ガーゴの体の上で……
風の刃が発生し、航太の目の前の敵を切り裂いていく。
その風の刃の後ろを、風に乗って猛スピードで航太が戦場を駆け抜ける!!
幕舎に近づいた所で、ヨトゥン兵と戦っている絵美と遭遇した。
「何楽してるでしゅか~~。早くガーゴの加勢するでしゅ~~!!」
絵美の頭の上で、ガーゴが喚く。
(オメーは騒いでるだけだろ!!)
そう思いつつも、航太は日常の雰囲気に心が落ち着くのを感じながら、絵美の後ろに立っていたヨトゥン兵を斬り倒した。
「絵美!!大丈夫か??」
航太は絵美を見ると、ヨトゥン兵の返り血を浴びて、真っ赤になっていた。
しかし、ほぼ無傷のように見える。
「大丈夫じゃないよ~~~。もー体中ベタベタ!!早くシャワー浴びたい!!」
「シャワーは無いから無理だな!!一番風呂はオレがもらうし!!」
絵美の返答に少し笑いそうになりながら、とりあえず大丈夫そうだと感じ、航太は軽口で返す。
「サイテー!!レディファーストって言葉、知らないの??ところで、智美とゼークは??一緒じゃなかった??」
ヨトゥンの攻撃をくぐり抜け、幕舎に近づいた所で絵美がようやく気付いたのか、航太に聞いた。
「智美は足怪我してるし、ゼークは両腕を負傷してる。2人を先に逃がしたんだけど、まだ戦場だと思う。今、アルパスター将軍が助けに行ってるけど……」
航太が、たった今まで自分が駆け抜けてきた戦場を見つめた。
絵美も心配そうな表情で、つい先程まで嫌になりそうな思いを抱えながら戦っていた戦場を見つめる。
ただ、ヨトゥンの血が付いて早く洗い流したい体も、嫌な思いで戦ってた戦場に戻らなくてはいけないとしても、絵美はジッとしていられなかった。
「私も………探してくる!!」
「と……とりあえず、ガーゴも行くでしゅ………モガモガ……」
地面にいたガーゴが絵美の肩に飛び乗ろうとするのを、航太はクチバシをキャッチし地面に叩きつける。
「ふぎゃぽん!!でしゅ~」
謎な悲鳴を上げるガーゴを踏み付けるかのように足を出す絵美は、2人のコントを見ている余裕もない。
智美を探す為に、今にも走りだそうとしていた。
「おおぃ!!待て待て!!」
そんな絵美を、咄嗟にガーゴを踏み付けながら、航太が慌てて止める。
「ぐにゃポン!!」
再び奇妙な声を出しているガーゴを無視して、真顔で絵美に声をかける。
「今行って、絵美まで場所が分からなくなったら、どうする??アルパスター将軍とゼークが一緒なんだ!!ぜってー助かるよ!!」
今にも泣き出しそうな………走り出しそうな絵美を力一杯抱きしめて……ただ最後の言葉は航太自身、自分に言い聞かせるように………不安を打ち消すように力強く言った。
(頼む……無事でいてくれ……)
今はただ、祈るしかなかった……
「こ……航太しゃん……謝るから、足どけてくれると助かるんでしゅが~」
ただガーゴの願いは虚しくも、航太が足を退けるのは、それから少したった後だった………
 




