第八十八話 救援
毎日投稿を目標に毎日書くのは良いんだけど、その分他の作品のストックを書けないというジレンマに陥ってます。
……いや、毎日投稿は止めないですけどね?
1561年 九月下旬
越前丸岡城まで撤退した柴田軍率いる織田軍は、籠城という選択をした。
一方の上杉軍は、追撃した勢いの儘柴田軍が籠った丸岡城を包囲、両者は弓を射掛け合ったり、挑発を繰り返し、拮抗状態となった。
【視点:須藤惣兵衛元直】
「……そうか、柴田殿等は動いていないか」
柴田殿等が、俺の指示通り、討って出る事なく籠城しているという報告を受けた俺は、横で報告を共に聞いていた人物に顔を向ける。
「では、与一郎殿、宜しく頼みます」
「えぇ、お任せあれ。……それと、そう畏まらずとも良いですよ。拙者はこれが地ですがな」
織田軍の一人、京にて公家との繋ぎをしていた細川与一郎藤孝は、いつも通りの胡散臭い笑みを浮かべて笑う。
「――では、敵に包囲されている皆様方の救援に参りましょうか。――細川軍、出陣」
「「「「応!!」」」」
さて、援軍は与一郎殿に任せて、俺はいつも通りに動きますか。
俺が与一郎殿に指示したのは、上杉軍に見える様に遠くから幾つもの軍旗を掲げることだった。
別に、戦になって欲しいわけではなく、警戒を促す為だ。
上杉軍に、『織田軍の増援が来たぞ』と、警戒心を抱かせる為だ。
“越後の龍”とまで称される戦上手で有名な上杉謙信だ。
俺の思惑など看破するだろう。
『その増援がフェイクである』と言うことを。
だが、それで良い。
少しでも、ほんの少しでも疑心を抱かせることが出来れば良い。
俺が動いていることがバレさえしなければ。
越前 丸岡城 近辺 某所【視点:細川与一郎藤孝】
「おぉ、おぉ、見事な包囲網ですなぁ……。あれでは織田随一の武勇を持つ“柴田軍団”でも、そう易々と討っては出れぬでしょうな。流石、天下に名高き“軍神”。見事見事!」
拙者は、惣兵衛殿に指示された通り、上杉軍に見える場所に移動し、思わず手を叩き称賛しておりました。
柴田軍と上杉軍、両者は長い間睨み合っており、そろそろ集中力を欠いてくる頃合い。
ふむ……時期は一任されておりますし、いつ行うか……ですが、
「軍旗の用意、完了致しました!」
おぉ、用意が出来ましたか。
では、頃合いも良し、拙者の役目を果たすと致しましょうか。
「細川が“九曜”の軍旗を掲げなさい!」
「「「「はっ!!」」」」
風に揺れる細川の数十の“九曜”紋。
さてさて、我等が“軍監”の策、成功させたいものですが……。
【視点:須藤惣兵衛元直】
「旦那! 上杉軍が撤退してくるぜ!」
――来たか!
どうやら策は上手くいったらしい。
与一郎殿の旗を見て、城に籠る柴田殿等も討って出る事が出来るだろう。
それを見越して、素早く決断して兵を退かせるのは流石“越後の龍”だと感心する。
だが、兵の指揮や軍略で負けても、狡猾さや卑怯さで負けるわけにはいかない。
暫くして此方に向けて引き返してくる上杉軍が射程圏内に入った。
「総員、構え!」
負けっぱなしは悔しいし、性に合わないからな。
「――撃ええええぇぇぇぇっ!」
悪いが、少しはやり返させて貰うぜ上杉!
その後、奇襲は成功したものの、数が数の為、たいした被害を与えることも出来ず、上杉は七尾城まで一時撤退した。
こちらの被害は二千程。
……ホント、厄介な相手だよ。
正直に言えば、越後を相手にしているより、中国の毛利とかに集中したい。
長宗我部の動きも怪しいし。
それ以外にもきな臭い動きをしている奴がいる。
……仕方がない。
最終手段と行くとしようか。
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