6月4日 土曜日(3)
下宿に帰って洗濯機を回したはいいが、日が暮れると雨が降るという予報を聞いたような気がしたので、洗濯物は浴室に干した。今夜は例の合コンが開催されるし、彼女はサークルでライブがあるというから、魚には行くあてがない。福岡にいたならミルまで泳いでいけるのに。
どうやって陸に出ようかと考えていると、ピンポーンと呼び鈴が鳴った。実家から荷物が来るとも聞いていないので、宗教の勧誘だろうと思って玄関ドアの魚眼レンズを覗き込むと、服を着た骸骨がギターを背負って立っていた。価値観の多様化した現代だから、骸骨も社会の輪に入れるのだろうか。
「今日は居たな。降ってきたから寄ってみた」
骸骨が喋った。
「ああ、、傘ならないわ。たぶん大学に置いてきた」
「マジ??、、、じゃあラーメンでも食わん?」
ラーメンを食べるにしても傘は必要だが、南はもともと傘を借りに来たわけではないらしい。ポケットのスマホの画面を見ると、18時を過ぎている。通りには霧のような雨が降っていた。
「食う」
骸骨改め南のギターを部屋において、ラーメン屋に向かう。近いのは「まほろば亭」か「ごん太」なのだが、高架下を歩いていける分「まほろば亭」の方が都合がいい。南にそう伝えると、じゃあそこで、と言った。
座敷の卓が一つだけ空いていたので二人で座り、注文した。
「そろそろ合コンの時間やな」
「ん?ああ、あいつらか」
「南はよかったん?」
「合コンがどういうもんかわからんけど、なんか、今はいいかな」
「そうやな」
「彼女、どんな子なん?」
「ゲーマー」
「マジ?」
「マジよ」
「連れてきてみんなでゲームしよう」
「嫌だわ」
「俺も嫌」
「あとUFOよく食ってるよ」
「それ廃人やん」
「人なだけマシやろ」
「理想が低い」
「良い傾向やろ」
「、、、まあいいや食おう」
「頂きます」
運ばれてきたラーメンを、ありがたくいただいた。




