第百八話 忍狩り継続中
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1562年 美濃 岐阜城 【須藤惣兵衛元直】
さて、史実では”長篠の戦い”後、”高天神城の戦い”で徳川に敗れた事で凋落を見せ始めた武田家であるが、残念ながらこの世界では”高天神城の戦い”は出来ない。
今川の支城だからな。
今川がまだ続いているこの世界では、高天神城で戦がある事は無いだろう。
だが、この世界でも先の戦における敗戦と、朝廷から”東夷”として認められた事で、武田家は史実同様凋落を始めている。
周囲を敵や織田方、または織田方に属する国と同盟関係にある国に囲まれた武田は、戦の報を聞いたのか城を造営したり、重税を課したりしているらしい。
なにやら蘆名は武田方についたそうだが、そんなのは隣接している上杉に任せておけば良いのだ。
さて、前にも言ったが、この度目出度く”軍監衆”に新人が入る事になった。
――あ、”軍監衆”とはいっても、俺達と同位って意味だ。
下の連中の様な事務仕事ではなく、策を練る人間、という事だ。
「……大谷……紀之介吉継。……本日より”軍監衆”と相成りました。……お引き回しの程……宜しくお願いします」
石田三成を支えた軍師の一人――大谷吉継である。
秀吉・秀長兄弟の推挙と、俺が話した中で”才能あり”と判断した事から、”軍監衆”に入る事になったのだ。
つまり俺が推薦人という事だな。
立場的にはまだ秀吉の部下って事になっており、秀吉が前線に出た際に”軍監”としての役目を果たす事になっている。
「――”軍監”竹中半兵衛重治です。同じ”軍監”として、共に励んで行きましょう」
「”軍監補”黒田官兵衛孝高。――秀吉殿や須藤殿からの推挙があるならば実力に不足は無いでしょう。期待しておりまするぞ」
「……はっ。”織田の三兵衛”と働けるとは……真に名誉な事。……若輩では……ありますが、どうかご指導ご鞭撻のほど……宜しく……お願い致します」
……ホントにマイペースに喋るなぁ。
寡黙と言うかマイペースと言うか……独特な間がある。
意外とこれまで周囲にいなかったタイプの奴だ。
俺がそんな事を考えていると、半兵衛が此方を向いて話しかけてきた。
「――して須藤殿、忍狩りはどれ程進んでおりますか?」
「ん? あぁ……まぁ『怪しければ捕らえろ』って命令したから、草じゃないかって奴が出るわ出るわ。……その中で忍かどうかを判断している最中だ。……”歩き巫女”もいるから女にも気を付けなきゃならないのが面倒だがな」
歩き巫女。
甲斐武田が誇る忍の中でも特に広範囲を移動し、情報収集を行う集団。
全国各地を遍歴し、祈祷などを行う巫女であり、旅芸人や遊女も兼ねていた者もいたという。
鳴弦によって託宣を行う”梓巫女”、熊野信仰を広めた”熊野比丘尼”等が知られている。
有名な人物と言えば望月千代女と呼ばれたくの一だろう。
実在したか、本当にくの一だったか、と問われれば疑問が残るのだが。
その多くが見目麗しい八・九~十五・六程の少女をスカウトし、育てたのだそうだ。
まぁ美貌ってのは何時の世も武器になるという事だが、正直に言ってしまえば、此方としては見目麗しい巫女をピックアップしてしまえば見分けてしまえる。
余り良い手段ではないだろうが、踏み絵みたいな事をすれば判断しやすいしな。
ただでさえ迷信や神様が信じられた時代である。
神職ならば、尚更罰当たりな事は出来ないだろう。
それ以外の忍――”三つ者”や”吾妻衆”といった忍達も続々と捕えている。
そんな訳で、一週間程で男女合計して五十人程の間者・及び間者候補を捕え、現在”雑賀衆”に手伝ってもらって尋問中である。
つーか本当に武田の忍って数が多いな。
面倒臭いったらありゃしない。
「多分これからもどんどん出て来るぞ。候補を合わせれば百人・二百人は軽く行くだろうな。そんだけ武田も危機感を抱いてるって事だろうが、正直言うと、これ程大々的にやるとなれば時間は掛かるぜ」
「……ふむ。では引き続き続けて頂くとして、此方も武田方の調略を始めましょうか」
「ですな」
「……承知」
「おう」
武田への調略か。
……狙うなら誰を寝返らせるかねぇ。
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