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第百四話 その頃の京

とある作品を見ていたら熱い剣戟バトルが書きたくなったどうも野央です。


え? この作品で出来るじゃないかって?

いや、これエセ歴史モノですし、鉄砲で致命傷にして剣でとどめで終わりですし。

もっとこう、互いの意見がぶつかり合って勢力と勢力でぶつかり合ってパッションが爆発する様な作品を書きたいんですよ!


……書けるかなぁ。


 1562年 六月 中旬 京 二条御所



「――殿。備中におります須藤殿より書状が届いておりますぞ」


 信長の下に、須藤からの書状を届けに来たのは、京に戻って朝廷や公家との取次をしていた細川与一郎だった。


「お、すまねぇな」


「いえいえ。では、拙者は太眉共相手に茶でも飲んできまするよ。――失礼致しまする」


 信長に書状を渡すと、与一郎はニコニコと笑いながら去っていった。

 それを見送り、信長は苦笑を浮かべる。


「アイツは本当に変わった奴だな。さて、何が書かれてるのやら」


 与一郎から渡された須藤からの書状を広げようとして、


「――上総介様、茶が入りましたよ。干し柿も持って参りました」


 障子を開き、奥であるお濃の方が入ってきた。


「――おぉ濃か」


「あら、それは……」


 お濃の方の視線が須藤からの書状に向く。


「ん? ……おぉ、備中に向かわせた須藤からの書状だ」


「上総介様、須藤殿が頼りになるのはお分かりになりますが、余りあちらこちらに向かわせるのは酷だと思いますよ? 柊も吉千代も、もう長い事須藤殿にお会いしていないそうですし」


 お濃の方からの注意に、信長は頭を掻く。


「いや、わかっちゃいるんだがな。アイツがいると楽でつい、な」


 将軍足利義昭を討った後に吉千代が生まれてから後、須藤は信長の命で越前・能登・丹波・備前・備中と転戦に次ぐ転戦に加え、京にいる間も、戦後処理や中国攻めに向かった半兵衛や官兵衛等の代役としてその役目を一手に引き受け、今川や徳川とのやり取り等外交もしていた為、柊と吉千代が暮らす古出屋敷に寄る暇もない程であった。

 その為、一年とはいかないまでも、半年以上柊と吉千代とは会っていないのだ。


「……いい加減、城なり刀なり、褒賞をやらねばならないと思うんだが、本人が『隠居した後に悠々自適に暮らせる分の金さえくれればそれで良い』と断るしなぁ」


 この時代、城を任されたり、刀を下賜されるのは一番の褒美だ。

 だが、長く戦国の世に暮らしていても、根底として現代人である須藤としては『土地やら城やら刀やらを与えられてもどうしろと?』という考えの為、褒賞が金になるのは必然だった。

 城など与えられてもそれを治める程の家柄も家臣も手腕もないし、戦場に身を置きながらも鉄砲隊による奇襲を主な役割とする須藤が敵と打ち合う事等滅多に――いや、ここ最近は一切なく、須藤も”雑賀衆”等と共に鉄砲を撃つ事ばかりで、どれ程高名な刀も宝の持ち腐れである。

 事実、須藤の刀は知り合いの刀鍛冶に打って貰った一品モノであり、頑丈さは秀でているが、機能重視する故に芸術品としての刀としては価値は低い。

 しかも、屋敷も立てる訳では無く、柊の実家である古出家の屋敷を間借りしただけ。


 なので、須藤は金をそれ相応ため込んでいる……のだが、”雑賀衆”に”伊賀忍”・”甲賀忍”と、個人的に雇っている者達が多く、情報収集等に金を使うので、須藤の蓄えている金など高が知れている、という実態を信長もお濃の方も知らない。


「――して、須藤殿からの書状にはなんと?」


「お……応。――――――――っ!!」


 書状に書かれていた内容を読み、その内容に信長は驚愕の表情を浮かべた。


「……上総介様?」


 お濃の方が信長を訝し気に見る。


「…………武田信玄が死んだらしい」


「――なんと!?」


「……まだ噂の状態らしいが、城下にまで広がっているところを見ると、間違いって訳じゃなさそうだ。……そうか。信玄が死んだか」


 いつの間にか、信長の顔には笑みが浮かんでいた。

 それも獲物を狙う猛禽類か、肉食獣を思わせる笑みである。


「……上総介様、如何なさるおつもりで?」


 問うてくるお濃の方に、信長は笑みを向ける。

 織田にとって、最も近く、最も強大な脅威である”武田”。

 その支柱が死んだのだ。

 先の戦の傷も癒えぬ儘に。

 これを逃す手はない。


「――毛利攻めは中止だ! 此度こそ、武田の息の根を止める」


 これ以上煩わせられる事の無いように、武田を滅ぼす。

 信長は、そう決心した。




クロスオーバー先の蒼の章も宜しくお願いします!

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