プロローグ ~かくして歴史は変わり始める~
あらすじに書きました通り、作者の知識はがばがばです。
生暖かい眼でご覧下さい。
??? 《視点:須藤直也》
俺は大学の講義を終え、住んでいるアパートへと帰ってきていた。
レポートやら資料やらが入っている鞄を放り投げ、ベッドに仰向けに倒れ込んだ。
「……疲れた」
あぁ、なんであの教授は戦国時代は戦国時代でも”大内家”ばかりを語るんだろうか。
いや、普通織田とか豊臣とか徳川とか武田とか上杉とか他にも色々あるじゃん。
何故大内家やねん。
……おっと、ついつい関西弁がはいってしまった。
大阪出身の友人に怒られる。
あの先生本当に”大内家”大好きだんだよなぁ……。
俺が入っているのはとある大学の文学部の日本史学科だ。
理由は『戦国時代が好きだから』という非常に簡単な理由なのだが、入る大学間違えたかなぁ……。
勿論戦国時代は好きだから自分で色々調べてそれなりに知識があるとは自負してはいるけど、もっと色々勉強したかったからこの学部に入ったのに……。
この教授、『織田家は何故滅んだか』とか『秀吉と茶室』とか色々本を出してるのに、まさか本人は大内大好き人間だったとは思わなかったよ。
その授業の四割が大内家やその姻戚関係の話だ。
そう言えば、と眠たい身体を無理矢理起こし、鞄の中からレポート用紙を取り出す。
教授から『大内弘興について』ってレポートを出せって言われてたんだった。
……いや、大内弘興って。
早世してるから実績も何もないんですけど。
しかも生没年不詳だし。
ウィキ〇ディアにすら殆ど何も書かれてないんだぞ?
何だよ説明文一行ちょっとって。
マイナー武将でももっと書かれてるわ。
何考えてこんな宿題出したんだあの教授は。
いかん。現実逃避と疲れが加わって更に眠くなってきた。
期日が迫って来てるっていうのに。
それにまだ風呂にも入ってないの……に……。
……あ……ダメだ……レポー……書かな……きゃ。
??? 《視点:???》
散歩がてら、私は山道を歩いていた。
ここは今川領と織田領の国境。
余り人も通らぬし、清き川のせせらぐ音と、野草が風に揺れる音、鳥の囀る声ばかり故、私の散歩道となっていた。
家が取り潰され、遠くここまで逃げて来た私は、今の貧しくも穏やかな生活が気に入っていた。
無論、この国に「我ぞある」と名乗りを上げたいと言う欲もあるが、浪人の身で何が出来ようか。
私に残っているのは腰に下げた刀一振りと幼き頃より学んできた知識のみ。
妻も子もおらぬこの身は寂しかれど、近隣の小僧共に勉学を教えたり、護衛として雇われる事で生きて行くための金は稼げておる。
所詮この身、此の儘死に行く定めか。
そう考えながら歩いておると、道の脇に何者かが倒れておるのが見えた。
「……このような処に人が倒れておるとは珍しい」
近寄ってみると、それはまだ童子とも言える程に幼き者であった。
見た事もない珍妙な格好をしているが、採寸が合ってない。
ふと、何故だがこの童を助けようと言う思いが沸いた。
この訳わからずな者、触れずにいるが最善手なのだろうが……。
見た処周囲にこの童子の親はおらぬ。
そっと抱き上げると、気を失っているはずだが、私の手を握って来た。
「……むぅ」
その顔は気を失っておるが不安げだ。
兎に角、連れて帰り看病をしてやろうか。
私は童を背負い、来た道を戻って帰った。
そして、史実より分岐した歴史は更に加速度的に変わり始める。
だが、それに気づく者は――誰もいない。
ブックマークして頂ければ幸いです。
宜しくお願いします。
※修正箇所
遠江と尾張の境→今川領と織田領の境。
間に三河あんじゃん、という指摘を受けまして、分かり易く修正。
自分の知識のガバガバさに呆れますね。