第八十四話 戦後の色々と茶室の数寄者達
幕間を入れれば百話目です。
毎日投稿はまだまだ全然続きます。
……多分下手したら最後まで。
相変わらずのネットで調べただけの俄か知識で書いております。
間違いの指摘、ありましたらよろしくお願いします。
1561年 京 二条御所 【視点:須藤惣兵衛】
公方勢力との戦は、織田家の勝利で終わった。
そして、公方が落ち武者狩りにあい、死亡したという噂を甲賀・伊賀、そして織田家の草を使って広げさせた。
多分、公方が着ていた衣服などはその場にいた村人を通して、今はもう堺にでも流れているだろう。
その後、信長は死んでしまった義昭後をどうするか、というのを朝廷とやり取りしなければならず、思った以上に難航したらしい。
俺はそれの愚痴を聞いただけだ。
他の大名達の中でも聡い者達は事実に勘付くだろう。
半兵衛と官兵衛の二人からはそれとなくお小言を頂いたので、謹んで聞いておいた。
反省してます。後悔は余りしてないが。
それ以外の連中は、俺等が流した噂を信じ込んでおり、「公方も終わりか」やら「哀れな末路だ」等と噂していた。
幕府が滅亡した事で、やらねばならなくなった朝廷とのやり取りは信長や半兵衛達の仕事だ。
俺は基本的には戦後処理や周辺諸国の情報の収集が役目である。
適材適所だ。
そんな中、俺は暇を使って何をやっていたかと言えば――
「いやぁ……まさかこうして再び二条御所の茶室で茶を頂く事が出来るとは、感激ですな」
「ですなァ……。拙も、こうして兵部大輔殿程の高名な数寄者と茶を飲める事を天に感謝したく思いますなァ」
「……ささ、茶です。皆様どうぞ」
「おぉ、では頂くとしましょうか」
「「「「ズズズズズ…………ふぅ~」」」」
呑気に茶を飲んでいた。
うん、ほのぼの。
いや、勿論やるべき事はやっているので問題ない。
因みに、今日のメンバーは新しく織田陣営に加わった細川与一郎藤孝殿、松永弾正、高山右近殿だ。
……細川殿は織田軍に入ったのは最近だが、このメンバーで飲むことが多くなってきたな。
今度は勝三や氏郷殿も呼ぶとしよう。
与一郎殿から色々学べるだろう。
因みに、兵部大輔とは与一郎殿の官位の事だ。
細川与一郎藤孝――改めて見ても飄々とした雰囲気の人物である。
将軍家から織田、豊臣、徳川と天下を握った勢力へと渡り歩いた人物で、”生き残る天才”と言えるだろう。
和歌・茶道・連歌・蹴鞠等の文芸を修めると同時に、囲碁・料理・猿楽等にも造詣が深く、当代随一と言われる程の教養人である。
更には剣術はかの”剣豪将軍”足利義輝や今川家現当主今川氏真に剣術を教えた剣豪塚原卜伝に習い、弓術を日置流の吉田雪荷等より学び、印可 (師が熟達した弟子に与える許可の事)を与えられ、若狭武田氏の武田信豊から弓術・馬術・礼法等からなる流鏑馬を代表とする”弓馬故実”の武田流を相伝される等、武芸百般にも通じた人物である。
更には天皇から命じられて編纂された勅撰和歌集である”古今和歌集”の解釈を秘伝として弟子に伝えるという”古今伝授”を一時期継承していたなんて逸話もある。
うん、これぞホントの”チート”だよ”チート”。
俺なんか全然比べ物にならない。
正に”文武両道”とか”知勇兼備”とかと称されるべき人物だ。
そんな与一郎殿であるが、その性格は松永と似ている。
飄々としていて掴み所が無く、言葉遊びや人を弄るのが大好きで、性格がひん曲がっている。
武芸や軍略にも造詣があるが、どちらかと言えば”数寄者”という自覚らしく、日々穏やかに、茶を飲み、花を愛で、人との会話を楽しむ”ご隠居生活”を過ごしたいらしい。……同志!!
「……しかし、与一郎殿と弾正は似ておられるな」
俺がそうポツリと呟いたら、三人揃って、
「いやいや、惣兵衛殿も拙者等と同じでしょうに」
「うむ、その通り」
「某からして見てもお三方揃って似ておりまするよ」
なんて言われた。……何故だ。
俺、こんなに捻くれては無い筈だぞ?
ただちょっと性格が悪いだけだ。
「……そう言えば、信長殿は朝廷より権大納言に任じられたとか」
のんびりとした雰囲気の中、与一郎殿が飄々とした笑みを浮かべながらそう言う。
「大納言ですか。……太政官の次官の位を頂くとは、殿の天下も近いやもしれませんなァ」
松永も、いつも通りの胡散臭い笑みを浮かべて頷く。
大納言は、日本の律令制における最高国家機関である太政官の官位の一つで、長官であり、史実の信長が推任された左大臣、右大臣の下の官位である。
史実で大納言に任ぜられた信長はその後、”征夷大将軍”に匹敵する官職で、武家の棟梁にのみ許される”右近衛大将”を兼任する事になり、”天下人”である事を事実上公認された。
だが、色々な事が変わったこの世界でどうなるのかは分からない。
史実よりも苛烈さと言うべきか、自由奔放さというべきか……それが抑えられてる信長だが、史実と同じ様に突然辞退する、なんて事になるかもしれない。
信長とはそれなりに長く付き合っているつもりだが、アイツの考えている事はいまいちわからんからな。
だが、大きな違いとして、将軍足利義昭が死んでいるのだ。
これは自分でやったとはいえ、無視出来ない違いである。
義昭が死んだことで、その代わりをする――出来る人物は、今の時点では信長が最有力だろう。
「……さて、どうなることやら」
恐らく、信長は天下統一する為に、更に広範囲に眼を向け、侵攻を開始するだろう。
その為に、するべき事を考えてかないとな。
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