ゼークの不安
「なぁゼーク……今度戦うフェルグスって、かなり強いのか??」
馬に揺られながら、航太がゼークに聞く。
この一週間で乗馬もかなり上達し、走らなければ自在に操れるようになっていた。
ゼークは一瞬だけ航太を見ると、再び前を向いて口を開く。
「強いよ。神剣【カラドボルグ】は虹の長さと同じまで伸びると言われ、更に雷の力を付加されてる。それを操るのは名将フェルグス……強くない訳ない……」
最後は消え入りそうな、小声になっていた。
「やっぱりゼークおかしいよね?伝令の話聞いてから、何か様子が変~~」
絵美が、頭の上のガーゴを見て言った。
「ただ相手が強いからビビッてるでしゅよ~~。情けないでしゅ~~」
ガーゴの言う事を、全員軽くスルーする。
「最近、みんな冷たいでしゅ~~(゜ーÅ)ホロリ」
ガーゴの泣き真似を軽く見てから、智美がゼークの横に馬をつける。
「ゼーク、何でも話聞くから、話せる時に話して。私達、もう友達でしょ?」
優しい声で、ゼークに言った。
ゼークは頷いたが、やはり何も話さない。
ただゼークは、迷いとも悲しみともとれる表情を浮かべている。
それは、ガイエンと戦った時の凛とした表情とは違っていた。
智美は、そんな表情のゼークの事が心配で仕方なかった。
「航ちゃん…ゼーク大丈夫かな…私、結構心配なんだけど…」
「まぁ…戦場で色々あるのは経験してるし、ゼークにも思うトコあるんじゃないか?聞けそうなら、それとなく聞いてみるけど…」
航太も何かあるとは感じているが、正直ゼークの方が精神的に自分より大人だと感じており、自分が出る幕は無いんじゃないかと思う。
ただ、本当にゼークを心配している智美を前に本音は言えなかった。
「あれか??」
そんな事を考えてると、航太は小高い丘の頂上付近からヨトゥン軍の陣営を見つける。
ゼークが全体に「止まれ!」と合図し、ゼーク軍は丘の上に陣をとった。
陣所が決定し、落ち着いた所で、部隊は各々食事をとった。
もう日は傾いていたため、突撃を翌日の朝と設定し、今日の残りの時間は旅の疲れをとる休息に当てられた。
航太はゼークに、指揮官に迷いがあると全体に影響するんじゃないか?と、話をしてみた。
そんな事は百も承知だとは思ったが、何かを聞くキッカケにはなるんじゃないかと思ったのだ。
無言で頷いたゼークは、食事の後に航太だけを自分のテントに呼び出した。
「入るよ……」
航太は一声かけて、テントに入る。
テントの中は、薄い柑橘系の臭いが充満し、航太は気持ちが落ち着くのを感じる。
「ゴメンね。呼び出しちゃって」
やはり、あまり元気のない声でゼークが言う。
「いや……今回の戦い……何があるんだ??」
「うん……航太にだけは話しておこうと思って……」
ゼークが航太に「座って」と促しながら、航太の問いに答えた。
そして、ゼークは語り始めた。
何故自分が悩んでいるのかを……




