第八話 桶狭間の戦い 開戦
数多くのブックマーク、そして感想及び指摘等有難う御座います!
皆様に面白いと言って頂けるよう、頑張りたいと思います。
ただ作者は硝子のハートを持っておりますので、優しい言葉で指摘してください(無理難題)
1555年 五月 明け六つ前 尾張国 清洲城
今川軍松平勢及び朝比奈勢、未明に丸根砦、鷲津砦へ進軍開始。
まだ日も登っていない為に蝋燭の火のみが辺りを照らしていた中、その報せを聞いた信長は飛び起き、城の一室で扇を手に、能を演じていた。
――人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり
一度生を享け、滅せぬもののあるべきか
これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ――
自身が好んで演じる敦盛の一節を演じ、眼を一度瞑り、開くと、
「螺を吹け! 具足を用意せよ! それと湯漬けを持ってまいれ!」
そう傍で控えていた小姓に言う。
暫くして陣貝が鳴り響き、小姓が慌てて持ってきた具足を信長に付け、別の小姓が湯漬けを持ってきて、それを信長は立った儘かき込んだ。
そして早足で城の入口へと向かう廊下を歩く中、妻であるお濃の方が平伏していた。
「上総介様……お気をつけて」
「あぁ。……後、俺の客将である須藤と共に奇妙を出陣させよ。――征くぞ! 出陣!」
お濃の方に向けてそう言い、信長は外に用意されていた馬に乗ると、小姓衆五騎のみを連れ、熱田神社に向けて馬を走らせた。
尾張国 清洲城城外 《視点:須藤直也》
その日、明け六つ程。
既に外は土砂降りの雨である。
そんな中、俺は既に馬上の人となっていた。
こんな朝早くに馬に乗っている理由は簡単。
大将である信長が小姓衆だけを連れて飛び出したのだ。
……史実通りとはいえ、俺も家臣達もてんやわんやである。
ホントに勘弁してほしい。
俺含め、信長のいる熱田神社に向けて進んでいる軍には織田のほぼ全ての将達が顔を揃えていた。
森可成、林秀貞、池田恒興、河尻秀隆、佐々成政、金森長近、毛利秀頼、そして信長の怒りに触れて軍を追われた前田利家――信長にはいる事を言っていないらしい――等だ。
その中……俺の横にはまだ元服前の奇妙丸 (織田信忠)が馬に揺られていた。
……いや、この世界では既に生まれているんだよ奇妙丸。
本来なら1555年~1557年位に生まれたって言われてるんだが、信長の年齢も年齢だからか、既に10歳程なのだ。
……既に十歳って、生まれた時は信長十六歳って事だろ?
で、確か信長の側室の生駒吉乃――もう亡くなっているらしい――は二十代前半だったはずだ。
高校生で大学生か社会人を産ませてんじゃねぇか、とんでもねぇな戦国時代。
因みに史実では1557年に信長二十四歳、生駒吉乃は三十歳で信忠を産んでいる。
こっちもこっちで余り年齢差は変わらない。
そう考えれば史実とは似ても似つかない、ほぼ別と言って良い歴史の流れだ。
でも戦や勢力同士の関係性などは史実とほぼ一緒っていうややこしさ……ぐぬぬぬ。
「のう、須藤とやら」
俺が内心唸っていると、隣の馬に乗る奇妙丸様が話しかけて来た。
顔が奇妙だから奇妙丸なんて名前を付けられた奇妙様だが、俺からしてみれば信長そっくりである。
「……はい、如何なさいました?」
「父上は何故私を戦に連れていくのか?」
奇妙丸様の手は恐怖からか震えていた。
それもそうだ。まだ十歳の子供である。
まぁ史実においても幼い頃から信長に連れられて戦場で戦いを学んでいた、という逸話も残っているらしいので、此処に居る事自体は在り得なくもない……かな?
「……奇妙様は織田が嫡子。いずれ織田を背負う者にありますれば……幼き頃より戦場に出、戦のいろはを学ぶことは悪い事ではありますまい。それ程信長様に期待されておられるのですよ」
まぁ説明としてはこんなところだろう。
「そうか……うむ、そうだな!」
俺の言葉に納得してくれた様で、機嫌が良い様だ。
これから戦だというのに、言葉一つで笑顔に変わるのは実に羨ましいねぇ。
その後、俺達は熱田神社に付き、丹下砦へと歩を進ませた。
ブックマーク宜しくお願いします。
えー、同じ世界、時期を別視点より描いたナカヤマジョウ様の『謙信と挑む現代オタクの戦国乱世』が投稿開始いたしました。
同じ世界を上杉より見た視点となっております。
其方もよろしければご覧下さいませ。




