表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雫物語~Myth of The Wind~  作者: クロプリ
紅の剣士と恐怖の剣
10/221

恐怖の剣【ヘルギ】

「これ……やったのお前か……」


 航太は切り刻まれて倒れてる人を見て言う。


「そうだ、今中でも赤ん坊と女が同じ状態で倒れてるぜ!」


 悪ぶれる様子もなく、話を進める。


「赤ん坊??そんな幼い命も奪うなんて……!!」


 智美が叫んだ!!


 深紅の鎧に身を包んだその男は、航太達の方に歩いてきた。


「お前……何者だっ!!」


 航太は鞘から【エアの剣】を抜き、構える。


 それに呼応し、智美は右手に【草薙剣】左手に【天叢雲剣】。


 絵美は【天沼矛】をそれぞれ構える。


 深紅の男は不適な笑みを浮かべながら、血のように赤い剣を鞘より抜く。


 まるで蛇が刀身に巻き付けられているような、不気味な剣である。


「我が【ヘルギ】に血を吸わせてくれるのか??」


 深紅の剣【ヘルギ】を構えながら、男が言う。


「うぇぇぇ!きっも~~い。わたしが一番嫌いなタイプだわ!!」


 絵美が「うぇっ」と何かを吐き出すポーズをする。


「航太!!こんなヤツ秒殺するでしゅ~~」


 ガーゴが「戦う」ポーズをしながら、興奮気味に言う。


「しゃあ!!いくぜ!!」


 航太は【エアの剣】を水平に振った!


 すると鎌鼬が発生し、深紅の男を強襲する!!


 しかし、その鎌鼬をヒラリと簡単にかわすと、一瞬で航太との距離を詰め【ヘルギ】で切りかかる!!


 航太は辛うじてその一撃を【エアの剣】で受け、後退する。


 両手が、もの凄い痺れている。


(一撃でこれかよ!!)


 航太は始めて恐怖を覚えた。


 だが、そんな恐怖の中でも1つの事に気づく。


「あんた…ヨトゥンの兵隊なのか?見たところ、人間のように見えるが…」


 航太は先程聞いたヨトゥンの特徴と、目の前にいる男が一致してないように見えた。


「ほう、オレの事を知らんか…なら教えといてやろう。我が名は【ガイエン・ドーマ】今から貴様らを殺す、クロウ・クルワッハ隊の先鋒の将だ!!」


 深紅の男……ガイエンは、ヨトゥン兵が放ったであろう火で燃え上がり、オレンジの空になっているオゼス村の方を一瞥し、不気味に笑う。


「もはや村の人間は皆殺しにしたのに、ご苦労なこったな!!」


 そう言うガイエン顔は、人間の全てを恨んでいる表情に見える。


 人かヨトゥンか…その問いに返答は無かったが、その表情から航太は直感的にガイエンは人だろうと感じていた。


 人同士で殺し合う事…そんな状況になるとは考えておらず、航太の手は震えだす。


「あなた……人の命を何だと思ってるの……小さな子供まで手にかけて……許せない!!」


 しかし、智美の心の中は怒りが支配していたのであろう。


 ガイエンが人かどうかなどお構いなしに、大声をあげて両手の剣を勢いよく振り回す!


 演舞をやってただけあり、美しい舞のように、しかし変則的にガイエンを狙う!!


 ヨトゥン兵と戦った時のような、手心は感じない。


 今まで感じた事のない程の怒りが智美を支配していた………はずだった。


「はっ……………いや……」


 しかし、怒りに満ちた智美の動きが急に止まり、腰が砕けたように尻もちをつく。


 その体は、まるで悪寒がきたかのように小刻みに震えている。


 視線の先には、剣先を智美に向けたガイエンが立っていた。


「智美!動きを止めるな!やられるぞ!!」


 航太はガイエンに向かって鎌鼬を放ち、隙をついて智美に近づく。


「大丈夫か??」


 航太が智美の肩に触ると、尋常じゃない程にガクガクと震えている。


(すげー怯えてやがる!一体何があった??)


 航太は智美からガイエンの方へ視線をズラすと、余裕で鎌鼬をかわして剣を振り上げていた。


「ちっ」


 航太は振り下ろされる【ヘルギ】に辛うじて反応し、智美を庇いながら間一髪【エアの剣】で受ける。


「つっ!!」


 再び、両手に痺れが走る。


 体勢を崩し「ヤバイ!」と航太が思った瞬間、横から絵美が【天沼矛】をガイエンに向けて突く!


 航太から見ると閃光にしか見えない突きも、ガイエンに簡単に弾かれる。


 しかし、絵美は弾かれる力を利用して一回転!!


 今度は矛をしならせて、薙ぎ払う!!


 しかしガイエンは、この攻撃も予測していたかのように後方に飛んで簡単にかわす。


「ふん」


 ガイエンは鼻で笑うと【ヘルギ】を絵美に向けて構えた。


「ひゃあ!!」


 絵美は、腰を抜かしたかのように突然転んだ。


 そして、智美同様に体を震わせている。


(どうなってるんだ??)


 しかし、考えをまとめる間もなくガイエンが迫る。


「ふん、Myth Knightだったら楽しめる思ったが、ただの雑魚か!つまらんな」


 ガイエンは【ヘルギ】の剣先を航太に向けながら、薄ら笑いを浮かべた。


(せっかく【エアの剣】の特性が分かってきたのに!何か出来ないのか?)


 航太は考えを巡らせるが、ガイエンが近くにつれ、ジリジリ後退するしか考えつかない。


 智美・絵美の援護を期待しようにも、2人とも怯えており、戦闘どころではなさそうだ。


(くそー!まさか、あの紅い剣は神器なのか? Myth Knight って味方だけじゃねーのかよっ!!)


 航太は、自分の心臓の音を近くで聞いてる感じがした。


 死ぬという感覚や、この世界にやってきた後悔……


 色々な事が、頭の中を交差する。


「うわぁぁぁ!!」


 頭の中がゴチャゴチャになって、ヤケになってガイエンに斬りかかろうとした瞬間……


 バシュ!!


 後方で炸裂音のような音が聞こえた………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ