決戦前の決意
決戦の朝……
決意を胸に外へ出た航太を出迎えたのは、幻想的な朝焼けの光景だった。
青からオレンジへ変わっていく景色を見て、航太は気持ちが少し落ち着いた気がした。
しかし、そんな時間は長く続かない。
「見たぞ見たぞ~~~~~!!夜中に若い女と2人きりで何してたぁ~~♪♪♪」
顔を合わせた瞬間に、絵美がニヤニヤしながら航太に話かけた。
「……………なんで知ってんの?」
「ガーゴは見たでしゅよ!!夜ばいする変態の姿を!!まったく、このロリロリ野郎にはウンザリでしゅ~~」
(またアヒルのヌイグルミか……。せっかくイイ気分だったのに!!もー、どうにかしてくれ!!)
航太は、頭を抱える。
それを見て、智美が「プーッ」と吹き出した。
「毎回、同じやり取りしてて、楽しいの??」
「楽しい訳ねーだろ!!誰だ!!こんなアホに命吹き込んだの!!」
「ゴメン………私だ……」
航太が怒鳴った瞬間に、消え入りそうなエリサの声が聞こえてきた。
「航兄、とりあえずエリサさんに謝った方がいいと思うよ」
「………………………………スマン………」
航太は、エリサに深々と頭を下げた。
(今のはオレが悪いのか???まぢ納得できねー!!)
「みんな相変わらずだね☆でも、今からは気を引き締めて!!なんたってフェルグスが相手なんだから!!」
ゼークが馬に乗り、綺麗な銀髪を靡かせながら、颯爽と登場する。
ゼークの言葉に、昨日のテントでの話が航太の頭の中に過ぎる。
アルパスターとフェルグスは、絶対に戦場で出会わせてはならない。
将軍という肩書がある以上、過去のように戦わずに済むはずがない。
2人が戦場で会わないよう、自分がしっかりしなくては…
航太は気持ちを入れ直し、深呼吸してから周りの景色を見た。
辺りは少しずつ明かりを増していき、太陽の光を感じられる程になっていた。
「ヨトゥン軍に人間から仕掛ける事なんてほとんどない!!この奇襲で、我々が優位に立つぞ!」
ゼークが全軍に向かって叫ぶ。
「おー!!!」
全軍がゼークの声に応え、凄まじいパワーが声になって戻ってくる。
大気を震わせる程のパワーに、航太は身震いした。
「ホワイト・ティアラ隊は後方支援。我が部隊は正面から突っ込む!!相手を後退させれば、それでいい!!」
ゼークの声は躊躇いもなく、将としての威厳もあった。
(今のゼークなら…大丈夫!!)
航太には、なぜか核心めいた思いがあった。
「突撃!!」
ゼークの声で、一斉に馬が走り出し、凄まじい量の砂煙りが舞い上がる。
前衛にゼークと航太。
中軍に絵美と智美。
後衛にホワイト・ティアラ隊といった陣容で、フェルグス軍との戦いが開戦した。
 




