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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
2人のフィアナ騎士
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傷ついた銀色の女騎士


「ぐはっ!!」


一瞬の出来事だった。


【カラドボルグ】が瞬く間に伸び、ゼークの左肩に突き刺さる。


「ぎゃああああっ!!」


左肩に突き刺った【カラドボルグ】から黄色い電撃が走り、ゼークの左肩を焼く。


「ゼーク!!」


反応が遅れた航太が、フェルグスに向けて風の刃を放つ。


フェルグスは冷静に……今度も一瞬で【カラドボルグ】を短くし、風の刃を切り裂いた。


「ゼーク!!大丈夫か?」


その隙に航太はゼークに近寄り、声をかけるが反応が無い。


慌てて状態を観察すると、傷口が焼かれているため出血は少ないが、電撃の衝撃で意識を失っており、そのダメージは思ったより深刻そうだった。


虹の長さまで伸びると謳われる【カラドボルグ】


ヨトゥンの陣に雪崩込んだ時、ゼーク軍を切り裂いたのは、伸ばした【カラドボルグ】を使ったのだろう。


(くそっ!!手当てしなきゃいけないんだろーが、簡単に逃がしちゃくれないだろーな)


航太は考えながらも、フェルグスと向き合った。


「お前が守りたい物と想いの強さは分かった。だが、ゼークやアルパスターと戦う必要はないだろ!!」


航太は話ながら、何か状況を好転させるようなモノを見つける為に時間を稼ぐ。


このまま戦っても、ゼークの二の舞になるのは目に見えていた。


「ゼークもアルパスターも、軍の要職に付きさえしなければ、或は戦わなくて済んだかもしれん…………だが、もはや無理だっ!!」


フェルグスの決意は揺るがない。


戦闘体勢をとり【カラドボルグ】を構えるその表情にも、迷いはない。


(くそっ!!やるしかないのか!!)


逆に、航太は迷いも捨てられず、勝てる自信も無かった。


しかし、航太はゼークを助ける為………その一心で【エアの剣】を構える。


何かに縋るように視野を広げていた航太の視界に、ヨトゥン兵と戦う智美が映った。


(智美……イイ位置に!!なんとかコッチに気付いてもらわないと………)


航太は意を決して、ジャンプと同時に【エアの剣】を体の後ろで一度振った。


圧倒的な強さと意思を持つフェルグスと戦わなければいけない不安、そんな相手からゼークを守り通さなければいけない不安。


幾重にも重なる不安を掻き消すように、暴風のような風が強制的に航太の体をフェルグスに向けて押し出す。


風で勢いの増した航太の体は、一直線にフェルグスに向かって跳んでいく。 


「うおおおおぉぉぉぉ!!」


一瞬でフェルグスとの距離を詰め、さらにフェルグスの目の前で一回転し、その遠心力も加えてフェルグスの頭目掛けて【エアの剣】を振り落ろす!!


一瞬の出来事で、フェルグスも【カラドボルグ】で受ける事しか出来なかった。


ガァキキキィィィン!!


剣と剣のぶつかり合う、凄まじい金属音が辺りに響き渡った。


案の定、近くで戦っていた智美が航太に気付く。


航太は智美を見て目配せした後、倒れているゼークを見た。


智美が頷いたのを確認し、フェルグスの足元に風の刃を繰り出す。


「ぬをっ!!」


土煙が舞い上がり、フェルグスの視界を塞ぐ。。


その隙に、航太は風の力を利用しゼークの傍に跳び、その容態を確認する間もなく抱え上げると、智美の方へ再び跳んだ。


「酷い傷!!ゼークがこんなになるなんて!!」


両肩の傷を見るなり、智美が自分の口を片手で抑える。


ゼークの実力を知っている分、信じられない様子だった。


「智美、ゼークの回復をしてやってくれ!!」


智美の剣【草薙剣】と【天叢雲剣】は防御と回復の力が備わっている剣である。


智美は頷くと、直ぐに剣を振る。


2振りの剣から発生した優しい青白い光が、ゼークを包み込んでいく。


その光を確認した航太は、再びフェルグスと向き合った。


「オレには、もう難しい事は分からねぇけど……守りたい人がいる。大切な友人がいる……そんな人達を失いたくない。」


ゼークと智美を見て、航太は心からそう思った。


「そうだ。それが人の心だ。その心と意思こそが、人が人である証だ。自分の大切な人を救うために………何かをしなければならない時もある!!」


ゼークの回復を見守っていたフェルグスが、戦闘再開の狼煙をあげるかの如く【カラドボルグ】を航太に向かって伸ばす!!


航太は風圧を利用して剣先を僅かにズラし、辛うじて直撃を避けた。


航太は【エアの剣】を握りしめ、フェルグスを睨む!!


「ゼークにとって、それがアンタだったんだ!アンタとアルパスターだったんだ!なんで………なんで分からない!!」


明らかにフェルグスは、ゼークの回復の為の猶予を航太と智美に与えていた。


戦う決意を持っているのに倒さない………何故か航太には、そんなフェルグスが許せなかった。


もはや戦うしかない………


そんな空気が、2人の間を支配していた………

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