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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
血に染まる白冠
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副隊長任命

 アルパスター達が作戦会議を開いている時、ホワイト・ティアラ隊も医療用品の準備など、慌ただしくなっていた。


「おい、チビどけよ!!女どもに囲まれて仕事して、戦場に出ないなんて恥ずかしくないのかよ!!」


「英雄の兄貴とは、月と鼈だな!!傷の手当てとか、女の仕事だろ??男に治療されるなんて、気持ちわりーよ!!」


「まぢ女の仕事しか出来ないなんて、オレならプライドがズタズタだわ!!大将に頼み込んで、戦場で死ぬ事をオレなら選ぶね!!」


 そんな言葉を浴びせられながら、ティアの前を一真は歩く。


 包帯や殺菌処理をした器具を抱えきれない程持って、額に汗をかきながらも表情はいつもと変わらない。


「はぁ…………兵隊さん達は、いつもいつも何様のつもりかしら!!一真さんに命を救ってもらった人、沢山いる筈なのに!!」


 歩くスピードが速い一真を追いかけるように、小走りになりながらティアが頬を膨らませる。


 その姿を見て、一真は軽く微笑む。


「ありがとうティア。もう慣れたから大丈夫だよ。でも、女の人を下に見る言い方は納得できないケドね」


「一真さん、優しスギですよ!!少しは言い返したってイイんじゃないですか??もう、どんなに傷ついても助けてやらないぞーって」


 弱々しい一真の態度に、ティアが身振りを加えながら、少し苛々しながら言う。


 そんなティアの姿を見て、更に一真の笑顔が広がる。


「そんな事したら、ネイアさんに怒られる…………それに、オレは航兄とは違うしね。戦う力が無いなら、自分の出来る事で貢献するしかない。それより、記憶は戻ってきたの??」


 一真は真剣な表情になって、ティアの目を見る。


 ティアはガイエンに夫や子供を殺されたショックで、幼少時代の記憶が思い出せなくなっていた。


「断片的には、思い出せる部分もあるんですケド…………以前、航太さんにガイエンと私に関わる話を聞いて、言われてみれば覚えてる気がするんですけど…………ね」


「無理に思い出す必要はないよ!!ゆっくり、思い出してけばいいんだから…………」


 ティアの口調から苦悩が感じられ、一真は慌てて話を終わらす。


「そうね、焦っても仕方ないしね……………」


 一真の言葉に頷くと、ティアは医療用のテントに向けて走り出した。


「ちょっ…………待ってよ!!」


 一真もティアの後を追って、足早にテントに入る。


「ねぇ………機会があったら、ガイエンと話てみようかな………」


 ティアが呼吸を荒くしながら、テントに入ってきた一真に言う。


「機会があれば…………ね。ただ、現状でホワイト・ティアラ隊まで敵が……………ガイエンが攻めて来たら、かなりヤバイ状況だけど……………」


 一真の言葉に、ティアが「それもそうか」と舌を出す。


「2人とも、何してんの??忙しいんだから、こっち手伝って!!」


「スイマセン!!すぐ行きます!」


 ネイアの言葉に2人は顔を見合わせ、すぐにネイアの元に走った。


「一真、兵達の言葉に耳を借すんじゃないよ。皆が分かってくれる時が、必ず来る。それまでは辛いけど…………」


「ネイアさん、分かってます!!何を言われても、助けられる命は助けます!!」


 一真の力強い言葉に、ネイアは安心した顔で頷く。


「いい表情ね。今回の作戦から、一真にホワイト・ティアラ隊の副隊長を任命します。エリサと一緒に、私を支えてちょうだい」


「は?????」


 突然の事で、一真の頭は真っ白になる。


「一真さんの能力からして、当然ですよ。現場では、しっかり指示も出せてるし、いつまでも平って訳には…………ネイア隊長を、2人で支えていきますよっ!!おーっ」


 話に割って入って来た、同じく副隊長のエリサが、拳を天に突き上げた。


「お………………おー…………」


 その流れに沿って、一真は弱々しく拳を突き上げる。


「あんた達、何してるの??それより一真、副隊長になったお祝いで、このナイフをあげるわ。これで、自分の身は自分で守りなさい」


 サバイバル・ナイフのような形状のナイフを受け取った一真は、何か言おうとしたが、その言葉を飲み込む。


「そんなナイフより、一真さんの持ってる神剣、グラムを使った方がマシじゃないかなー??」


「あのねぇエリサ、一真はグラムに選ばれた訳じゃないから、誰でも持てるのよ。弱い一真が使って、敵に奪われたらどうするのよ………」


 ネイアの返しに、エリサは「なるほど」と手を叩く。


(なんだかなぁ…………そんな事より、いよいよバロールと直接対決か…………みんな、気をつけてよ………)


 一真は戦場に出れない自分に苛立ちながら、しかし祈る事ぐらいしか出来なかった…………

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