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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
恐怖の炎とムスペルの騎士
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連戦の疲労

見ると【天沼矛】からも水の刃も出ておらず、動きの鈍くなったムスペルの騎士の剣撃を逃げながら受けるのが精一杯な状況になっている。


「くそっ!!絵美もか!!一体なんだ!!」


絵美のフォローに入った航太だが【エアの剣】の力を失った航太に、ムスペルの騎士と打ち合える訳もなかった。


1回打ち合っただけで手は痺れ、体は後方に弾き飛ばされる。


「くそっ!!」


ガイエンに止めを刺そうと【デュランダル】を振り上げたランカストだったが、一刻を争う絵美と航太の危機を見て、2人のフォローに走らなければならなかった。


ガシィィィ!!


ムスペルの騎士の剣と【デュランダル】が激しく激突し、火花が飛び散る。


ベルヘイム12騎士に名を連ねるランカスト相手に、動きの鈍くなっているムスペルの騎士は絵美と航太に構う余裕はない。


しかし、ガイエンを逃がしたくないランカストも攻撃が雑になり、ムスペルの騎士1人を相手に手間取った。


その隙に残ったムスペルの騎士が、右胸を押さえて倒れているガイエンを抱えて後退していく。


ランカストの相手をしていたムスペルの騎士も、ガイエンの救出を見届けると剣の押し合う力を利用し、その反動で後ろに飛び、馬に乗って逃亡する。


その手際の良さに航太達はしばらくは動けず、去っていくムスペルの騎士の後ろ姿を、ただただ見送るしか出来なかった。


「やれやれ…………敵ながら、見事な逃走だな…………引き際をよく弁えている」


航太達の状態を考えれば、敵を追撃するのは得策ではない……………ランカストはそう考え、【デュランダル】を鞘に戻す。


幸い【天沼矛】の力を失う前は、絵美もムスペルの騎士に圧されてはいたが、防御に徹していた為に無傷であった。


「ティア、そのペンダントの効力で皆が助かった。ありがとう」


ランカストの言葉にティアは頷くが、ガイエンと出会ってしまった恐怖を忘れられずに、今だ震えている。


エリサがその細い体を抱きしめ、肩を摩って励ましていた。


航太達はペンダントについて聞きたかったが、ガイエンと結び付きのある物だという事は皆が理解していた為に、ティアの事を考えて誰もその事に触れなかった。


(ガイエン……………奴だけは許せねぇ…………今度会ったら必ず倒す!!その準備はしなくちゃな………って…………そーいや、風の力無くなってたな…………)


航太は【エアの剣】を見つめ、ランカストに力が出なくなった原因を聞こうとも思ったが、それより何より疲れがピークで、それどころではない。


横にいる絵美に、航太は身振り手振りで力が出なくなった事を思い出すように伝えるが、力無く首を振られる。


(何となく、絵美もゲンナリした顔してんなー。とりあえず、今日はグッスリ寝て、明日聞くかー)


航太は大きく溜息をつくと、腕を天高く伸ばし姿勢を正す。


ティアは心の傷が深くなったが、ガイエンとムスペルの騎士相手に、誰も身体的な傷を付けられなかった事は良かった。


ランカストは全員を見渡すと、発破をかけるように少し強めに言葉を放つ。


「とりあえず全員無事だな!!まずは幕舎に引き上げるぞ!!あと少し歩けば休める!!もう一息だ!!」


ランカストの号令に、航太達は幕舎に歩き始めた。


(くそー!!歩かなきゃいけなかったー!!いい加減疲れたな……………いつまで、こんな事が続くんだ……………)


航太は何故神話の世界に足を踏み入れたのか…………何故戦争に加わって戦っているのか………一度整理する必要があると感じた。


ただ今は………………………体と心を休めたい…………………………心の底からそう思った。

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