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雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
ロンスヴォの戦い
102/221

ソフィーアの形見

 

「なっ…………ロキだと??敵の総大将が、前線に出て来るとは…………ランカストを殺した事で、もはや自分達の勝利は確定していると踏んだか…………だが、私は最後まで抵抗してみせる」


 先程、ロキはテューネの不意打ちによって傷つけられた為、直ぐに前線に出て来ることは疑問だった。


 しかし、ビューレイストとフェルグスという優将の後方にいれば、自らが傷つけられる事はないと考えているかもしれない。


 どうであれ、オルフェにとってやる事は一つ。


 ランカストが死んでしまった今、皇の目を発動したテューネやゼーク、それに残っているベルヘイム兵達を1人でも多く助けるだけだ。


 ロキを睨むオルフェの視線は、自らの命を引き換えにしても、仲間の為に出来る事をやり遂げる……………そんな覚悟が感じられる。


 そんなオルフェの視線を、ロキは戦意のない視線で送り返す。


「オルフェ殿、もう我々が戦う理由が無くなった。剣を下ろしてくれ」


 ロキの言葉に、オルフェとビューレイストが、揃って怪訝そうな表情を浮かべる。


「ロキ様……………どうしたのですか??このまま戦えば、ベルヘイム12騎士のオルフェ、更には皇の目の娘も討てるんですよ??」


「そうだな…………だが、今回の戦いは、ガヌロンに謀られていた事が分かった。大義名分の無い戦いは、するものではない」


 そう言うロキの左腕には、先程テューネに付けられた傷が、まだ残っていた。


「ロキ様の身体に傷を付けただけでも、奴らを狩るのに充分な大義名分だと思いますが…………」


 下ろしたダーインスレイヴを再び構えようとするビューレイストを見て、オルフェもオートクレールを構える。


「ビューレイスト…………私が傷を負ったのは、ガヌロンの策略の為だ。彼らに否はない」


 そう言ってロキがビューレイストにダーインスレイヴを下げさせた瞬間、青き閃光がロキを襲う。


 ガキキキキィィィン!!


 ロキを見たテューネが感情を爆発させて、デュランダルを叩きつけたのだ。


 テューネの動きは、正に閃光だった。


 オルフェもゼークも目で追えない程の速さだったが、そんな一撃を持っていた普通の剣で……………それも片手で、ロキは軽々と受け止める。


「おい、貴様!!ロキ様の話を聞いていたのか??ガヌロンの策略が全ての元凶だ。それでもロキ様に刃を向けるのならば…………」


 テューネに向けてダーインスレイヴの刃を向けるビューレイストを、ロキは目配せで制した。


 そして、その視線をフェルグスが捕らえているガヌロンに向ける。


「ガヌロン……………事の顛末を話してもらうぞ!!」


 ビューレイストに対しても、敵意剥き出しのオルフェに対しても落ち着いた態度を見せていたロキが、声を荒げた。


「くそっ!!裏切ったな!!私はランカストさえ討てれば良かったが、それにしても、この仕打ちはなんだ??」


 縄に捕われたガヌロンは、身動きの出来ないまま声を張り上げる。


「やはり…………ガヌロンと手を組んでいたかっ!!」


 オルフェとテューネは、同時にロキに襲い掛かるかかろうとした。


 しかし、オルフェのオートクレールはビューレイストのダーインスレイヴに、テューネのデュランダルはフェルグスのカラドボルグに、それぞれ防がれる。


「2人とも落ち着いてくれ。もし我々がガヌロンと手を組んでいたとして…………そのメリットは何だ??確かにランカスト殿とデュランダルには、力を借りようと思ってはいたが…………」


「そんなの……………何とでも言える!!ランカスト様を殺す為に、私を利用したのね!!許さない!!」 


 デュランダルの刃はフェルグスを無視して、ガヌロンとロキに向けられた。


 が……………皇の目を覚醒し、デュランダルに認められたとは言え、まだ使いこなせないテューネが、フェルグスのカラドボルグを押し返せる訳も無い。


「落ち着いて話を聞いてくれ。私はベルヘイム12騎士のランカスト殿とデュランダルの力で、レンヴァル村に眠る【ある物】を掘り当てて欲しかったんだ。デュランダルの力を使いこなす者は、大地を穿つ…………レンヴァル村の大地は特殊でね…………デュランダルの力でなければ、大地を掘れないんだ…………」


「つまり、ランカストとデュランダルのセットでなければ、大地を掘り起こせなかったって事か??だから、ランカストを殺すメリットは無いと??レンヴァル村には、何が眠っているんだ??」


 ロキはオルフェの言葉に頷くと、ランカストの亡き骸に目を向ける。


「何があるかまでは話せない…………申し訳ないが…………とにかく、ガヌロンが青き髪の娘にだけ、私がユトムンダスに見えるように魔法を使った。そして、我々は戦闘状態に突入してしまった…………」


「ガヌロンが使った策は分かった。だが、ならばランカストを殺さなくても良かった筈だ!!殺してしまっては、協力も出来ない!!その何かは掘り出せないままになってしまうではないか!!」


 オルフェの疑問にロキは頷くと、ビューレイストを見た。


「実際のところ、デュランダルで無ければ大地を割れない…………後は持ち主の力となるが…………ランカスト殿は、我々の思っている程の力は無かった」


「大地を割れるかどうかは、実際に見てみないと分からない。だから、ランカスト殿に試してもらいたかったんだ。ビューレイストは、ランカスト殿にはその力が無いと判断した訳だが…………」


 その話に、怒りが収まらないのがテューネだ。


 力が無いから殺した??


 そんな事でランカスト様は、あんな無惨な殺され方を…………


 デュランダルを持つ手に、自然と力が入る。


「だから、ロキは始めからランカストを殺すつもりで私を利用しようとしたんだ!!私の方が被害者だ!!娘を殺した奴に復讐させてやると………甘い言葉をかけてきたんだからな!!」


 ガヌロンの言葉に、テューネの怒りはピークに達していた。


 皇の目の代償??


 そんなモノ、知った事ではない。


 皆でランカスト様を利用して…………復讐して…………罪をなすりつけて…………


 その瞳が、深い蒼へと…………少しづつ変化していく。  


 その時、テューネの懐から、大事にしていた箱が転げ落ちた。


 ソフィーアが死ぬ間際、テューネに渡した箱…………


 落ちた拍子に、その箱が少し開く。


 その箱からは、柔らかな光が溢れてくる…………テューネには、そう感じられていた。


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