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第九十三話 丹波攻略完了

投稿が遅れて申し訳御座いません。

 1562年 二月 丹波 【視点:須藤惣兵衛元直】



 与一郎・忠興父子が援軍として到着してから数週間後、織田軍に急報が齎された。


『赤井直正死す』


 つまり、俺が放った忍が、任務を達成したと言う事だった。


 長きに渡り丹波三郡を実質的に支配し、丹波の豪族達に影響力を持っていた赤井直正の死は、丹波全土に混乱を齎した。

 赤井家当主を長年補佐し、赤井氏を支えていた屋台骨が無くなったのだ。

 俺は即座に明智殿、与一郎・忠興父子等主要な将達を集め、軍議を始めた。


「――赤井が重鎮である直正が死に、跡を継いだ義直はまだ幼く、現在赤井家は直正の弟であり、義直の叔父である赤井幸家が義直の後見となるも、家中は未だ混乱の中にあります。この時を逃さぬ訳にはいきますまい」


 俺は諸将を見回し、


「――現在既に援軍が此方に向かっておりますれば、某等のすべき事は八上城を包囲し、援軍を待つ事に御座います。では、始めると致しましょうか」




 三月、八上城を包囲した織田軍を見て、丹波の将達は続々と織田に降伏を始めた。

 更に、明智秀満等の援軍が到着した織田軍は、山垣城・細工所城・栗住野城・玉巻城・岩屋城・霧山城等の八上城と黒井城の支城を次々に落城させていった。


 翌三月には八上城と黒井城の分断を目的に金山城を築城。

 その勢いの儘に氷上城を落城させた。



 四月には織田軍は氷上城を落としたのを機に、分断した八上城を攻めた。

 忍達による潜入工作で兵糧を焼失させ、飢餓状態に陥らせると、籠城している波多野等に降伏を勧めた。

 これに対して波多野秀治等は降伏を承諾、八上城は落城し、残るは赤井家がいる黒井城のみとなった。






「――陣貝を吹きなさい!!」


 明智光秀の指示により、法螺貝が鳴らされる。

 戦況は織田軍有利に進んでいた。

 既に降伏している姻戚関係にある波多野からは援軍等来るはずもなく、更には”雑賀衆”によるゲリラ戦や、法螺貝を吹かせて攻めると思わせたり、偽の陣営を焼くなどの織田軍の策により、赤井軍は疲弊していた。

 だが、状況を打破しようと、討って出れば、織田軍は即座に撤退、勢い付いて追いかければ、伏兵と反転した明智勢によって散々に討ち散らされる。

 状況は決まり切っていた。

 だが、赤井直正の兄である家清の子、家忠は降伏せず、抵抗を続けたが、最終的に忠家・義直等は逃走し、行方を眩ませた。


 これにより、丹波は織田のモノとなったのである。




 1562年 四月 京 二条御所



「――以上が今回の報告だ」


「そうか、苦労だったな」


 丹波攻略を終えた俺は、信長の下を訪れ、丹波攻略の報告をしていた。

 落とした丹波は、明智殿と与一郎殿の所領となるらしい。


「悪かったな。急に丹波に行けなんて命じて」


「構わないさ。俺はお前の友だけど、それと同時に家臣でもあるからな」


 そうすまなさそうに言う信長に、俺は笑って言う。

 俺の答えを聞いた信長は、ニヤリと笑い、


「――じゃ、まだ働けそうだな」


 ……え? 今なんか聞きたくない言葉が聞こえた気がしたんだが。


「――サル等が毛利攻めで苦戦しているらしい。京の守りは金柑や藤孝がいるから、手前は秀長と一緒にサル達の救援に行ってこい」


「――ちょ、ちょっと待てよ信長。俺、久しぶりに奥さんと子供に会いたいな~……なんて思っ「秀長!」」


「――此処に」


「――え〝?」


 信長の声に応じ、いつの間にいたのか、秀長が障子を開けて入ってくる。


「須藤を連れてサルの救援に行って来い」


「――承知仕り申した。さ、須藤殿、兄上や半兵衛殿等が須藤殿の救援を待っております。既に仕度は整えております。直ぐに出立致しまするぞ。――では殿、失礼仕る」


「おう、励め」


 秀長が、俺を引きずって部屋を辞していく。


「――須藤! 頼んだぜ!!」


 機嫌良さそうに笑いながら俺に声を掛けてくる信長。

 ……嵌めやがったな畜生!

 最初から見越して秀長を待機させてやがったか!


「――覚えてろ信長! 手前が遊女と楽しそうに遊んでた事、奥方様と信重様に言ってやる!!」


「――ちょ!! それはやめ――」


 覚えてろ信長!

 必ずお前に天罰(奥方様の説教)を食らわせてやるから覚悟しておけ!

 アイルビーバック!


 俺は信長を恨みがましく睨みつけながら、親指だけを立てて下に向けて信長に向けて腕を突き出した儘、秀長に引き摺られて、慌てて止めようとする信長の視界から消えた。




 尚、その直後に俺は柊殿と吉千代の顔を見る事無く、支度を終えていた秀長と共に秀吉達の援軍に向かったのだった。

 ……泣くぞ。




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