表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
恐怖の炎とムスペルの騎士
44/221

炎の落ちた跡

ドォォォォォォンン!!


航太達3人の目の前で、この世の終わりのような爆音が響き渡り、数秒後に凄まじい熱風が吹き荒れる。


「絵美!!水の盾を!!」


目の前の出来事に唖然とし時間の止まっていた絵美だったが、航太の声で我に返り【天沼矛】を回転させ、水の盾を形成したため3人とも火傷は免れた。


しかし、超巨大の炎の塊の威力は、ランカスト軍の全てを焼き払うに充分だった。


炎の塊が地面に着弾し、その熱量は全ての物…………ランカスト軍本隊を焼き尽くすまで、3人は目を見開いて、その光景を見続けるしかなかった………


消火をしよう…………そう思わせる材料が無いぐらい、その炎の範囲、威力は桁が違った。


その炎に焼かれた場所に、どんな生命も残されない………口にはしないが、そんな絶望の空気が3人の間に流れている。


いや………口にする事も出来ないぐらい、視線の先にある惨状が衝撃的過ぎて、その光景を微動だにせず見ている事しか出来なかった。


火が鎮静化し始めて、ようやく航太の時間が動きだし、その惨状を受け止める余裕が少しだけ心に生まれる。


我に返った航太は周囲を見渡すと、横にいるランカストは未だ放心状態で、ただ立ち尽くしていた。


自分の部下を失ったランカストの心の悲しみは、自分の比ではないのだろう………航太はそう思うと、この攻撃を仕掛けたガイエンに対し、無性に腹が立った。


自分の両親が人によって殺された………だから、人を恨んでいる………それは分かる。


だが…………


「ガイエン!!!」


航太は、怒りの咆哮を上げた。


周囲の熱で、喉が痛く乾いていたが、叫ばずにはいられなかった。


ユラユラ揺れる視線の中で、炎の塊が落ちる前にガイエンの立っていた場所を見るが、そこにはもはや誰もいなかった。


必死に航太達を守ってた絵美が、航太の咆哮の中でようやく【天沼矛】の動きを止め、ペタっと地面に座り込んだ。


その瞳には涙が溜まっており、「信じられない………」言葉は無くとも、その表情が物語っていた。


「ちくしょおぉぉ!!!!!」


天を仰いで、航太が更に叫ぶ。


周囲の熱量に負けないぐらいの、心の底から湧き出る怒りの叫びだった。


その叫びでランカストも我に返り、力無く立ち上がる。


その弱々しさに、先程までの力強さは微塵も感じられない。


「航太………ひょっとしたら生き残ってる兵がいるかもしれん………助けに行くぞ」


ランカストも、絶望的なのは分かっているだろう。


しかし、弱々しくも一歩一歩、惨劇の現場に向かうランカストに、航太と絵美は黙って付いて行くしかなかった。


(智美がいれば、水の防御が使えて、こうまでならなかったかもしれないのに………皮肉なもんだな………)


巨大な火球に巻き込まれた兵の中には、シェルクードを中心に智美の捜索に否定的だった兵が何人もいた。


航太は、そんな事を思わず考えていた………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ