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イナイチ  作者: タイヨウノトウ
11/12

6月12日 日曜日

 彼女の下宿で目が覚めた僕は、テレビをつけた。彼女を起こさぬように音量を絞った。画面の左上には6:21と表示してある。一文の得にもならない早起きをしてしまった。ローカルな情報番組が、先週、阪急神戸線で起こった事故について伝えていた。踏切で無理な横断をしようとした歩行者がいたため、電車は急ブレーキをかけた。運転士の話では、踏切内に進入してきた少女を発見したときはとても停止できる速度と距離ではなかったため、衝突は免れないと思ったらしい。瞬間、目をそむけて身構えたが、何かにぶつかったような衝撃や音は感じられなかった。電車が停止した後に線路に出て確認したが、車体には傷一つなく、少女の姿も見当たらなかった。一方で、急ブレーキの際に転んでケガをした乗客がいたため、その場で救急車が駆けつけた。一連の騒動が収まって再び電車が動くまでの約40分、この電車の後方を走っていた僕の電車も停止していた。奇妙なのは、このとき複数の乗客が、北の空に浮かぶ大きな「未確認飛行物体」を目撃していたということだ。テレビでインタビューを受けている乗客は、ある人はUFOだと言い、ある人は巨大な芋虫だといい、ある人は新型の戦闘機ではないかと言った。しかし、最も多かったのは、電車が空を走っているようだったという意見だった。僕は、その「未確認飛行物体」の窓からこちらを見下ろしている彼女の姿を、はっきりと見た。線路内にいきなり現れて消えた少女と未確認飛行物体。メディアはこぞって無責任なことを言っていた。

  

  



   

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