軍師ガヌロンと騎士ランカスト
ゼークや航太達が幕舎に着いた頃には、アルパスターを上座におき、各将軍が並んでいる。
航太達は、末席の椅子に座った。
それを見たアルパスターは立ち上がり、話始めた。
「今我々が向かっているコナハト国の主城の手前の都市、スラハトにロキ軍の先鋒隊が布陣している。隊長はフェルグス」
アルパスターは地図を指しながら、話を続ける。
「そして、オゼス村付近に駐屯していたガイエン隊も我が軍の後方に迫っている」
アルパスターは横に座っている、軍師【ガヌロン】を見た。
ガヌロンは、ベルヘイム国きっての知恵者である。
「では、我が軍の配置を説明する」
ガヌロンは、地図を広げる。
「まずフェルグス隊には、ゼーク隊をぶつけます。航太ら3人のMyth Knightも、ゼーク隊の支援にあたってもらう。」
ガヌロンは、航太達を見て言う。
訓練を積んだ航太はもう一度ガイエンと話たいという気持ちがあったが、我が儘を言う訳にはいかず、頷くしかなかった。
「【ランカスト】将軍には後方のガイエンを牽制しつつ、ゆっくりスラハトの方に後退して下さい」
【ランカスト・バニッシュ】
白銀の鎧を纏い、銀髪から覗く顔立ちは、高貴な雰囲気を窺わせる。
総指揮官のアルパスターはアルスター国に所属するフィアナ騎士であり、今回の戦いには援軍要請によって協力しているに過ぎない。
しかし、ランカストは今回の遠征軍を総括しているベルヘイム国に所属する騎士であり、故に兵からの信頼も1番厚く、その信頼に応えるべき強さもあった。
また、アルパスターの友人であり、アルパスターの先祖で7国の騎士であった【ランティスト・ディノ】に敬意を表して、名前をも真似ている。
そんなランカストは、ガヌロンの言葉に頷いた。
「ゼークはフェルグスとの一騎打ちは必ず避ける事。ゼーク隊の後方には私がつく。気負うなよ」
アルパスターは、ゼークに諭すように言う。
「分かってます!でも将軍の出番はありませんから!!」
いつものゼークとは違い、険しい表情、強い口調で答える。
アルパスターは少し困った表情をして、航太に「ゼークを頼む」と耳打ちした。
(ゼークなら問題ないと思うケド……フェルグスってのは、そこまで強いのか?)
航太が難しそうに考えていると、ガヌロンが航太に寄ってきた。
「君達はMyth Knightだが、3人で固まって戦うように。まだ実戦経験が浅いからな。ゼーク殿の邪魔をするなよ」
ガヌロンは航太に言い放つと、幕舎を出ていった。
「感じ悪ぅ~~」
絵美が幕舎の出口に向かって「アッカンベー」をする。
「じゃあ皆、気をつけて戦ってくれ!!自分の命を大切にな!!」
アルパスターは、全員に号令をかけた。
航太は始めての実戦に、興奮と緊張が入り乱じる不思議な感覚に支配されていた……




