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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
恐怖の炎とムスペルの騎士
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パシェード・シェルクードという男

「また戦いかよ!!いい加減、人使い荒いぜ!!」


連戦続きの上にモチベーションが下がりに下がっている航太が、馬上で唸っていた。


気合いを入れ直したからといって、そうそう直ぐにはモチベーションが上がってくる訳も無い。


航太達は今回ランカスト将軍の部隊に配置され、後方から迫るガイエン軍を迎え撃つ事になっている。


今回の全部隊を指揮するは、アルスター国から援軍として来ているフィアナ騎士のアルパスターだが、ランカストはベルヘイムに所属するの12騎士の1人である。


今回の遠征軍の主力の部隊はベルヘイム軍であり、その為にランカストに指揮される兵の士気は高い。


「航太君。友人を失った上に、この連戦だ。辛いのも分かるが、踏ん張ってくれ!!」


ランカストは航太の横に自らの馬を移動させ、凛とした声で発破をかけた。


「はぁ…………了解っス」


そうは言われても急にはモチベーションは上がらず、航太は気の抜けた返事をする。


「航太!!気合いを入れるでしゅ~~。やられちゃうでしゅよ~~。ミーちゃんからも何か言うでしゅ~~」


ガーゴが絵美の頭の上で、何やら人を殴るように羽を振り回しながら跳びはねた。


「ごめんガーゴ…………私もやる気出ないわ………」


前を見てしっかりと歩まなければいけない………気持ちでは理解出来ていても、智美が戦場で消えてから数日が経過し、生存はほぼ絶望的………軍の中でのそんな空気に、絵美もまた入れ直した気合いが消え去っていた。


智美を失い、さらに一真の言葉にショックを受けた絵美のその瞳に輝きはない。


「2人とも、しょぼ~~んでしゅね~~。ガーゴもしょぼぼ~んってしてみるでしゅ~」


相変わらず意味不明な言葉を発し、振り回していた羽根を落ち着かせたガーゴは、肩を落とす仕種をした。


そんなガーゴを睨みつけながら、ランカストの横に1人の兵士が歩み寄って来る。


「ランカスト将軍。そんな奴らに頼らずとも、我々だけでもガイエン軍など充分です。戦う意思の無い奴らなど邪魔ですよ。士気に関わる」


そう言ったのは、小隊長の1人………智美の捜索隊の隊長を努めたパシェード・シェルクードであった。


「智ちゃんの捜索の時もそうだったけど、私達に恨みでもあるわけ??」


絵美には珍しく、目を吊り上げて敵意を剥き出しにしながら、シェルクードに突っ掛かる。


「シェルクード!!絵美も止めろ!仲間同士で啀み合っても仕方ないだろ!!」


ランカストが、言葉強めに2人の仲裁に入った。


「自分達の仲間だけ捜索してもらって、それでもそんな不満そうな顔されたら士気にも影響するんだよ!!あの捜索隊にだって、仲間を失った奴らが大勢いたんだからな!!」


シェルクードは、それだけ言い放つとランカストに頭を下げ、後方に下がっていく。


「あいつ、一体何なんだよ!!」


航太は、シェルクードの言い方に無性に腹が立ち、憮然として言った。


「ムカついちゃうでしょ??何僻んでんだか??」


絵美は、シェルクードが下がった方を向いて「あっかんべー」をする。


「おいおい………色々思う部分はあるだろうが、ガイエン軍は近い。気を引き締めろよ!!」


怒りに満ちた表情をして、明らかに集中出来ていない2人をランカストは不安に思った。


そう………ガイエン軍は近い………


ガイエンという言葉を聞き、航太も絵美も少し気合いの入った表情に戻ってくる。


(今オレらが死んだら、智美を探せなくなる。まずは生きて戻らないとな………)


神話の世界に来た日、ガイエン相手に手も足も出ず、ゼークに助けてもらった事を航太は思い出していた。


相手は、そのガイエン…………


航太も絵美も、まずはシェルクードの言ってる事は忘れ、戦いに集中しようと心に決めた。


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