第八十五話 次に狙うは
寝落ちしました(汗)
申し訳御座いませんでした!!
誤字脱字、シナリオ的におかしいなどありましたら、指摘宜しくお願いします!
1561年 京 【視点:須藤惣兵衛元直】
”天下布武”――この言葉通り、信長は天下を”七徳の武”によって統治しようとしている。
尾張一国から始まり、美濃・伊勢・大和・紀伊・阿波・摂津・越前・若狭と織田軍はその領土を増やしていき、義昭を追放――殺した信長は、政治の中心である京すらも手中に入れたと言って良いだろう。
一時は問題視していた公家や朝廷も、上洛以降資金等を援助した事で財政状態を改善したので、関係は良好だ。
公家達と茶会を開くなど、その交友関係を続けていく気満々である。
さて、そんな朝廷から”大納言”の位を任ぜられ、それを承知した信長の下には、友好関係にある大名達から続々と祝いの品が届けられてきた。
今川からは信長が鷹狩りを好んだ事から鷹十羽と名のある馬が六頭、その今川と姻戚関係にあり、直接かかわりは無いが、今川を通しての友好関係にある北条からは鷹十三羽と馬五頭、今はまだ同盟関係にある長宗我部からも鷹が十六羽送られてきた。
これは実質、滅亡した足利幕府に代わり、実質京を取り仕切っている信長に対しての献上品の意味合いもある。
信長は鷹狩りが好きなので、これを受け取った時にはえらく嬉しそうだった。
「……で? 次はこれからどう動くつもりだ?」
久しぶりに時間が取れたので、酒を持って行って二人で飲む。
杯を傾け、酒を飲みこむと、
「……ん? あぁ……”天下布武”。その気持ちは変わっていない。俺は、この日ノ本全土を統治し、強く、豊かな国にするつもりだ。故に、狙うのは――」
「――中国、だな」
「なんだ。わかってんじゃねぇか」
クックック、と機嫌良さそうに笑う。
史実でも、京を支配下に置いた信長は、毛利に手を出している。
本願寺や延暦寺、雑賀に根来、伊賀、松永と史実では長きに渡り信長を苦しめた勢力達が味方になっており、武田が大人しくしているこの状況なら、背後を今川や徳川に任せ、中国地方へと安心して攻められるだろう。
とはいえ、余り各勢力が力をつけ過ぎるのも不味いので、何れは本願寺や延暦寺の兵となっている農民達を解散させ、その兵力を落とさなければならないだろうが……。
「後は越後だろうなぁ……。義昭を殺したこと、気付いていても可笑しくないし、上杉が勢力拡大するのは不味い」
というか、義を掲げ、足利幕府に忠誠を誓う上杉に俺がやった事――足利軍に変装して村を襲ったり、義昭を殺したり――がバレたら、多分、恐らく俺が最初に殺される。
それは丁重に断りたい。……どうかバレませんように!
「”越後の龍”……上杉政虎。厄介な相手だ」
「だからこそ、毛利と上杉、両方に対して準備をしないとな」
史実における”中国攻め”と”手取川の戦い”。
それが近付こうとしていた。
そんな慌ただしい中、目出度い事もあった。
権大納言を任ぜられていた信長の”征狄将軍”任命と勝三と奇妙丸様の元服である。
彼等も既に十代後半。
立派な大人である。
其々、”森勝三長可”、”織田勘九郎信重”と名乗る事になった。
一方の”征狄将軍”は、史実において義昭が生きていたからこそ、任命された官位である。
だが、義昭を殺して直ぐに”征夷大将軍”と名乗れば、織田が義昭を殺したと思われかねない。
それを避けた形にはなるが、対上杉に対しては良い牽制となるだろう。
――あ、後子供が産まれた。
……え? 誰のって? ……勿論俺の。
そりゃ、忙しかろうがヤる事やってりゃ産まれるさ。
性別は男。須藤家の跡取りである。
因みに幼名は信長の幼名”吉法師”に因んで”吉千代”。
常にブスッと不愛想な顔をしているが、母である柊殿が抱くと笑う。
いっそのこと”無州丸”の方が似合ってたかもな。
柊殿には仕事に復帰して俺の部隊の副官になって欲しい――優秀だから――のだが、どうやら本人はある程度までは自分で育てるつもりらしい。
ま、そこら辺は仕方が無い。
さて、そんな目出度い話の一方で、着々と中国侵攻と越後侵攻の準備は整っていく。
秀吉や阿波の三好と国人衆、摂津の国人衆、明智光秀殿、石山本願寺勢に比叡山延暦寺の僧兵達、そして”根来衆”を中国に向かわせた。
一方、越後への守りとして、越前を柴田勝家殿を筆頭に佐々成政殿や前田利家殿等”柴田軍団”に領地として与え、守りとした。
更には若狭衆や、新しく柴田殿の与力となった朝倉景鏡等大野衆、美濃衆なんかにも越後への見張りを命じ、自身は京で毛利に対して目を向けたのだった。
【視点:???】
此の儘で良いのだろうか。
我が主が求めていたのは、この様な世の中なのだろうか。
分からない。
これが、これから来るであろう世が、果たして”この国の正しき形”なのだろうか。
……解らない。
某が求めているのは、”正しき世”だ。
万民が富み、平穏無事に生きる世だ。
断じて、今のこの様な乱世など、某も、あの方も望んではいない。
なら、何故あのお方は……。
わからない。
……わからない。
…………いや、そうか。そうなのか。
分かった。漸く、分かった。
某が、真に求めているのは――
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