銀色の風
「うおおぉぉお!!」
再戦の口火を切ったのは、航太だった。
航太が風の刃を放ち、その瞬間にジャンプ!!
先程の奇襲のように、自分の後方に風を発生させフェルグスに突っ込む!
フェルグスは冷静に風の刃を弾き、航太の第二波攻撃を【カラドボルグ】で迎え撃つ!!
勢いのついた航太相手に【カラドボルグ】を伸ばしたのだ!!
「ぐわっ!!」
閃光の如く高速で伸びる剣を風圧でズラし直撃は避けたものの、右腕に【カラドボルグ】の斬撃を受け、勢いのついたまま転げ落ちた。
航太の右上腕からは、鮮血が吹き出していた。
辛うじて握っていた【エアの剣】を左手に持ち替えたが、右腕から流れた血液が柄に付着し、握りにくくなっていた。
(畜生!!やっぱり強ぇ!)
今までの生活で感じた事の無い痛みと血液の量に、航太は血の気が引いていくのを感じた。
そんな航太の事情はお構いなしに、フェルグスの攻撃は続く。
伸ばした【カラドボルグ】を、体勢の整わない航太目掛けて横に払う。
「うわっ」
遠心力のついた【カラドボルグ】は、握りの弱い……ましてや、戦う気力の萎えた者の持つ【エアの剣】で防ぎきれるものではなかった。
左手に持つ【エアの剣】で咄嗟にガードはしたが、弾いた衝撃で剣の腹が右腕を直撃し鈍い音がした。
その直後、右腕に激痛が走り【エアの剣】を握れなくなった……それどころか、動かない……。
(折れちまったのか??右腕が熱い!!)
航太は激痛で、剣を構える事すら出来なくなっていた。
更には、汗が額から流れ落ち、目の前の視界の邪魔をする。
「仲間や慕ってくれてた人を裏切ってまで、守りたかったモノって何だよ……」
航太は、絶望を感じながら……ただ、自分の感じている気持ちを呟いていた。
「貴公には分からんさ……国や友人を捨ててでも、守らなければいけない人もいる……」
航太に止めの一撃を放つ為、フェルグスは【カラドボルグ】を伸ばした!!
ガキィィ!!
銀色の風が【カラドボルグ】の剣先の方向を変える!!
まだ治療を終えていないが、航太の劣勢を見兼ねて、たまらずゼークが飛び出してきたのだ!!
「ゼーク!すまない!傷は大丈夫なのか??」
「左腕はまだ動かないケド、右腕は普通に動く!智美に感謝しなきゃ☆」
まだ左腕には力が入らない為、右手だけでバスタードソードを持つゼークが航太に心配をかけないよう明るくいう。
その言葉に、航太は自分の弱い心に鞭を打つ。
(ゼークだって辛いのに頑張ってんだ。オレだって……)
航太の目にも力が戻り【エアの剣】を、まだ動く左手で強く握る。
その時!!
「きゃああああ」
女性…………智美の叫び声が、突然聞こえた。




