉食獣の様な笑みだ。

 一度は織田に従ったが、元親は伊予・讃岐・阿波を諦めた訳では無かった。

 何れは反骨し、織田の喉を食い千切ってやると、己が心の中にある牙を今か今かと研いでいたのだ。

 そして、チャンスが訪れた。


「――元親様! 書状が届きまして御座いますぞ!」


 家臣の一人が慌てた様子で評定の間へと駆け込んでくる。


「応。どこからだ?」


「徳川からに御座います!」


「――来たか!!」


 送り主の名を聞いて、家臣の前に跳ぶ様にして駆け寄ると、家臣が差しだした書状を引ったくり、上座の間に戻って書状を読む。

 家臣達が不安そうな顔で元親を見る。

 そして書状を読み終わった元親は、笑う。


「いいねぇ。……徳川も牙を剥くか! 面白ぇ! なら、俺達も逆らおうじゃねぇか!!」


「――では殿!」


 家臣達の期待の籠った視線に、元親は頷く。


「応よ! ――伊予・讃岐・阿波……いやさ摂津に安芸に京に畿内! 全部食らい尽くしてやらねぇとな! ――さぁ、戦支度をしな!!」


「「「「――応!!」」」」


 若かりし織田信長同様”うつけ”と呼ばれた乱世の雄が一人、”土佐の出来人”長宗我部元親は、これから起こる戦に思いを馳せ、ニヤリと笑った。






 1564年 美濃 岐阜城 【視点:須藤惣兵衛元直】



 武田征伐が一段落した織田軍は、降伏した武田兵を吸収し、軍の再編を行っていた。

 俺は現在、戦後処理の為にまだ美濃にいる。

 上野は協力してくれた北条・今川に以降の協力を取り付ける代わりに譲り渡した。

 武田本領である甲斐は降伏した穴山梅雪の嫡子信治に武田姓を名乗らせて継がせた。

 北信濃は上杉にとられたが、半分は織田のモノとなっているので、木曾谷は本領である木曾義昌に安堵し、それ以外は越前勢によって守らせる事とし、上杉への見張りをさせた。

 だが、春日城を任せたはずの依田信蕃等、生きている筈の武田の生き残りの一部が、何処ぞへと逃れたのか、姿をくらました。

 だが、それに手を向ける暇など無くなる情報が齎された。



 ――長宗我部離反の報である。



 元々長宗我部は土佐の国人だが、度重なる戦によって土佐を統一、阿波・讃岐・伊予への侵攻を開始したのだ。

 織田はその頃丁度公方との戦の最中であり、公方方として織田と敵対した阿波三好家との戦において同盟を結んで共闘したのだ。

 だが戦後、織田は家臣である三好義継や、讃岐の国人衆達の事も考慮し、阿波の南部を割譲するに留まり、長宗我部との関係性は齟齬が生じていた。

 それが甲州征伐によって一息吐けるかと思った矢先、毛利の挙兵と長宗我部の挙兵が同時に起こったのだ。


 だが、俺もわかっていた。

 これが誰によるモノなのか。

 誰が描いた図面なのかを。

 天下人――徳川家康。

 この世界においては三河一国の小大名である奴が、とうとう動き始めたのだ。

 あの豆狸、ちゃっかりしてやがる。

 まぁ敵対してくれると言うならば敵対してもらおう。


 史実における天下人は、織田が天下を取る上で障害になる。

 俺はそう思っていた。

 何より、家臣達は家康が天下を取れる事を信じていた。

 家康もそんな家臣達に乗せられて、必ず織田に刃を向けるだろう。

 そう考え、桶狭間ついでに排除する事も考えたが、それでは他の戦に影響が出るとすぐにやめた。

 実際、”姉川の戦い”等では徳川軍のお陰で勝利出来たのだ。

 結局、『最早力づくの排除は不可能』と判断した俺は徹底して徳川を調べさせた。


 そしたらまぁ忍が潜入してるってのに人が戦後処理をしている間に『天下を取るぞ』なんて言ってしまうのだから驚きだ。

 お前等少しは隠せや、と思う。

 なら、此の儘水面下での敵対行動を続けておいて貰おう。

 奴等が書状のやり取りをした国とも、結局戦を避けられないのだ。

 取り敢えず調子に乗らせるだけ乗らせて、時期を見て徳川の動きを信長に報告するつもりだ。

 既に”軍監衆”には伝えてあって、後はタイミングの問題だった。

 だが、それは今じゃない。

 時期が重要だし、蠢いているのが徳川一人だけという訳でもないのだから。





 京 二条御所 評定の間



 後日、京の二条御所の評定に、越前衆・美濃衆等各地に散らばっている以外の将達が揃っていた。

 美濃に駐留し戦後処理を行っていた”軍監衆”も、この為にと呼び戻されていた。


「皆、先の戦は真に苦労だった」


 上座の間に信長が座り、家臣達を労う。


「武田を滅ぼし、甲州を手に入れた今、俺の道を阻むのは毛利のみ――だと思っていた」


 その言葉に、家臣達は身を固くする。

 長宗我部の裏切りは、誰もが予想していた事だったが、このタイミングだとは多くの者が思っていなかったのだ。


「長宗我部・毛利。この二家を滅ぼすか、支配下に置くか。……まぁ何方でも良い。だが、我等に逆えばどうなるかを知らしめねぇとな。……”軍監衆”! 急ぎ策を立てよ!」


「「「「――はっ!!」」」」


 まだ乱世は――終わらない。


クロスオーバー先の作品も宜しくお願いします!


ナカヤマジョウ様の『分枝世界の戦国記譚~蒼の章~』(旧題:謙信と挑む現代オタクの戦国乱世)も宜しくお願いします!

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