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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
ロキの妙計
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ロキの妙計

現在のロキ軍は、ベルヘイム本国への攻撃を担っている。


そもそも、コナハト城奪還作戦を行っているベルヘイム軍の討伐はクロウ・クルワッハの軍に一任されているため、ロキはクロウ・クルワッハの援護要請がないとアルパスターの部隊とは戦えないのだ。


ヴァナディース姫を捕らえたのはクロウ・クルワッハ軍であり、ロキといえども、この件に関しては口を出せない立場である。


そして、少しずつヨトゥン領内に進軍していくアルパスターの部隊と、ベルヘイム国内に攻め入ってるロキ軍との距離は開き始めていた。


ロキのいるロンスヴォより、レンヴァル村付近まで攻め込んでいるアルパスターの部隊の方が、コナハトに近い。


ベルヘイム軍との距離がこれ以上離れると、ロキには手が出せなくなってしまう。


ロキがデュランダルを回収するタイミングは、この時しかなかった。


デュランダルが全ての聖遺物を取り込み、真の力が発揮する事が出来るのか…………ロキは確認しきれていなかったが、作戦を実行する他ない。


(デュランダル……………真の力を取り戻していなければ、他の者に預けるしかない。まずはヴァナディース姫の身柄をベルヘイム軍に確保してもらわなければ、どうにもならん。しかし、今のアルパスター隊にバロールを倒せる者がいるか??フェルグスを倒したという若者も気になるが………凰の目に匹敵する力を持っているとすれば、厄介か…………)


今はアルパスター隊の戦力を減らしたくないが、それでもデュランダルの回収はしておきたい…………その為に、手元に置いておきたい智美をベルヘイム軍に戻す決断をした。


フェルグスの報告では、風のMyth Knightと言っていた騎士………智美の話では、実力は自分と大差ないと言っていたが……………智美と同等の力でフェルグスを倒せるとは思えない。


(まぁ…………そっちの問題は後回しだ。色々と手を出すと、1つが疎かになる。どちらにしても、デュランダルを回収するとなれば、持ち主は殺すしかない。信頼の厚い騎士が死ねば、何か動きはあるだろう。さて………とガヌロンに、今までの借りを返してもらうか…………)


そんな事を考えていると、伝令役の兵が走ってロキの前に向かって来る。


「ベルヘイム軍の使者が到着されました。指示通り1人で来られたようです。周りに敵影はありません」


「そうか…………手筈通りに招き入れろ。城内には入れるなよ。私も直ぐに行く」


伝令役の兵に命令すると、ロキ本人もガヌロンを迎え入れるために歩き出した。


(ガヌロンが1人で来た…………もはや、こちらの思惑通りに事が運んでいるな)


ロキが城外に出ると、ちょうど出迎えの部隊が整い、少し先の方から馬に跨がったガヌロンの姿が見える。


ガヌロンからもロキの姿が見え、慌てて馬を下りた。


敵の将軍自ら出迎えに出て来ると思っていなかったガヌロンは、そのまま馬を引いてロキの前まで歩く。


「ロキ将軍ですな。こんな所まで出迎えてもらえると思わなかったので、馬から下りておらず申し訳ない」


「いやいや、こちらが勝手に出向いただけの事。こちらこそ驚かして申し訳なかった」


ガヌロンの謝罪に、ロキは笑顔で答えた。


「ガヌロン殿、道中お疲れになられたでしょう。食事の用意も出来ております。こちらへどうぞ」


ロキの隣にいたビューレイストが、ガヌロンを城下街の中に案内する。


以前ベルヘイム領であり、現在はロキ軍のベルヘイム攻略の拠点となっているロンスヴォの街は、街の中央に城があり、街は城壁に囲まれている城塞都市だ。


城壁の中にガヌロンを招きいれたビューレイストは、内心ほくそ笑んだ。


普通であれば、敵の領地の中に1人で入る筈がない。


この時点で、計画はほぼ成功したとビューレイストは感じていたのだ。


「本来であれば城中で歓迎せねばいけないと思うが、まだ戦時中………ガヌロン殿も警戒すると思ったので、街の宿に食事を準備させてもらったが………よろしいか?」


内心、罠があるんじゃないかとビクビクしていたガヌロンは、この心遣いは嬉しかった。


「気を使って頂いて、ありがたい。正直、1人なので心細くてな…………」


「当然ですよ。敵の領地に来てるのだから。さっ、こちらです」


ビューレイストの案内で入った宿は、外観は洋館の様な佇まいで、一見別荘のようにも見える。


内装は豪華で、下には大理石の床、上には大きなシャンデリアが取り付けられている。


ガヌロンが食堂に入ると、大きなテーブルに豪華な食事が用意されていた。


「どうぞ座って下さい。大事な話の前なので、酒は後にしましょう」


ロキに促されて、ガヌロンは席についた。


「しかし、ガヌロン殿に来て頂けるとは夢にも思いませんでした。ミッドガルドでは右に出る者はない知才と聞き及んでますよ。それとも何か策がおありかな?」


ロキは少し笑いながらガヌロンを見た。


「ははは!ロキ殿も人が悪い。1人で智美殿を迎えに来いと言われたら、それなりの知がある者が任に就くのは当然でしょう」


そう言うと、ガヌロンは周囲を見渡す。


「おっと、周りに人がいては話しづらいですかな?ビューレイスト、人払いを頼む」


周囲にロキとビューレイストだけになったのを確認し、ガヌロンが口を開いた…………


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