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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
ロンスヴォの戦い
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ソフィーアの形見2

「これは……………ソフィーア様から預かってた……………」


 そう…………ソフィーアがユトムンダスの凶剣に倒れた時、テューネに渡された箱…………


 ソフィーアの父であるガヌロンが、正しい道を歩き始めたら渡して欲しいと言われて預かった大切な物…………


 その箱が、地面に落ちた拍子に開いた。


 その箱の中から、柔らかな光に包まれた毛髪が現れる。


 柔らかな光…………黄金色の様に輝きながら、その毛髪が人の形に変化していく。


「ソフィーア……………さま……………??」


「そんな…………ソフィー……………なのか??」


 黄金色のオーラのようなモノに包まれながらも分かる、綺麗な黒髪と愛らしい顔立ち…………


 若い頃の……………死んだ時のソフィーアのまま、そこに立っている。


 ソフィーアは、まずテューネの方に身体を向けると、その頬を優しく撫でた。


「テューネ…………今まで、私の渡した箱を大切に持っていてくれて、ありがとう。ランカストを最後まで守ろうとしてくれて…………ランカストの無念を晴らそうとしてくれて、ありがとう…………」


 黄金色の光はテューネも包み込み、恨みに満ちた青い瞳は元の黒い色に戻っていく。


「自分の身体を犠牲にしてまで…………ありがとうね…………テューネ…………」


 優しいソフィーアの言葉に、テューネの瞳から涙の雫が零れ落ちる。


「私…………私…………ランカスト様を守れなかった…………ソフィーア様から…………助けてあげてって…………お願いされていたのに…………ごめんなさい…………ごめんなさい…………」


「テューネは頑張ってくれた。ランカストだって分かってるよ……………それに、私も…………ありがとうテューネ。あんなに小さかったのに、私との約束を忘れずに守ってくれた…………大好きだよ、テューネ」


 ソフィーアの胸に顔を埋めて泣きじゃくるテューネの髪を優しく撫でて、そして強く抱きしめた。


「でも…………でも…………ガヌロン様が正しい道を歩めたら渡してって言われてた箱も落としちゃって……………」


「そうだね…………でも、今…………箱が開いて良かった。間違っているお父さんを、正しい道に戻せるかもしれない…………」


 ソフィーアはそう言うと、縛られているガヌロンの方へ歩いて近付く。


「ソフィー…………本当にソフィーなのか…………私は、ソフィーの言う通り、ランカストへの恨みを…………お前の復讐を…………」


「お父さん…………一体、誰にたぶらかされたの??本当に、私がランカストを恨んでると思ったの??あの時…………ユトムンダスと戦っていた時、本当の騎士はランカストだけだった…………そんな本物の騎士と戦えた…………同じ時を過ごせた…………それが私の誇り…………何で恨まなければいけないの…………」


 ソフィーアの悲し気な表情に、ガヌロンは慌てた。


「いや…………ソフィー…………お前は私の夢に出て来て、何度も私を助けてくれて…………そして、最後にはランカストへの恨みを言っていたではないか…………」 


 天才軍師ガヌロン……………その名は、夢に出て来るソフィーアの助言通りに軍を動かした結果、ついて来た称号である。


 その夢に出て来たソフィーアが、実はロキが変わり身した姿だとは、ガヌロンは思ってもいない。


 ロキの変わり身は、本人と同じになれる…………ガヌロンが気付かなくても仕方のない事だった。


 ガヌロンの心の隙間に、ロキは巧みに入り込んだ…………そして、ベルヘイムの情報を盗み、ガヌロンを利用して自分達が有利になるように動かしていたのである。


 ロキの企み…………それは、ノア家に伝わる皇の目の覚醒。


 魔眼のバロールに対抗出来る2つの力…………凰の目と皇の目…………


 7国の騎士であり凰の目唯一の発動者であるアスナの失踪で、バロールの脅威は皇の目に絞られた。


 そして、ヨトゥン軍によるノア家狩りが始まる。


 ノア家を………皇の目を残したい人間がとった行動…………それは、アデストリアの乱という、人間がヨトゥンに寝返った反乱にノア家の人間を紛れ込ませようというモノだった。


 テューネの父親は、アデストリアの乱で人間側に付き、そして死んで行った…………


 アデストリアの乱の初期にヨトゥン領に逃れたテューネの母は、ヨトゥン領とベルヘイム領の国境付近の村、レンヴァル村にテューネを置いて行く。


 そして、その子供…………テューネを見つけ、共に暮らし始めたのがソフィーアで、一緒に遊んでくれてたのがランカストだった。


 アデストリアの乱でテューネの父が死んだ事で、ノア家に伝わる皇の目は途絶えた…………ヨトゥン軍は…………バロールやクロウ・クルワッハは、そう思ってる。


 真実を知る者はロキだけであり、ロキはデュランダルを皇の目の継承者であるテューネの元に繋がるように………そして、自分の望むタイミングで皇の目が発動するように、仕掛けていた。


 そう…………全ての事は、ロキの手の上で起きていたに過ぎない。


 親しい者の死…………ショックを与えるには充分であり、1度目で種を蒔き、2回目で発動させる…………ロキの予定通りだった。


 しかし、今…………一体何が起きているのか…………??


 死んだ筈のガヌロンの娘ソフィーアが復活して、全てを台なしにしようとしている。


「ロキ様…………」


「ビューレイスト…………分かっている。聖ドニの毛髪…………魂の情報を保存出来るアイテムだ…………ユトムンダスに殺される前に、仕込んでおいたんだな…………父親より、遥かに出来る娘だ…………」


 ロキは唇を噛むが、それも一瞬であった。  


「ビューレイスト…………ガヌロンを斬れ………」


「はっ!!」


 恐らく大丈夫だと思うが…………ガヌロンの持っている情報は厄介だ。


 ロキには、ヨトゥン軍にいなくてはいけない理由がある。


 ビューレイストが動きだそうとした瞬間…………


 ガキキキィィィン!!


 横から刃が飛び出し、ビューレイストは間一髪で受け止める。


「何を2人でコソコソしてるんだ??親子再開の邪魔はさせない!!」


 再びオルフェが、ビューレイストの前に立ち塞がる。


「邪魔だな………オルフェ、貴様も消してやるぞ」


 オルフェを睨むビューレイストの眼光が、鋭く光った…………


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