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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
恐怖の炎とムスペルの騎士
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絶望の炎


移動を開始して数時間後、ガイエン軍と遭遇した。


ガイエンの軍はフェルグスの軍とは違い、統制があまりとれてない感じで、兵の動きはバラバラ。


逆にランカスト軍は各小隊長の連携も良く、ヨトゥン兵を数人で囲みながら、確実に各個に倒していく。


ランカスト将軍はガイエンと戦った回数が多く、戦い方を熟知している。


更に、先の戦闘でランカスト軍はガイエン軍に勝ってるので、その軍の士気も高い。


ランカスト軍は勢いそのままに、一気にガイエン軍を押し始めた。


(今回は、意外とすんなり勝てるかもな…………)


航太は少し気が抜けていたが、それでも歯ごたえの無い相手に楽観しながら戦ってた。


そんな状況だからこそ、視界に絵美やランカストを捉える余裕さえある。


もう誰も失いたくない………そう願う航太は、無意識に仲間を視界に入れて戦うようになっていた。


Myth Knightの航太や絵美、さらに神剣【デュランダル】を駆るランカストは一方的にヨトゥン兵を薙ぎ倒していき、シェルクードら人間の一般兵は、3人1組で1人のヨトゥンと戦い、各個で撃破していく。


力だけで押してくるガイエン軍では、もはや相手にならない。


ガイエンは孤軍奮闘しており、自らに纏わり付く人間の兵を次々に斬り倒していくが焼石に水である。


そのガイエンを視界に入れた航太は、躊躇わずに風の刃を放った。


以前ガイエンと戦った時とは比べものにならないぐらいの風圧と威力を持った刃が、風を切り裂きガイエンに迫る!!


「くをっっ!!」


突然の攻撃を………しかしガイエンは、自らの剣【ヘルギ】で風の刃を掻き消すかのように防いだ。


しかし、その事で体勢が崩れたガイエンに、絵美が【天沼矛】斬りかかった。


「ちっ!!こいつら!!」


その不意打ちですらガイエンは反応し辛うじてかわすが、矛の先から水の刃が現れ、攻撃範囲が突然拡大する。


しかし、幼少時代からヨトゥンからも人間からも天才剣士呼ばれるガイエンは、その水の刃の攻撃ですらも【ヘルギ】で防ぎきる。


「さすがだな!!ガイエン!!」


航太は言いつつも、絵美の攻撃で更に体勢を崩しているガイエンに、風の刃で追い撃ちをかける。


しかし、それだけ体勢を崩しながらも風の刃をかわし、その反動を利用して体勢を整えたガイエンが航太に斬りかかろうとした、正にその時!!


突如ガイエンの頭上から、もの凄い勢いで大剣が打ち下ろされる!!


「なにぃいぃ!!」


航太に集中していたガイエンは、それでも反応し、その突然の攻撃すら【ヘルギ】で防ぐが、その剣の力は凄まじく【ヘルギ】が弾き飛ばされた。


「くそっ………なんて威力だ!!」


そう言うガイエンの額からは、僅かに掠ったのだろうか…………真っ赤な血が滴り落ちている。


しかしガイエンは出血は気にせず、素早く【ヘルギ】を拾い戦闘体勢を整えた。


「やるな…………【デュランダル】の力……………やはり厄介だ」


ガイエンが力を込めると【ヘルギ】は、その込めた力に呼応するかのように赤く輝き始める。


「まずい、距離をとれ!!」


その力…………剣の発する赤い光に包まれると、相手に恐怖を与えて戦闘不能に追い込む能力を思い出し、航太は2人に対して叫びながら自らもガイエンから離れていく。


ガイエンの持つ【ヘルギ】の赤い光りは増し続け、ガイエンと航太達の距離は徐々に開き始めた。


航太達3人は、その赤い光と距離をとる為、ランカスト軍本隊からも少しずつ離されていく。


「オレの軍勢もほぼ全滅か……………厄介な奴らを攻撃範囲に捕らえられなかったのは残念だが………まぁいい、そろそろ頃合いだな!!」


ガイエンは、距離が開きつつも自らの前に集結していくランカスト軍を眺めながら不適な笑みを浮かべ、その赤く輝く【ヘルギ】を頭上に掲げる。


すると、ランカスト軍の全てを巻き込めるぐらいの巨大な火の玉が、突然ランカスト軍の上空に出現した!!


「な…………に…………」


その巨大な火の玉を見上げ、ランカストは目を見開き、そして言葉を失った………


自らの軍の頭上にある巨大な火の玉…………その尋常ではない炎の塊が、その後どうなるのか予想出来るが、距離が離れている為に何も出来ない自分。


いや…………その炎の塊の真下にいたとしても、自らの兵を助ける為に自分が出来る事は何も無い…………ランカストは膝をついた。


そんなランカストの目の前で、東京ドーム1個分は軽くありそうな火の玉が、ゆっくりランカスト軍の中心に向かって落下し始めた!!


「くそっっ!!」


いてもたってもいられなかった…………なんとか軍に合流し、1人でも兵の命を救う…………絶望的な状況の中、それでもランカストは立ち上がり、走り出していた。


「将軍!!駄目だ!!」


航太は咄嗟に風の刃をランカストの足元に放ち、その動きを止める。


「将軍!!気持ちは分かるケド、今行ったら無駄死にするだけだよ!!」


巨大な火の玉を見る絵美の瞳も、その炎の熱量で赤く………赤く染まっていた。


「絵美!!水と風の力でっ!!」


航太の叫び声に絵美は頷き、水の玉を作り出す。


「頼む!!これでっ!!」


その水の玉を風の刃で、巨大な火の玉…………炎の塊に打ち込んでいく。


しかし、正に焼け石に水だった………


降下していく炎の塊を止めるどころか、その大きさを小さくする事すら出来ない。


「やめろおおぉぉぉぉお!!」


ランカストの叫び声も、虚しく炎の中に吸い込まれていくだけだった………


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