ティアの回復
「ティアさん!もう動けるの??」
一真はティアの腹部と、顔を交互に見る。
傷ついて倒れてた時は分からなかったが、茶色の長い髪に白い肌……アジア系の顔立ちでかなりの美人だ。
ティアは一真の目をジッと見た。
「一真さん、ネイアさんから聞きました。私を全力で助けてくれたって…ありがとうございます」
一真は照れ隠しのためか、頭をポリポリと掻いた。
「カズちゃんの好みのタイプかぁ~♪顔が赤いぞ~~♪」
絵美が一真をからかう。
目を輝かせている絵美を無視して、一真はティアの腹部の傷を見る。
「もう大丈夫そうだね。傷口も残ってない。凄い回復力だね」
「ネイアさんやエリサさんが、回復魔法を一晩中交互にかけてくれたんです。皆さんには、本当に感謝です」
ティアは深々とお辞儀した。
「ところで、ティアさんを襲った男の事知ってますか?」
航太がティアに聞く。
「いえ…知りません」
ネイアは短く言うと、首を横に振る。
あまり思い出したくない、という感じだ。
「ごめんなさい!思い出したくないよね!この馬鹿の言う事は無視してイイからね」
智美が航太を一瞬睨み、ティアに優しい言葉をかける。
「ホントだよ!ガイエンに斬られたの、ティアさんの旦那さんだったんでしょ。まったく、航ちゃんは無神経スギだよ!!」
「無神経でしゅ~、航太は無神経でパープリンだから、レデーの気持ちなんて分からないんでしゅよ~。ぷぷぅ~」
絵美とガーゴのダブル攻撃に、航太は右手を握り拳に変える。
(無神経は、てめぇらだろーが!!旦那斬られたとか、人笑かそうとしたりとか…そういう雰囲気じゃねーの分かれ!てか、アヒルのヌイグルミを連れてくんな!)
ティアは軽く微笑んだが、すぐ表情が曇っていく。
「私、主人も子供も失って何をすればいいか……」
ティアは少し声のトーンを落とし、俯いた。
「落ち着くまで休んで、それから考えればイイよ。1人でいるより大勢でいる方が、こういう時はイイと思うよ」
一真はアルパスターの方を向いて、目配せをする。
「うむ。体と心の傷が癒えたら、ホワイト・ティアラ隊で働いてもらってもいいだろう」
「それがいいですよ!私達も、このままティアさんと別れるのは心配だし、一緒に行けばガイエンに怨みの一撃を入れれるかもしれないし!」
エリサの口調が、珍しく強めである。
それくらい、子供と旦那を同時に失ったティアを心配していた。
「そうだな…ただ、今はガイエンを見るも戦場を見るのも辛いだろう。しかし、ティアの所属するホワイト・ティアラ隊は皆を助ける部隊だから、我々が全力で護る。これ以上、心の傷を増やさない事を約束しよう」
「将軍は、大抵の約束は守ってくれるから安心して!私達も全力で護るから☆」
アルパスターとゼークの言葉にティアは頷き、同時に凄く感謝した。
「じゃあ、オレ達は剣の練習に行くか!!ティアさんを護る為にも、強くならなきゃな!!ゼークさん付き合ってくれんだろ!」
航太は自分が言った無神経な言葉を挽回するために、一言付け加え立ち上がる。
「航太、必死でしゅね~。でも、失った信頼は戻らないんでしゅよ~って、航太止めるでしゅー。尻尾、尻尾が切れるでしゅ~」
もはや無言で絵美の頭の上に乗っていたガーゴの尻尾を掴み、航太はガーゴをグルグルと回す。
「はいはい、おふざけはココまで!!私は厳しいわよ~~。みんな覚悟しなさい☆あと【さん】禁止!!」
ゼークは少し笑いながら、しかし最後の言葉は真剣な顔で4人を見渡しながら言った。
「了解♪♪私達の事もね♪」
絵美も、場に全員に向けて言う。
その後、航太達はゼークと訓練。
一真はホワイト・ティアラ隊に合流した。
その頃、ベルヘイム東の国境で戦っていたアデリア・ホーネは、ロキ軍の先鋒隊に敗走を余儀なくされていた。
ロキ軍の先鋒隊を指揮するのは【フェルグス・マクロイヒ】
神剣【カラドボルグ】を操る歴戦の勇者であった……




