繋げる想い
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ゼークの話をジッと聞いていた航太は、自分がずっと正座していた事に気付いた。
(ヤベッ……足がぁ~~~~)
航太はゼークにバレないように、足をくずし胡座にした。
(しかし、アルパスターとゼークに、そんな過去があったのか……)
「ゴメンね。昔話なんかして。航太ならちゃんと話聞いてくれると思ったの」
ゼークは立ち上がって「お茶でもいれるね」と言って、テントの奥にある竹筒から、湯呑みにお茶を入れ始める。
ゼークも長々と話してたため、喉が渇いたのかもしれない。
「なぁゼーク……今、何考えてる?」
後ろ向きのゼークに向かって、航太は出来るだけ優しい声でゼークに問いかけた。
「えっ??」
銀色の髪を靡かせて、ゼークが振り向く。
「昔話したかったダケじゃないだろ?せっかくだし話してみろよ……聞くだけなら出来るから…」
ゼークは視線を湯呑みに戻して、少し息を吐いた。
「昔は私、幼かったから、アルパスター将軍の言ってる事がよく分からなかった。でも、今ならアルパスター将軍の言ってた事、なんとなく分かるんだぁ」
ゼークはそう言うと、お茶の入った湯呑みを二つ持ってきて、「はいっ」と一つを航太の前に出して、話を続けた。
「あの時からフェルグスとアルパスター将軍は戦場では会ってないから、今回もし戦場で2人が会ったら、どうなるか恐いの……」
航太はゼークの「恐い」のニュアンスが殺し合う事の「恐い」と、
少し違う気がした。
ゼークが何を恐れているのか、航太は気になった。
「二人は戦わないって、騎士として誓い合ってるんだろ?なら戦わないさ」
航太は当たり障りない言葉で、ゼークの次の言葉を待つ。
「そう……きっと戦わない。だから恐いの。戦争中に相手の将に会って、戦わずに戻ったなんて言ったら……」
ゼークは言って、お茶を少し飲んだ。
唇を少し潤して、航太の目を見る
「そうか。ただでさえ敵と遭遇して戦わなかったら疑われるのに、お互い友人同士だったから、尚更か!」
航太は何故、ゼークがアルパスターとフェルグスを近づけさせないようにしてたか、分かったような気がした。
「じゃあ、アルパスターが戦場に来なくて済むようにしなきゃな!!」
航太が気合いを入れると、ゼークも「おー!!」と腕を振り上げる。
しかし、ゼーク表情は今だ暗かった。
(まだ、何かあるな……)
「なぁゼーク…ゼークは民と国…どっちが必要だと思う??」
ハッとして、ゼークが航太を見る。
「オレにはまだ分からない。でも、オレは神剣を使いこなす事が出来るようになったら、まず仲間を守りたい。それから大切な人を守りたい。苦しんでる人を守りたい……」
ゼークは航太の言葉に耳を傾けている。
「国がオレの大切な人を苦しめるなら国と戦う。神が大切な人の命を奪うなら神とだって戦うさ」
ゼークは目を丸くした。
構わず航太は続ける。
「フェルグスは自分が大切に思ってる民を守る為にヨトゥンに身を委ねた。なら、アルパスターはどうだ??」
ゼークは何も言わない。
いや、言えなかった……
「ただ漠然と国に尽くした。だから自分の心が痛んだんじゃないのか?だからフェルグスと戦おうとしたんじゃないのか?」
「そんな簡単な事じゃない!!」
急に、ゼークは声を荒げた。
「アルパスター将軍はそんな事とっくに分かってる。なら、みんなヨトゥン軍に入る?クロウ・クルワッハやガイエンのやってる事も肯定する事になるのよ!」
今度は、航太が黙る番になってしまった。
「何が正しいって、本当に難しい問題だよね……だから2人には戦場で会ってほしくない…2人とも守りたいものって同じだと思うから……」
ゼークの言葉に、航太は好き勝手喋った自分が恥ずかしくなった。
アルパスターもゼークも分かっていた。
同じ思いを持っていても、アプローチの方法が違うと敵になってしまう。
ゼークは2人が再び供に歩む時、大きな可能性が生まれると信じている。
その為に、自らを犠牲にしようとしている……。
その事をアルパスターも分かっていた。
だから「頼む」と言ったのだ。
航太は、ゼークの想いがなんとなく分かった気がした。
「ゼーク。2人を守ろう。そして、お互いの想いが重なる時があると信じて待とう!!」
航太は絶対にゼークを守ると心に誓った。
「航太……話聞いてくれてアリガトね☆なんか、いつの間にか心が軽くなってたよ☆」
ゼークにいつもの明るさが戻ってきた。
そして、ついに決戦の朝を迎える……。




