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暖かくなりはじめ桜や梅が咲き乱れる、春。
学生としては新年度を迎えるこの季節には新たな学校、真新しい制服に身を包み心を弾ませる人も多いことだろう。
そしてこれもまた新年度の風物詩と言えるのではないだろうか。
「ぶっきー校長先生の話長すぎだよー。お陰で足痛いし、今年も何人か貧血で倒れてたし。」
新しい教室で椅子を後ろに向け吹雪の机の上でべとーっとして海乃が愚痴をこぼす。
「校長はあれが仕事なんだから仕方がないだろう……。それより人の机でべとーっとするな!」
「別にいいじゃないかーけーちー。」
「けちとかじゃなくて恥じらいがないのかお前は……。視線に耐えられんから早くやめてくれ……。」
そう言う吹雪の言葉に従って頭だけをあげて海乃が辺りを見渡すと何人かと目があい、だがすぐにそらされる。
それ以外にも好奇心を含んだ視線やら怪訝さを含んだような視線も感じられたことに海乃は疑問を口にした。
「なんで回りの人、私達見てるの?」
確かに女子が男子の机の上でべとーっとしていたら多少の注目を集めるかもしれない。
だが、二人が視線を集めていたのはそれだけではなかった。
その容姿は可憐で儚く神秘の如く、すらりと伸びた長い手足は女子の憧れ、それが中津海乃と言う人物だった。
「はっ!もしかして私のぶっきーを狙っているのだな、絶対に渡さんぞ!」
そしてまた、海乃は自分のそんな評価を知らずにいるのだが。
「誰がお前の、だ。いいからとっとと起き上がらんか!」
「ぐはっ」
手刀をかまし呻くそんな海乃に諦めながらも吹雪は思う。
海乃の傍にいるのが本当に自分で良いのかと。
頭脳明晰、容姿端麗、そんな海乃の傍に何の取り柄もない自分が、と。
今回の視線のほとんどが去年学校であまり話すことがなかったにも関わらず海乃と親しげにしている自分に対する困惑だとわかっていたとしても。
そんなことを吹雪が考えているとは露知らず海乃は変わらぬ調子で吹雪の思考を遮った。
「まあ、そんなことは置いといてだよ、ぶっきー。」
頭を上げ吹雪の方を真面目な様子で見つめると海乃はゆっくりと口を開いた。
「私は、新年度だから新しいことに挑戦したいの。」
だからと、
「部活を作ろうと思います!」
「……はっ?」
何故そうなったと困惑する吹雪をよそに楽しそうに海乃は考えを話始めた。
そんな話をした次の日の朝。
「今日も朝から何をやっているんだ……。」
朝から疲れたような声を発する吹雪と何やら暗い部屋で作業をしている海乃の姿があった。
「ぶっきー、おはようー。ちょっとしたおまじないをしていただけだよ?夜の方がいいんだけどちゃんと寝ないといけないから朝にやってるんだよ。」
何やら制服に黒いマントを纏った海乃に吹雪はじとっとした目を向けながら、
「わかったからさったと学校に行く準備をしろ。もう時間だ。」
そう言って学校へと促した。