表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
血に染まる白冠
120/221

バロールとの戦い2

 

 バロール軍の中隊が航太の隊の目の前を通り始めた時、反対から土煙が上がり鬨の声が聞こえ始める。


「ゼーク隊の方角だよ!!始まったの??」


 絵美の声を聞くまでもなく、航太はゼークが戦闘を開始したと確信した。


「こっちも突っ込むぞ!!敵の腹に風穴を開けてやれ!!」


 航太がエアの剣を掲げ、大声で突撃の合図をする。


 ゼーク隊に気を取られていたバロールの部隊は、突然現れた伏兵…………航太の部隊に、一時混乱した。


 しかしバロール軍は一万を超える大軍であり、対する航太とゼークの隊は二千の兵である。


 側面から強襲された為、最初は混乱したバロール隊のヨトゥン兵だったが、数で勝るヨトゥン軍は徐々に落ち着きを取り戻していく。


「くそ!!ただでさえ強いヨトゥン兵に、数でも負けてるんじゃ話になんねぇぞ!!」


 航太は必死にエアの剣を振るが、混戦になっている為に鎌鼬は使えない。


 航太の部隊は、徐々にヨトゥン兵の波に飲まれていく。


 そんな中、絵美は天沼矛の尖端から出る水を刃に変えて、その広くなった攻撃範囲でヨトゥン兵を斬り倒す。


 智美は水の玉を作り、次々にヨトゥン兵の顔に張り付ける。


「んー…………」


 窒息状態になったヨトゥン兵達を、一般兵がいとも簡単に倒していく。


 更に智美の作り出す水の玉は航太の隊の兵に纏わり付き、ヨトゥン兵の剣撃を予測し受け止め弾き返し、傷つけば回復までする。


「航ちゃん、数が何だって??」


「私達がいる限り、誰も死なせない!!」


 絵美と智美、2人の活躍でヨトゥン兵の隊列が徐々に崩れていく。


(おいおい、やべぇ……………2人とも成長しまくってる…………)


 数で劣る人間の部隊が、数で勝るヨトゥン兵を押していく光景は、おそらく過去に無い。


 ヨトゥンの力は人間の数倍あり、それを考えれば、今起きている事は異常だ。


「やっぱり、Myth Knightの部隊を選んで正解だぜ!!これなら勝てる!!」


 士気が上がっている航太の部隊は、バロール隊の分断に成功する。


「こうなりゃ、オレも本領発揮だっ!!混戦になってなけりゃ、コイツで!!」


 分断したヨトゥンの部隊に向かって、航太は鎌鼬を放つ。


 その鎌鼬に触れてヨトゥン兵の身体が弾け飛び、隊列の乱れた所に航太の隊の兵が飛び込んでいく。


(これならいける!!中軍をさっさと片付けて、他のフォローに行けるぞ!!)


 航太が視線を上げた、その時……………


「ぐわぁぁぁ!!」


 航太の視線の先にいた数人の兵が、突然倒れた。


「えっ??何が起きたの??」


「多分、魔眼だっ!!みんな、智美の近くに集まれ!!」


 驚く智美の背中を叩き、航太は大声で自分の隊の全員を近くに呼び寄る。


 背中を叩かれた事で冷静さを取り戻した智美は、直ぐに航太の部隊が覆えるだけの水の防御球を作りあげた。


 その水の球の表面は波打っており、外から中の様子はよく見えない。


(これでバロールからは、俺達の事を認識されない筈だ。魔眼の効果さえ届かなければ、やれる!!)


 航太は、水の球の中からバロールを探す。


「航ちゃん、あれじゃない??」


 いち早く智美が、丘の上にいる黒い馬に乗った男を指差した。


 茶色をベースに金で縁取りされてる鎧は、大将らしい独特の雰囲気を醸し出している。


「間違いなさそうだな!!絵美!!」


「ほいきた♪♪」


 促された絵美は、航太の前に水の玉を作り出す。


「当たれっ!!」


 その水の玉を航太がエアの剣が作り出す風圧で、バロール目掛けて打ち出した。


 水の玉は水の壁を摺り抜けて、バロールに向かって弾丸のように飛んでいく。


「ふん!!」


 バロールがいとも簡単に、剣で水の玉を打ち落とした……………かに見えた。


 しかし剣に触れた途端、水の玉は弾け飛び、散弾の如くバロールに襲いかかる!!


「うおっ!!」


 バロールはガードするが、その重厚そうに見える鎧には無数の傷がつく。


(ダメージが小さくても、遠距離攻撃なら魔眼の被害は出なそうだ。それに、コッチにバロールの意識を向けさせとけば、ゼークが戦いやすくなる筈だ!!)


「航ちゃん!!バロールを釘付けにしちゃえ!!」


「おっしゃ!!次から次へと、打ち込んでやるぜ!!」


 魔眼を…………バロールの視線をコチラに向けさせておけば、他の隊に被害は出ない。


 航太は確信し、2射目を撃つ!!


 高速の水の玉が、再びバロールに襲いかかる…………かに見えた。


 水の玉がバロールを強襲する直前、バロールの目の前の地面が盾のように盛り上がる。


 盛り上がった地面に水の玉は次々に当たって、何も出来ないまま消滅していく。


「直ぐに対策を立ててくるのは、流石ね。魔眼には、まだまだ知らない力がありそう…………航ちゃん、どうする??」


 智美が考えながら、航太に聞いてくる。


「分かんね!!ケド、とりあえずバロールをあの場所に足止めしとけば、魔眼の脅威がなく他の隊が戦える!!それだけでも!!」


 航太は言いながら、3射目を放つ準備に入った。


 その間にバロールは盛り上げた地面を元に戻し、智美が作っている水球を魔眼で見る。


 その瞳が青白く輝いた瞬間、水球が凍り始めた。


「何これ??水が凍ってくよ!!」


 智美が凍っていく水球に、驚きの声を上げる。


「マズイ!!このままじゃ攻撃手段が無くなる!!」


 航太は慌てて水の玉を風圧で飛ばすが、既に氷と化した水球に阻まれる。


 もはや氷の球体に閉じ込められた航太達に、攻撃手段は無い。


 それどころか、球体内の温度が徐々に下がり始める。


「これ、まずくない??メチャ寒くなってきてるケド…………」


 絵美の口から、白い息がハッキリ見えた。


 兵達も凍え始めている。


「寒さもそうだけど…………酸素が無くなる気がするよ…………」


 智美の声は、寒さなのか恐怖なのかは分からないが、震えていた。


(正直、打開策が見当たらねぇ…………どうする??)


 氷の球を破壊しても、恐らく出た瞬間にバロールの魔眼が狙っているだろう。


 外に出るのは、自殺行為である。


 しかし氷の球の中にいれば、寒さと酸素不足でこちらも未来はないだろう。


(こんな事で、大切な兵の命を失う訳にはいかない!!だが、どうする??)


 航太は必死に考えるが、直ぐに答えは出ない。


 さらに氷の球体の中では、水の時より視界が悪くなり、外の状態が全く分からなかった。


(コッチの攻撃が止まったら、ゼークや他の皆が…………)


 航太の額からは、冷たい汗が流れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ