6月12日 日曜日(2)
朝と昼の間のような時間になって、彼女はのそのそと起きだした。
「はい今日は、、、君にプレゼントが、ありまあああす」
最後にあくびが混ざった。彼女はベッドの下から箱を取り出して、開けて見せた。見覚えのある形の、赤いランニングシューズが入っていた。新品のシューズ独特のにおいが、すごく懐かしかった。
「それ、高校のとき履いてたやつやろ?」
確かにそれは、僕が高校時代に使っていたシューズだった。足によくなじんだから、同じモデルを3足は履きつぶしたと思う。廃版になったのは確か2年前で、人気モデルだったこともあって、どこのスポーツ店からもすぐに在庫がなくなってしまった。その後は仕方なく別のモデルを使っていた。もっとも、最近は走ってさえいないけれど。
「どこで見つけたん?」
「ヤフオク」
「てか、何で知ってるん?ウェーブウィング履いてたの」
「あんだけ毎日真っ赤な靴履いて走り回ってりゃ、嫌でも覚えますがね。あとマジックテープだし」
「高かったろ?もらっていいん?」
「君は走ってないとダメな人でしょう?ゲームもしないし」
「そうかもしれない」
「私のところにも、もう毎日来なくていいよ」
「とか言って、終電間際になったら電話してくるくせに」
「は?私はもっと余裕を持って電話しますから」
「だめだろ」
彼女は焼いたパンにジャムを塗って、少しずつ口に入れている。
「じゃあ、こうしよう」
僕はその案を、彼女に話した。




