スラハトの歴史
城下都市スラハト……
コナハト国の首都であり、町の中心の高台には巨大なコナハト城が聳え立っている町並みは整然としている。
元々は農業が盛んな地域であり、過去には豊かな穀物の恩恵で国の中心として繁栄していた。
しかし、ヨトゥンと手を組んでいた女騎士メイヴが台頭して来た時代、その農業の恩恵を受ける為に攻め込んで来たクロウ・クルワッハの部隊により占領される事になる。
強固であったコナハト城は屈強の騎士に護られており、簡単には堕とせなかった。
スラハトは農作物を各地に送っていた交通の要所でもあり、ムスペルヘイムへ繋がる唯一の都市である。
また、ベルヘイムやアルスターといった大国とも国境を接しており、コナハト城を占領されれば、そこを拠点に攻め込む事が可能になってしまう。
その事を危惧した各国は、それぞれの騎士団……ベルヘイム騎士団、フィアナ騎士団、そしてクロウ・クルワッハ軍の猛攻に耐え抜いていた騎士団も赤枝の騎士団の名と共に再編成されコナハト城防衛の為に戦った。
予想外の苦戦を強いられたクロウ・クルワッハは、赤枝の騎士最強だったメイヴに裏切らせ、コナハト城を内部から混乱させる策をとる。
メイヴの裏切りにより、長い戦いは終止符を迎える事になる……そう、各騎士団は破れ、コナハト城はバロールの居城となった。
その戦火に巻き込まれたスラハトの住民達は、戦争の後もバロールの圧政に苦しむ事になり、今に至る。
バロール軍の駐屯地となったスラハトの人々は、常に魔眼の脅威に怯えて生活をしていた。
バロールは機嫌が悪くなると魔眼でスラハトの町を眺め、人を殺す事もある。
更にバロールは人々を奴隷や家畜のように扱い、自らは贅を凝らしていた。
スラハトを囲う城壁の外に出ると死刑という掟もあり、人々はスラハトに留まるしかない。
スラハトの人口が減ってくると近くの村や町から人を補充し、スラハトから人がいなくなる事はなかった。
反旗を翻そうにも、魔眼相手には迂闊な事は出来ない。
そんなスラハト人々には、過去に一度だけ希望をみた事がある。
メイヴとバロールの呪いの力で全ての男性の力が消失させられた時、その呪いを受けなかった唯一の男性、太陽の子クー・フーリンが単騎でコナハト城に侵入し呪いを解いたのだ。
その時からクー・フーリンは消息を絶ったままだが、呪いが解かれた日にスラハトの町の地面に突き刺さった一振りの剣が発見される。
赤く輝く剣に絡み付くように垂れ下がった2組のペンダントは、まるで剣と番のように赤く輝いていた。
その剣を抱えてコノート国に走った女性は、魔眼の影響を受ける事なくアリル王の元へ辿り着く。
赤き剣の伝説……その剣さえあればバロールを倒せると、スラハトの人々は希望を寄せていた……そして絶望する。
その剣は、ヨトゥンに……バロールとクロウ・クルワッハに忠誠を誓ったガイエンの手に握られコナハトに戻って来たからだ。
神々しいと思っていた赤き輝きは、よく見ると禍々しく不気味なものである。
恐怖の剣……その赤い輝きを見ると、恐怖で何も出来なくなってしまう。
そのせいで、問答無用で言う事を聞かされる人々が続出した。
ガイエンと裏切りの騎士メイヴは、人でありながら現在はクロウ・クルワッハ隊の将として人間の脅威であり続けている。
人にもヨトゥンにも支配されている状況に、スラハトの人々は希望を抱く事も出来なくなっていた。
捕われのヴァナディース姫を助ける為の部隊は何度も編成されているが今まで一度もコナハト城に届いた事はなく、希望を持つと余計に辛くなる事を知っているスラハトの人々は、今回の遠征軍にも期待していなかった……しかし、各地での戦いの噂や風のMyth Knightの活躍の噂で、スラハトの人々の心に潜かな希望が生まれ始めている。
レンヴァル村を一人で救った……そして、ヨトゥンの将スリヴァルディを圧倒した風のMyth Knightが来てくれれば、バロールは倒せなくても自分達は救ってくれるのではないかと……
いよいよ、スラハトの人々の願いが託されたコナハト攻城戦が開始されようとしていた……




