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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
コナハト攻城戦
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コナハト城へ……

 ベルヘイム軍がスラハトの城壁に辿り着いた頃、一真とガイエンはコナハト城の城壁付近に潜んでいた。


「まだ11時前だな……ここから何分ぐらいで、西の入口に着くの?」


 一真がデジタルな腕時計を見ながら、ガイエンに聞く。


「あん? てか、お前の腕についてるソレ、新しい兵器とかじゃねぇだろうな……ここから西門まで、15分ってトコか」


 ガイエンの答えに、一真は思わず吹き出した。


「何言ってんの? これ、ただの時計だよ。じゃあ、あと少しここで待機だな……」


「お前……今、完全に笑ったよな! 馬鹿にしてんのか?」


 ガイエンが喰いついてくるのを一真はスルーして、アルパスターから貰ったコナハト城内の見取り図を広げる。


「テメっ! いい度胸してんなぁ……おい!」


「ガイエン! 真面目に話そうよ! とりあえず、オレがガイエンに捕まったフリして侵入するでしょ? で、気付かれたらバロールの部屋まで一気に走ると……このバロールの部屋の前にある、小部屋は何?」


「……はぁ……」


 もはや何も言うまい……


 そんな表情でため息をつきながら、ガイエンは見取り図を覗き込む。


「この部屋は、バロールの部屋に入った瞬間に死なないように、魔眼が発動していないか確認する為の部屋だ。それにしても……この見取り図、古すぎんだろ……内部は、かなり変わってんぞ」


「7国の騎士達が戦っていた時代のモノらしいから、確かに古いよね……でも、バロールの部屋の横に小部屋が残ってるなら、そこで態勢が整えられるか……しかし、魔眼って厄介なんだね。急いで部屋に入ったらポックリって……洒落にならないよ。小部屋を作ったって事は、過去にはポックリいった人がいたんだよね……うー、コワッ!」


 …………


 呆れた表情一真を見たガイエンは、黙ってしまう。


(コイツに任せて、本当に大丈夫なのか? 戦ってる時と普段のキャラが違いスギだろ……だいたい、本気で真面目なのか? 作戦が雑過ぎる……)


 ガイエンは一真を横目に見るが、その表情は結構真面目である。


 元神であり、戦う為の訓練はしてきたと言っても、人間に転生して、普通に看護学生として生活していた一真が、しっかりした策を考えられる筈もない。


 ガイエンが頭を抱えていると……


 ガァァァァァァァァン!


 遠くで閃光が輝き、轟音が響き渡った。


「きゃああああ!」


 それと同時に、一真達から少し離れた場所でアクアと遊んでいたルナが悲鳴を上げる。


「始まった! コッチも、そろそろ動き出そう! アクア、戻って」


「はいニャ! 作戦は決まったのかニャ?」


 一真の肩に飛び乗ったアクアは、欠伸をした後に身体を伸ばす。


「うーん……ガイエンが真面目に考えてくれないから、とりあえずは正面突破かな? 城の事、詳しいとか言ってた割に、大した考えもないからねー」


「いっつも偉そうに私達に突っ掛かって来てたのに、頭悪いんだねー。カズ兄ちゃん……やっぱり、ガイエンなんかに頼らない方がイイんじゃない?」


 頭を掻きながら困った表情をする一真の言葉を聞いて、ルナがガイエンを睨む。


「お前らなぁ……真面目じゃねーのは、貴様だろーが! だいたい、作戦を考えてんのはオレじゃねぇ!」


「ガイエンにゃん、責任転嫁とは男らしくニャいニャ。情けニャいニャー」


 反抗したガイエンに、アクアが追い撃ちをかける。


「くそっ! てめーら、オレで遊びやがって……ところで、このガキは誰の子だ? 一真、大人しそうな顔して、ヤル事はヤッてんだな?」


 ガイエンは視線に入ったルナに反撃の糸口を見つけ、一真を肘で突っつく。


「違う!」


「そーよ! 私は将来、カズ兄ちゃんのお嫁さんになるの! 子供扱いするなんて、失礼な人ね! そんなんだから、レデーに見向きもされないのよ!」


 ………………


「はっはっは! こりゃ~いい! 頑張れよ、一真!」


 反撃が成功したガイエンは、腹を抱えて爆笑する。


「バルデルス、ガイエンは大丈夫そうニャ。人の心も取り戻しているし、きっとニャー達の力になってくれるニャ」


「うん……あの笑顔に、悪意は感じない。オレは、ガイエンを信じて戦う事にするよ。アクア、必ずバロールを討って、フレイヤさんを取り戻す。そして、7国の騎士達が繋げてくれた希望を……」


 ルナとガイエンが言い争っている姿を微笑ましく見つめた一真は、そのまま決意を胸に視線を空に移す。


 その瞬間!


 ゴオオォォン!


 何かが崩れる音に続き、多量の火の玉がスラハトの町に注がれていく光景が目に写る。


「なんて事だ……スラハトだって、ヨトゥンの領地だろ……人間が暮らしている町だからって……」


 唖然とする一真に、ガイエンが後ろから肩を叩いた。


「バロールなら、この程度はやるだろ……だが、ある意味チャンスだ! この隙に、コナハト城へ侵入するぞ! ガキはどっか行ってろ! この先は危険過ぎる!」


 そう言うと、ガイエンは西の城門に向けて走り出す。


「ルナ! ガイエンの言う通りだ! ここで待ってて。アクア……思ってたより、バロールは危険だみたいだ。ルナを頼む!」


 アクアにルナを預けると、ガイエンの後を追って一真は走り出した。


 ルナの視線は、一真の後ろ姿を追い続ける。


 その瞳は、決意を色を燈していた……


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