一真とアルパスター2
「お願いします。オレはバロールと戦うまで、どうすればいいでしょうか??一応、別の世界では医療を習っていたので、医療班に入れて頂ければカモフラージュにはなると思いますが………」
「それは構わんが………そこまで理解してくれているとはな………バロールの魔眼に耐えられる者は、神・凰の目・皇の目の使い手だけだ。一真が凰の目の使い手だと知られてしまえば、警戒されてバロールに近付く事も困難になってしまう。しかし、家族同然の者達が戦場に出れば、助けに行けない歯痒さに押し潰されるかもしれんぞ??」
一真の表情が一瞬暗くなるが、それでも頷く。
「分かっているつもりです。かつて、7国の騎士達との別れも経験してますから………」
「耐えれるかニャ~??バルデルスは子供のクセに、私達を助けようと無謀に戦いに飛び込んでいった事もあったからニャ~。7国の騎士がピンチになる戦闘で、子供に助けられる訳がニャいのにねー」
一真の懐から突然現れた蒼色の猫………のヌイグルミに、アルパスターは目を白黒させている。
「将軍、スイマセン!!ほらアクア、とりあえず挨拶して!!」
「彼は、ランティストの子孫ニャンでしょ??私、ランティスト好きじゃニャかったんだよねー」
アクアと呼ばれた猫のヌイグルミは、ランカストを一瞥すると、直ぐに目を逸らした。
「はぁ………アクアは、かつての7国の騎士であるミルティの魂の情報が入っているんです。なんだか、向こうの世界でヌイグルミのフリをするのにストレスを溜め込んで、性格がネジ曲がったと言うか………」
「ニャンだとーぉ!!必殺、ネコネコぱーんち!!」
パコパコ…………
ヌイグルミの手で、必死に必殺のパンチ………ネコネコぱーんち!!を一真の顔面に食らわせる。
「なんと………ミルティ殿の魂が………しかし、ミルティ殿は女神の如き優しさを持ち、おしとやかで、更に絶世の美女であったと言われていたが………いやいや、一真の言う通り、ストレスがそうさせているだけかも知れん………」
アルパスターは、信じられない表情でアクアを見ている………そのアルパスターを、アクアは睨みつけた。
「ほら!!奴の子孫なんて、所詮見た目でしか判断出来ない愚か者の集まりニャ!!」
「もー………確かにランティストは、ミルティの着替えやお風呂を覗いてたケド………子孫とは言え、将軍とは別人なんだから………」
一真の言葉に、アルパスターの目が今度は大きく見開かれる。
「な………なんと………それは………申し訳ない………まったく、何という事を………」
アルパスターの謝罪を受ける気の無いアクアは、一真の肩に乗って遊び始めた。
「それより将軍、さっきから義兄達の場所が鮮明に分かるようになってるんですが………これって??」
「ああ………エリサの伝心の魔法だな。7国の騎士の時代は無かった新しい魔法だ。魔法は進化しているからな………」
そう言うと、アルパスターの顔が真顔になる。
「凰の目は、使い過ぎると心を失うと言われている。たとえ不老不死だとしても、それは変わらないだろう。大丈夫なのか??」
「バルデルスが凰の目のコントロールの為に、どれだけの時間を割いたと思っているニャ??地獄のような特訓をしたバルデルスは、常に凰の目を使っている状態ニャのよ!!」
グラムを置いた時は真っ黒になった一真の瞳は、薄い赤茶のような色になっていた。
「全力で戦わなければ、心を失わずに凰の目を使えるように訓練はしてきました。まだまだ努力しなくてはいけませんが………」
「凄いな………我々も微力ながら全力でサポートする。宜しく頼む!!」
アルパスターの差し出した手に、一真も手を伸ばす。
固い握手をした後に、2人は別れた。
アルパスターは一真の背中を見送りながら、決意を固める。
一真を敵の目から完全に消すには、戦えない一真に代わって、その命を守る者が必要になるだろう。
(ネイア………もしかしたら、君に重大な負担をかけるかもしれないな………)
アルパスターは、心の中で恋人に謝罪した。




