巨人族の為に振るわれる人の剣
瞬間!!
火の玉がガイエンを強襲した!!
「くぅぅ!!」
ガイエンが【ヘルギ】で火の玉を切り裂く。
航太が火の玉の飛んできた方を見ると、エリサが松明を持って立っていた。
「航太様!大丈夫ですか??」
「エリサさん!!ありがとう!でも来ちゃ駄目だっ!!」
近寄ろうとするエリサを、航太が止めた。
不意の遠距離攻撃を受けた時のガイエンの表情を見て、遠距離攻撃が有効だと考えたのだ。
そして【ヘルギ】の相手を恐怖に陥れる特性は、剣を振ってる時や距離があると効果がないんじゃないか?と航太は仮説を立てていた。
エリサは遠距離から火の玉を、航太は鎌鼬を放ち、ガイエンは二方向からの攻撃に防戦一方になった……ように見える。
「航兄、ネイアさんと民家に入ってみる!まだ中の人生きてるかもしれないし……」
ガイエンの足止めに成功していると見るや、唐突に一真が航太に話かけた。
ネイアも既に準備万端で、一真の後ろでスタンバイしている。
(こんな時に他人の心配かよ……)
と思いつつ(一真らしいか……)と航太は感じた。
「わかった!!でも援護する余裕ねぇから、気をつけろよ!」
「うん!ネイアさん行きましょう!!」
航太の声に一真が答え、民家に進む。
民家に向かう一真の後ろ姿を見送りながら、航太は後方から聞こえてくる息遣いが荒くなっていくのを感じる。
「はぁっ……はぁっ………」
航太が後ろを振り返りエリサを見ると、肩で息をし始めていた。
魔法は、かなり体力を消耗するらしい。
(ガイエンが余裕持って防御してたのはこの為か……!)
火の玉の威力が弱くなった瞬間、ガイエンが火の玉を切り裂き、エリサに向かって突進する。
「ナメた真似しやがって……!」
ガイエンはエリサに切りかかる!!
「きゃあああ!!」
エリサが目をつぶる!!
ガキィィン!!
激しい金属音がする。
エリサが恐る恐る目を開けると、回復した智美が2本の剣を交差して【ヘルギ】の攻撃を受け止めていた。
「私の目の前で誰も殺させない!!絶対に!!」
智美が叫ぶ。
そして防御していた2本の剣で攻撃に転じる。
【天叢雲剣】はかわされたが【草薙剣】はガイエンの右上腕を切り裂く!
「ぐわっ!!」
ガイエンは後方に飛ぶ。
(どうやら智美の剣は、剣だろうが鎧だろうが貫通する特性か……)
航太は冷静に自分達の戦力を分析していた。
そうしなければ、ガイエンに勝てないと思ったのだ。
そんな事を考えてると絵美も震えから立ち直った。
「なんだったの今の!!もーイヤんなっちゃう!!」
絵美もガイエンに向けて【天沼矛】を構えた。
「絵美・智美!大丈夫か?剣先を見ないで戦えばさっきの症状にならないハズだ!!」
航太は自分の考えた仮説を絵美と智美に説明する。
「分かった。でも剣を見ないで戦えるの??」
智美が航太に聞く。
「恐らく一定時間剣先を見なければ大丈夫だ!現に剣を振り回してる時に効果は出ない!」
「そか、じゃあジッと剣を見なきゃイイんだね♪…………って、それも難しいじゃん!!」
航太の説明を聞いて、絵美が一人突っ込みをする。
確かに、剣を構えたりすれば、剣に目がいってしまうのは人間の心理だ。
さらにガイエンの剣技は、航太達のはるか上をいく。
よそ見しながら戦える相手ではない。
(結局うつ手なしかよ……)
航太達はジリジリと後退せざるをえない。
「来ないならこちらから行くぞ!!」
先程傷つけられた智美に向かって・ガイエンが剣を振る!
智美が【天叢雲剣】で防ぎながら、ガイエンに語りかけた。
「あなたは人なのに…なんで、ヨトゥンに協力してるの!!」
「人なら必ず人と共に戦わなきゃいけないのか?ふざけるな!!」
ガイエンは智美の腹に蹴りをいれる。
「ぐはっ!!」
智美はその場でうずくまる。
「智ちゃん!!危ない」
絵美が【天沼矛】をしならせながら振る!
すると矛先から鋭い水の刃が発生し、ガイエンを襲う!
「ぬをっ!!」
ガイエンの深紅の鎧を簡単に切り裂き、脇腹から鮮血が吹き飛ぶ。
「おまえら……許さんぞ!!」
ガイエンは怒りの表情をすると【ヘルギ】が赤く不気味に光る。
「きゃああああっ!」
急に智美が叫び、再び体に震えが走る。
(これが真の特性か……有効範囲内で赤い光りを見るだけで、恐怖に支配されちまう!!)
航太が鎌鼬を発生させ、ガイエンの目を智美から外させながら後退する。
絵美も気付いたのか、航太同様ガイエンと距離をとる。
「航ちゃん、どうする?大分ヤバイよ!怒らせたのは私のせいだけど……」
航太は少し考えた後、ガイエンに向けて語りかける。
「お前はなんで人間と共に戦おとしないんだ!人間側はヨトゥンに一方的に攻め込まれてんだろ!」
ガイエンは、オレンジから赤に変わっていくオゼス村の上空を眺めた後、航太を睨んだ。
「いいだろう、教えてやる!!」
ガイエンは語り始めた……




