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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
レンヴァル村の戦い
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ランカストの信頼度

結局ランカスト将軍は、ガイエンやムスペルの騎士の追撃を抑えた功績と、今までの貢献度を考え不問となった。


テントから出ると、ランカストの処遇を心配していたベルヘイム軍の兵が、ランカストの下に集まってきた。


「将軍!!ガヌロンの野郎に、何か言われましたか??」


集まってきた兵が、何も無い事を祈るようにランカストに聞いてきた。


ガヌロンの態度に苛ついていた航太は、ランカストが自ら話をしようとするのを制して、軍法会議を開いていたテントから少し離れた場所で、一部始終を兵達に話した。


航太の怒りが伝わったのか、ベルヘイム兵達もその怒りに同調する。


「ガヌロンの野郎、許せねぇな!!」


「今度、アイツの命令シカトしてやるか!!」


兵達の表情や本気で心配する姿を見て、ランカストという人物は信頼されている人物なんだと航太は強く感じた。


不問になったと聞いた時の兵達の表情が本当に安堵に満ちたものであり、アルパスターからの信頼度が高いのも頷ける…………航太はそう思った。


「ありがとう、みんな!!だが、ガヌロンの戦略は優秀だ。しっかりと従うようにな!!シカトするなよ!!」


ランカストが周りの兵に言うと、笑いながら「うぃーっす」や「へーい」といった返事が返ってくる。


「なんか、こういう雰囲気イイね♪」


軍法会議が終わったのを聞き付けたのか、絵美が芝生で気絶?していたガーゴを拾い上げ、戻ってきた。


「じゃあ、皆も疲れてるだろうから、ゆっくり休んでくれ!!」


ランカストの無事を確かめるまでは休めない…………そう思っていた兵達も、その号令で、ようやく散り始めた。


「じゃあ、オレらも休むか!!」


「ほへー、凄い疲れちゃったからねー♪でも、これでまだ夕方ってトコが信じらんないわー」


絵美は大きな欠伸をして、うっすら涙が出たその瞳を、ゴシゴシと擦っている。


頭にガーゴを乗せた絵美を連れて、航太も自分用に割り当てられたテントに向けて歩き始めた。


「なぁ航太、まだ時間も早い。疲れているだろうが、一杯飲みに行かないか??」


動き出した航太に、ランカストが声をかけた。


「この世界で、そのフレーズが聞けるとは!!」


航太は即行でクルっと反転すると、ランカストのいる場所に戻ってきた。


「ぷっ♪♪相変わらず欲望に正直だね~~♪♪」


「頭の中、酒の事しか考えてないでしゅからね~。だ~から、尿酸値が上がるんでしゅよ~。ぷぷぅ」


絵美が笑いながら、ガーゴが馬鹿にしながら、航太の後に付いて来る。


「…………………絵美クンのは、まだ良しとしよう…………だがなぁ、ガーゴくん、キミは何故に尿酸値なんて言葉を知ってるのかな?てか、オレの尿酸値知ってんのか?」


航太は絵美の頭からガーゴを引き離し、その羽を持って振り子運動のように左右に揺らす。


「って、待てよ……………ガーゴって絵美の魂の情報入ってんだよな…………って事は??」


「はっ?何コッチ見てんの?私が航ちゃんの尿酸値なんて知ってる訳無いじゃん!!気持ち悪い!!」


変態を見るような目で、絵美は航太を睨む。


「オレか?やっぱり、オレが悪くなるのか?」


と言いつつ、ストレス解消しているのか、ガーゴの体を雑巾を絞るように捻っている。


「航太しゃん……………この展開も飽きてきたでしゅ~。そろそろ別の展開にしないと、読者の皆様も飽きてしまうでしゅよ~」


「ガーゴは相変わらず頑丈にできてる……………てか、ヌイグルミだから痛覚無いのか。って、読者って誰だよ!!」


相変わらず捻りのないノリツッコミをかました航太は、捻れたままのガーゴを絵美に投げつけた。


「ねっ、ガーゴ、そっから自分でクルクル回って元に戻ってよー♪」


楽しそうに喋ってる2人?を、ランカストは微笑ましい表情で眺めている。


「なんだよ、呆れそうなモンだけど、楽しそうに見てますね」


「ヨトゥンが人間界に攻め込んで来てから、あんな風に楽しそうにしている姿はあまり見かけないからな…………」


ランカストの言葉に、航太の頭の中で戦場での惨劇が思い出される。


「そうですね…………戦場って、悲劇しか起こらない…………ですもんね」


真面目な顔で呟く航太の顔面目掛けて、ガーゴが飛んで来て…………そして直撃した。


「危なかったでしゅ~。危うく航太しゃんとブッチョさんするトコだったでしゅよ~」


「おい……………アヒル野郎…………今、結構なシリアス展開になりかけたのによぉ~。どういうつもりだっ!!」


再び航太に捕まるガーゴを、投げつけた張本人の絵美が大爆笑している。


「おい、楽しい時間を過ごすのは大切だが、腹も減ってきたところだ。航太に奢る約束もした事だし、そろそろ行くぞ!!」


「マジ奢りですか!!ラッキー!!」


はしゃぐ航太の頭の上で、ガーゴも小躍りをし始めた。


「ガーゴも行くでしゅ~~~。飲むでしゅよ~~」


(いや………無理だろ………)


航太と絵美が、冷静に心の中で同時にツッコミをいれた。


「ここの近くの村に、美味い酒を出してくれるトコがあるんだ!!ヨトゥン領だが、今も昔も、商売人には金さえ払えば贔屓なくしてくれるしな」


それを聞き、ガーゴの事も忘れて航太の目が輝く。


「ねっ、ゼークも呼んでいい??あ、でもランカストさんの財布がスッカラカンになっちゃうかぁ………」


考え込む絵美に、豪快にランカストは笑った。


「おいおい、将軍の肩書きは伊達じゃないぞ!!女の子が増えるなら大歓迎さ。ゼークも前の戦いでは大変な思いをしたし、息抜きも必要だろ」


「やったぜ~。アリガト、将軍♪」


ランカストが絵美に答えると、絵美はダッシュでゼークのいるテントに向かっていった。


「女って恐ろしいなぁ…………一応、一真にも声をかけていいですか?」


「キミの義弟クンだったね。構わないが、ホワイト・ティアラ隊は我々とは違って戦闘の後に戦う部隊だからな…………難しいかもしれんぞ?」


周りを見渡せば、治療班であるホワイト・ティアラ隊の隊員が忙しなく動き回っている。


航太は、最近距離が開き始めている義弟と楽しく話せる気がしなかった。


それでも義弟であり仲間であり、ユングヴィ王子との会話や軍法会議への参加で思うところもあり、飲み会の席であれば一真と腹を割って話せると思ったのだ。


しかし、やはりホワイト・ティアラ隊は忙しく、それどころではないと断られてしまった……………

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