明かされる真実2
「そう………だが、現在のミステルテインの使い手の妹のフレイヤ………ヴァナディース姫はヨトゥンに捕われている。神剣がフレイヤを選んでしまった以上、オレにはミステルテインを持つ事が出来ない。ロキを倒すには、ミステルテインとフレイヤが絶対に必要なんだ」
ユングヴィ王子の話を立ったまま聞いていた航太が、姫救出の重要性を理解した。
「つまり…………この戦争の首謀者であり、危険人物のロキを倒すのに、姫の力は絶対に必要って事だ!!だから、ここまで力を入れてんだな。けど、他の兵はこの話を知らないのに、士気が高いのは何故だ??」
「航太はフレイヤ様を見た事が無かったな………男なら姫を助ける為なら命を投げ出すし、女性からも憧れの的だったんだ。神の世界でも1番の美女で、更に優しいときてる。ヨトゥンに捕われた時、様々な国が勝手に救出作戦を行って散々な目にあってるんだが、どの国もフレイヤ様に感謝されたいんだ」
アルパスターの言葉に、航太の目は輝く。
「ベルヘイム以外の国が、勝手に救出作戦って…………すげぇな…………」
「だろ??どの国も、フレイヤ様に自分の国にいて欲しいと願っている。それ程の美しさと優しさがあるんだ。今回の部隊も、ベルヘイムとアルスターの連合軍だが、フレイヤ様救出作戦だからこそ手を取り合っているようなモノだ」
アルパスターこ言葉を聞きながら、まだ見ぬフレイヤを想像して、航太の顔がニヤける。
「航太は、フレイヤの好みでは無いだろうな…………残念だが……………」
フレイの言葉に、航太が頭を抱える。
「けどよ…………ヨトゥンがフレイヤを生かしておく理由って、あんのか??だいたい、なんでヨトゥンはフレイヤを奪っていったんだ??」
開き直った航太が、フレイに問う。
「ロキはヨトゥンと神族のハーフ。ヨトゥン側も、ロキを完全に信用していないんだろうな…………そして、敵将のバロールは【魔眼】を使ってフレイヤとミステルテインの関係を知っている。ヨトゥン側としても、ロキを倒す手段を持っておきたいんだろう…………不死身な上に裏切るリスクのある味方への対抗手段は、持っときたいだろうからな…………」
フレイが、航太に答える。
「なる………つまり、ロキは味方にも信用されてねーって事か!!」
アルパスターは、腕組みしながら頷いた。
「航太、この話を知ってるのは我々だけだ。多くの人に知り渡る事になれば、情報漏洩や勝手な事をする者も増えるだろう。絶対に他言無用だぞ!!」
「わかった」
事の重大さを理解し、自分の責任の重さに、航太は身が締まる思いである。
「そーいや、そのバルドルは不死身の人間になってるんだろ??探さないのか??」
「ん…………まぁな…………一説では、バルドルを救った神と一緒に行動しているらしい……………って話もあるが…………分からんな」
歯切れの悪いアルパスターの言葉に航太は疑問に思ったが、今は知られてはいけない事でもあるのだろうと察し、深くは追求しなかった。
(に…………してもだ。ロキって奴は、なかなかのクズ野郎に聞こえたが…………そんな奴を、なんで智美は信頼してんだ??捕虜になっている間に、何かされたんじゃねーだろうな??)
考え込む航太にアルパスターは、その肩を叩く。
「そんな事より航太、我々はヨトゥン領内に深く入り込んでいる。そろそろ、ヨトゥン側の神級の敵と戦う事になるかもしれん。鍛練を怠るなよ!!」
ヨトゥン側の神級の敵…………そういえば、ランカスト将軍を倒したのも、ロキの側近であってロキではない。
ランカスト将軍を倒した敵より、更に強い敵が相手になる…………
そう思うと、航太は居ても立っても居れなくなり、足早にアルパスターのテントから外に出た。
そのまま、直ぐに剣の鍛練に精を出す航太の姿があったのは、言うまでもない…………




