葡萄酒色に染まるガーゴ
「やっぱ皆、背負ってる物の重さが違うなぅん!強くて当たり前だぜぇ!!」
話の間、葡萄酒をガンガン飲んで軽く酔い始めた航太が、少し呂律の悪くなった口調で言った。
「航太、頭悪そうでしゅ~~」
「なんだとぉ~~アヒル!!ちょと来い!!うぃっく!」
店内では、アヒルのヌイグルミと千鳥足の酔っ払いとの追いかけっこが始まる。
店内は、その光景を見て盛り上がった。
ランカストは、その光景を微笑ましく眺める。
「よく…………ここまで復興したな……………」
「お前に守ってもらった村だ。簡単に潰れやしないよ。オレは今ではお前に感謝してるぜ!!」
ランカストが独り言のように小さく言った言葉に、店の主人が反応し、葡萄酒をランカストのグラスに注ぎながら答えた。
ランカストは、国王の元に【デュランダル】を持っていった時の事を思い出していた。
【デュランダル】を目にした国王は、それを一度受け取り、そのまま見習い騎士だったランカストに差し出してきた。
「この剣で、我が国と国民を守ってくれ!!【デュランダル】は、その想いに答えてくれる筈だ!!」
そう言われて差し出された剣を、ランカストは受け取った。
【デュランダル】に認められたランカストは、お祝いとして国王よりベルヘイム騎士最高の名誉である12騎士への拝命と黄金の鞘まで頂いた。
今でも、黄金の鞘から【デュランダル】を抜く度に、国王の言葉を思い出す。
そして、国と国民を守る意思を高めてきた。
その気持ちが周りの人にも伝わるから、ランカストは万人に愛されてるのかもしれない。
「ねぇ、絵美達が何でベルヘイムに来たのか……………何で私達と一緒に戦ってくれてるのか…………………私には分からないけど、何故か私には、皆が救世主に思えるんだぁ………………だから、これからも力を貸してね☆」
ランカストが静かに葡萄酒を飲み始めたのを見て、ゼークが絵美に擦り寄りながら言った。
「ゴメンねぇ……………私も航ちゃんも、ベルヘイムに来れるなんて思ってなかったから、何も考えてなかったってのが正直なトコなんだぁ…………カズちゃんには旅立つ理由があったみたいなんだけど……………」
絵美はそう言うと、一真が何故神話の世界に来る事にこだわっていたのか……………少し知りたくなった。
「一真か…………………先日の一件もあるけど、私は少し苦手だな。神剣持ってるのに戦おうともしないし……………治療班としては戦ってるんだろうけど、皆が苦しんでる時だって他の兵の治療を優先するし……………絵美達の仲間だから、あまり悪く言いたくないけど……………」
「そうだねー。カズちゃん、コッチに来て少し変わった気がするなぁー。智ちゃんを見つけ出したら、一度しっかり話をしてみてもいいかなー」
そんな話をしながら、絵美とゼークが店内に目をやると、まだ航太とガーゴが追いかけっこを展開していた。
ジリジリ航太とガーゴの距離が縮まり、ついに航太に羽を捕まれ、ガーゴは持ち上げられた。
「痛いでしゅ~~。放すでしゅよ~~」
航太に捕まれながらバタバタするガーゴだが、簡単に逃がす航太ではない。
「そういやガーゴ、酒飲みたがってたよなぁ~~」
航太はガーゴのクチバシを広げ、無理矢理葡萄酒を流し込んだ。
「☆£‡†Å◎◇★」
訳の分からない言葉を発し、倒れ込むガーゴ。
そのお腹には、葡萄酒が中から染みてきて、紫に染まっていく。
「ガーゴ…………染みになっちゃうね…………」
絵美が心配そうに、ガーゴのお腹を見る。
「嫌でしゅ~~。ガーゴは純白の体が気に入ってるでしゅ~~(TωT)ウルウル」
その瞬間、周りから笑いが起きる。
楽しい宴も終わり、航太達は後ろ髪を引かれる思いで酒場を後にした。
この時、航太達も村人も、レンヴァル村が新な惨劇の舞台になるとは思いもしていなかった…………




