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第九十六話 ”鬼武蔵”と”鬼兵庫”

 1562年 備前



「――では出陣する!!」


 数日後、織田信長が嫡子織田信重を大将とし、織田備前攻略軍本隊は宇喜多勢の城へと兵を進めた。

 本隊を構成するのは織田信重の部隊と長可率いる森衆の一部、”根来衆”の一部に木下秀長隊の総勢九千。

 数こそ少ないが、歴戦を潜り抜けてきた者であり、”根来衆”の鉄砲もある。

 本隊は宇喜多等備前国の者達の眼を惹く様な目立つ動きをする。

 勿論、伏兵部隊である須藤や、別動隊である森可成に視線を向かわせない為である。

 それを見た宇喜多勢は、敵の数が思った以上に少ないと見るや、城から出陣し、両軍がぶつかり合ったのである。


「――森衆! 若が見てんだ! 半端な動きなんてすんじゃねぇぞ!!」


「「「「――応!!」


 織田軍先鋒は武名名高き森家の次代、後世において”鬼武蔵”と恐れられる森長可率いる森衆。


「――森衆! 蹴散らせえええぇぇぇっ!!」


「「「「おおおおおぉぉぉぉぉっ!!」」」」


 森衆が行ったのは突貫だ。

 ただ愚直に、視界に入った敵は皆殺し。

 その様は、宇喜多勢の勢いを落とす程だった。

 だが、


「若、須藤殿に命じられた我々の役目は囮に御座いますよ。突貫しては不味いのでは?」


 愛用の槍”人間無骨”を手に宇喜多勢をバッタバッタと殺していく長可を、同じ様に隣で得物を振るって殺す男が諫める。


「んぁ、そうだったか……そうだった!! また旦那と父上に怒られる!!」


 そう言いながら、また一人、また一人と長可は敵兵を突き殺していく。

 だが、その顔に浮かぶ表情は何とも情けないモノだ。


「どうすりゃ良いと思う元正?」


 血で塗れながらも情けない顔で訊ねる長可に、元正と呼ばれた男――森家家臣にして”鬼兵庫”の異名を持つ各務元正は暫く思案――勿論敵を殺しながらだが――する。


 一見すれば文官にすら見える男であるが、美濃斎藤家家臣時代に領地問題で揉めていた各務右京亮という男の屋敷に単身で押し入り、右京亮を殺した後、自分を取り押さえようとした右京亮の家人数人も斬殺して逃走する等苛烈な逸話を持つ。

 その武勇は織田家中でも有名で、つけられた異名が”鬼兵庫”である。

 更には武勇だけではなく、史実では長可の死後、その嫡子忠政の後見となった後は領内の(まつりごと)や留守居役、来客が来た際の饗応役を務め、晩年には忠政等が戦に出た際には残って両国の政務を執る等内政にも尽力した人物である。

 その有能さを買った蒲生氏郷からの二度に渡る勧誘を「二君に仕えず」と氏郷からの勧誘の手紙も読まずに使者を追い返したという逸話も持ち、織田信忠からの信頼も厚かったという森家の忠臣だ。


「……ふむ。……ここはいっそのこと、我々のみで宇喜多勢を壊滅し、天神山城を落とせば良いのでは?」


 だが、彼もまた”鬼”と呼ばれる森家家臣団(戦闘狂)の一人である。

 ……と言うか、寧ろ彼が可成や長可を煽っているという事実は、余り織田家には知られていない。


 元正の言葉に、長可は我が意を得たりを顔を輝かせ、


「おぉ、その手があったか! じゃ、その手で行くぞ手前等! 宇喜多の兵も将も、全部俺達でぶっ殺してやれ!」


「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉ!!」」」」


 喜々として叫ぶ長可に、これまた同じく叫ぶ森家家臣団。

 須藤からの命令も忘れ、愛馬”百段”を走らせる長可を先頭に、彼等は矢の如く駆け出した。


「――ついてこい元正!!」


「――承知」


 ”戦国三大DQN”――”鬼武蔵”の名は、後世に伝わりそうである。





少なくとも自分が知る限りの他の作品では名前くらいしか見掛けない各務さん。

こんな感じになりました。


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