表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
紅の剣士と恐怖の剣
14/221

紅の少年と恐怖の宿りし神剣

 エストは、しっかり言葉を聞けないぐらい心に余裕がなかった。


 しっかり聞いてれば「よくしてもらってた」の言葉に疑問を持てる筈だった。


 父親を目の前で殺されたエストの叫びは、村人の繋ぎ止めてた糸を切るのに充分だった……


 わぁぁぁぁあああ!!


 村人がガイエンの両親を取り囲むように人垣を作る。


「親父!!母さん!!」


 ガイエンが叫ぶが、村人に弾き出される。


「ガイエン!!お前は逃げろ!!」


 ゲインの声が聞こえた後、アリアの声が村人の雄叫びに混じって微かに聞こえてきた。


「ガイエン。教会に行きなさい。神父様なら貴方を守ってくれるわ!そして………」


 最後の声は、村人の声に掻き消されて聞こえなくなっていた。


「やめて……何なの??何が起きてるの??ゲインさんやアリアさんが何したの!!」


 ティアがエストに…村人に止めるように言うが、もはや止まらなかった。


 ティアの様子をチラっと見たガイエンだったが、意を決して教会に向かって走り出した。


 その時!!


「アリア!!」


 ゲインの大きな声の後に……


「ぐああぁぁぁ!!」


 ゲインの断末魔のような絶叫!!


 そして………


「きゃああああぁぁ!!」


 アリアの絶叫……


 背中から聞こえる両親の声に涙を堪える事も出来ず……だが振り向かず教会に走る!!


 ガイエンの心に、深い哀しみと怒りが込み上げていた。


 教会に着いて、ガイエンは涙を両手で拭った。


 そして教会を見ると……


「えっ……」


 教会は燃えており、その炎は終息に向かっていた。


 ガイエンは絶望に耐えられず、その場にうずくまり、大泣きした。


 突然の両親の死………


 そのきっかけを作った、幼なじみの大好きな女の子……


 ガイエンは、何がなんだか分からなくなっていた……


 どれぐらい泣いていただろう。


 ガイエンは、最後の一滴の涙を拭った。


 教会は完全に焼け落ちていた。


 灰が風でブワっと舞う。


 焦げた臭いが、ガイエンの鼻につく。


「教会………」


 ガイエンは虚ろな目で、まだ火が燻っている焼け落ちた教会の廃墟に入っていった。


 母、アリアの言葉がガイエンの背中を押すように……


 キラっ


 燻っている火より、さらに深い赤の光がガイエンの目に入る。


 操られるように、ガイエンは光に近く。


 そこには、深紅の剣が落ちていた。


 教会を焼き尽くす業火の中、輝きを失う事なく、傷一つ無い剣に、無意識にガイエンは手を伸ばす。


 持ち上げようとするが、子供の細腕ではうまく持ち上がらない。


「はぁ……」


 ガイエンは力を抜いて剣を手放そうとした時………体に力が漲り、剣が急に軽くなった。


「凄い………お前、オレの哀しみと怒りに答えてくれるのか??」


 その剣【ヘルギ】は答える変わりに、その赤き刀身を光らせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ