表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
ロンスヴォの戦い
101/221

皇の目

「テューネ…………お前の怒りは分かる。だが、その瞳…………皇の目を発動している間は戦わせる訳にはいかない!!」


 叫びながら、オルフェはビューレイストに斬りかかる。


 その一撃を軽々と避けた…………と思った矢先、オルフェの握るオートクレールはビューレイストの喉元に迫って来た。  


「オートクレールの自動追尾か??だが威力が無ければ、どうと言う事もない」


 余裕の表情を浮かべ、ダーインスレイヴで受けたビューレイストは、その衝撃に顔色が変わった。


「なんと……………押し込まれる!!」


 細身のダーインスレイヴでランカストの振る大剣、デュランダルを楽々と受け止めていたビューレイスト。


 そのビューレイストが、ダーインスレイヴと同じ太さのバスタード・ソード、オートクレールに押し負けている。


 ビューレイストの喉元に襲いかかるダーインスレイヴとオートクレールを、身体を仰け反るようにして、辛うじて躱す。


 しかし、その身体を追尾するようにオートクレールが迫る!!


「うおぉぉぉっ!!」


 常に冷静なビューレイストには珍しく、声を上げながらオートクレールの剣の腹にダーインスレイヴを叩き込み、軌道の逸れた瞬間に間合いの外まで後退した。


「油断したな………オートクレール、問答無用で狙った場所に自動追尾してくる。一騎打ちで、これ程厄介な能力はないな……………だが、その能力の得意な戦いに乗ってやる必要もない」


 ビューレイストが合図をすると、周りにいたヨトゥン兵達が集まって来る。


「また、ヨトゥン兵の圧力が強くなった!!ランカスト将軍を助けて、直ぐに囲みを突破する予定だったのに…………」


 ゼークは、言いようのない違和感を覚えていた。


 まるでテューネにデュランダルを持たせ、皇の目を発動させる為に謀られたかのよう…………


 いや…………圧倒的な兵力差があるのに、敵の将がいる場所まで突破して来れるなんて、異常だ…………


「オルフェさんっ!!」


「分かってる!!コイツら…………ランカストを利用して、テューネの皇の目を発動させて…………何かを企んでる!!」


 オートクレールを握り直したオルフェは、ビューレイストを睨む。


 そんなオルフェに、横並びで3人のヨトゥン兵が襲い掛かってくる。


「ランカストとテューネに対しての仕打ち…………許せん!!ここで朽ちても、貴様の首級だけは取ってみせる!!」


 オートクレールの一撃…………線を描くような一撃が、横並びに迫って来たヨトゥン兵を3人共に真っ二つに斬り裂いた。


「なる程…………オートクレール、攻撃場所はピンポイントにしなくても、範囲指定出来るという事か…………なかなか厄介だな…………」


 オルフェの攻撃を見ていたビューレイストは、オートクレールの分析を頭の中で無意識にしている。


 その視界に、突然デュランダルが入ってきた。


 考え事をしていたビューレイストは、脱兎の如く迫ったテューネの魂の一撃をダーインスレイヴで受ける。


「ぬをっ!!」


 ランカストの時よりも、明らかに強い衝撃がビューレイストの腕を駆け巡った。


「だが、皇の目とデュランダルが揃っても、まだ受け止める事が出来る。もう一息か??」


 更に迫るオートクレールの一撃を、ビューレイストはダーインスレイヴで捌きながら後ろに下がる。


「テューネ!!その瞳のまま戦うな!!皇の目…………邪龍ファブニールの血を飲んでも死なない程の治癒力があるノア家の人間のみが扱える力…………だが、その代償は…………」


 オルフェは、そこで言葉を飲んだ。


 それ以上、喋っていいのか…………


 邪龍ファブニールの生き血は、その力に堪えれれば尋常じゃない力を得られるが、殆どの人間は1滴飲んだだけでも身体が燃えて死に至ると言われている。


 過去に1人だけ……………7国の騎士のミルティ・ノアだけが、ノア家の異常なまでの自己治癒の能力と、トライデントに宿る水の回復と精神に力を与える能力で、その生き血を体内に宿す事に成功した。


 その後ミルティの子孫達は、遺伝によりファブニールの力を宿して生まれてくるようになる。


 その力を恐れたヨトゥンは、その力を発動される前に暗殺や策略を駆使して殺してきた。


 そんな中で、何故かテューネは、その力を発動するまでに至る。


 ファブニールの血を浴びて生き残った人間が発動する赤き瞳、凰の目。


 ファブニールの血を飲んで生き残った人間が発動する青き瞳、皇の目。


 前者は心を、後者は身体機能を、その力を使う事で消耗していく。


 とてつもない力と引き換えに…………


「とにかくテューネ、その力は使うな!!ソフィーアとランカストに繋げてもらった命…………こんな場所で散らす為に、2人は命を落としたんじゃない筈だ。ソフィーアとランカストの想いを繋げる為にも、デュランダルを持ってテューネは逃げろ!!この男は…………オレが命懸けでも、あの世でランカストに詫びを入れさせる!!」


 オートクレールを構えて、ビューレイストを睨むオルフェ。


「オルフェ殿、そこまでだ。ビューレイストも剣を下げろ」


 ヨトゥン兵の囲みの1カ所が開き、フェルグスが姿を現す。


 その後方には、ロキと智美の姿があった……………


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ