神剣VS普通の剣
「ビューレイスト!!」
「はっ!!」
かなり高い崖の上から飛び降りたビューレイストは、地面に何事も無かったかのように着地すると、智美に向かって歩き出した。
「我が名はビューレイスト。Myth Knight、勇敢な貴公に、囲んで戦う戦略をとった非礼を詫びよう。まずは傷を回復させ、それから一騎打ちで勝負だ」
ビューレイストは智美の倒したヨトゥン兵の剣を拾い、その場に腰を下ろした。
(凄く紳士な人………だからこそ、強いよね。お言葉に甘えて回復させてもらうよ。私は、ゼークも探さなきゃいけないんだから!!)
智美の身体が青白い光に包まれ、ヨトゥン兵につけられた傷が次々と治っていく。
「素晴らしい………やはり【トライデント】の力がある。彼女は貴重な存在だな……」
その様子を上から見ているロキは、感嘆の声を漏らした。
今までの智美の戦いを見ていた筈の2人の表情に、智美は少し焦りを覚え始めていた。
(この人達、敵の幹部に違いない………それに、凄く強そう………でも、逃げれない……よね……)
周りは攻めて来ないにしろ、ヨトゥン兵に囲まれている。
智美に、選択肢の余地は無かった……
(この人……強そうだけど、私だってMyth Knightなんだから……)
智美は、回復が終わると同時に2振りの剣を握り直す。
「覚悟は決まったか??なら行くぞ!!」
ビューレイストは、ゆっくりと智美に近づいてくる。
智美も剣を構えた。
(この人を倒せば、きっと周りの兵も動揺するはず、必ず皆のトコに戻ってみせる!!)
その時、遠くで3本の光が輝くのが見える。
(アルパスター将軍!?きっと……ゼークを助けてくれたよね!!)
その光を見たことで、智美はゼークは無事と自分に言い聞かせ、目の前の敵に集中する事に努めた。
(私の剣は、当たりさえすればいいんだから!!)
ゆっくりと剣を振ってくるビューレイストの脇を、舞いの動きでスルリと抜け【草薙剣】を振る!!
剣から発生した水の刃が当たったと確信した智美は、スグにヨトゥン兵の囲みを突破する為に、次の行動に移ろうとした。
しかし………
【草薙剣】はビューレイストの体すれすれを通り、掠りもしていない。
剣の動きを把握し、少し体を後ろに傾け、水の刃が当たるか当たらないかの微妙な位置で剣を避けたのだ!
次の行動に移ろうとしていた智美は完全にバランスを崩し、隙を作ってしまった。
(なんで………当たってないの??)
今までの敵は、水の刃の間合いを見切れていなかった。
しかしビューレイストには、その間合いを把握されている。
完全に面食らってる智美のスキを逃すビューレイストではなかった。
今までの動きとは全く違う、高速の剣が智美の鳩尾を襲う!!
「きゃふっっ!!」
一瞬の酸欠状態に、奇妙な奇声を発っし、地面に崩れ落ちる智美………
ビューレイストは刃のついていない剣の腹で、智美の鳩尾をもの凄い勢いで叩いたのだ。
ビューレイストは智美が意識を失ったのを確認し、ロキを見る。
「いかがですか??ロキ様」
一部始終を見ていた黒髪の美青年に、ビューレイストは声をかけた。
「やはり力はまだないが、回復の特性は素晴らしいな…………だが、戦闘中で使える特性はほぼ無しか……」
先程見た智美の回復スピードは、ロキですら息を飲んだ。
「とりあえず連れて行け。聞き出したい話もあるしな」
ロキはビューレイストに言うと、自らの兵をまとめ始めた。
そこへ、一人のヨトゥン兵が走って来る。
「ロキ様に報告します!!前方のガイエン軍が、ランカスト・ユングヴィ両部隊に挟撃され敗走!!同両隊が我が軍を攻撃、押され始めています!!」
報告を聞いたロキは、軽く頷く。
「我が軍は、目的をほぼ達成した。以降、アルパスターの軍はクロウ・クルワッハの部隊に任せ、我々はベルヘイム攻略の任務に戻る。全軍に通達しろ!!」
と伝令を出し、軍を手早く後退させていった……




