ー7日目、それは選択の時間ー
ー7日目ー
最終日。
どうやら最後の7日目は夜までではなく昼の12時までらしい。
そして、今は11時30分を過ぎている。
レジ前には3人が集っている。
ちなみに、昨日と続いて小宮と久我は会話をしていない。
「神木さん、僕と“貿易”をしましょう」
小宮が神木に提案をする。
久我の方は板戸も見ずに。
普通に考えたら神木はこの提案に乗る。しかし、神木は断る。
「無理だ」
と、一蹴する。
「っ⁉︎どうしてですか?」
「お前には騙されたからな」
4日目のことだろう。
小宮に唆された事により、結果的には生きているが死んでいたかもしれない。
それに対しての抵抗だろう。
「でも、僕としないと誰とも、、、、」
「いや、出来るぞ」
「え?」
そう言って神木は小宮の後ろ、即ち久我の方を向く。
「久我、俺と“貿易”しよう」
神木と久我の“貿易”は初日にも行われかけていた。しかし、アルファの『年齢確認』という言葉により神木は諦めた。
神木の持ち物はタバコ。未成年には売れない。
そう、未成年だけには。
「な、何を言ってるんですか⁉︎久我さんはどう見ても高校生ぐらいじゃないですか?そんな彼と“貿易”出来るわけが、、、、」
「出来るよ」
初日から持っていた財布を取り出しカードを出す。
学生証。高校のものではなく、大学の学生証を取り出す。
「へ?」
そこには久我の写真、そして名前、生年月日。それらが書かれている。
それによると、、、、
「、、、、、にじゅう、、、いっさい?」
「そうだよ!」
21歳。成年済み。
見た目でよく間違えられるが、高校生ではなかった。
「騙したんですか⁉︎」
「ううん、騙してないよ。だって俺は一言も未成年だとは言ってないから。勝手に勘違いしたんじゃないかな?」
初日から“貿易”は可能だった。だが、2人が勘違いしているらしいので、あえて黙っていた。
「あらら?勝手に勘違いして自分は大丈夫だと思っていたのかな?残念でした!」
小宮に詰め寄る。
「ふ、、、ふざけるな!!」
それを遮るかのように小宮は久我を押し返す。
普段の性格からでは彼はそのようなことはしなかった。
しかし、2日間の久我のストーカー行為、会話をしない無視行為、そして小宮を嘲笑うかのような言動。
そのことが溜まり溜まって勢いがついた。
久我は耐えきれず後ろにあった棚に倒れこむ。
「ふざけるなよ!お前ごときが僕より上のわけがないんだ!!」
倒れた久我に蹴りを入れる。これまでのストレスを発散するかのように。
だが、それもすぐに終わる。
銃声。
それは小宮を止めるのには十分だった。
『小宮様、“暴力行為”により“罰”を与えます』
アルファの声が響く。
倒れこむ小宮。どうやら、頭を撃たれたらしく即死のようだ。
神木はそれらを見ていたが呆然として動けなかった。
最終日に1人目の犠牲者が出た瞬間だった。
「こ、、こみや?死んだのか?」
神木は目の前のことが信じられなく言葉にする。
「死にましたよ、呆気なくね」
それに答えるのは今まで倒れていた久我。
時計を見て、神木に告げる。
「神木さん、“貿易”をしましょう。時間がない」
時計は12時の5分前を指していた。
「あぁ、、、そうだな」
そうして、神木はタバコをレジに置く。
「あ、すみません。自分の品を忘れた。ちょっと、今体が痛くて早く動けないから取りに行ってもらってもいい?」
「、、、、ちっ、仕方ないな」
バックヤードに置いてあることを伝え神木に取り入ってもらう。
すぐに神木は帰ってきた。
神木が持ってきたチョコをレジに置く。
「ん?タバコは何処だ?」
神木が聞く。
「え?持ってきてないの?でも、時間はないからとにかく“貿易”をしよう。あとで品物をもらえれば大丈夫だから」
そうして、アルファに“貿易”を依頼する。
先ほどの流れを見ていたらしく、年齢確認はされなかった。
『それでは、お二人は“貿易”を行うことですね。では“貿易”を許可します。この状態では“貿易”したことになりますが、この後に品物を渡さなければ詐欺行為になりますの注意してください』
案外呆気なく終わった“貿易”。
あとは品物を交換するだけ。
「とりあえず、チョコを渡しますね。早くタバコを持ってきてね」
「あ、あぁ。、、、おかしいな、出しといたと思ったんだが」
そして、神木は取りに行く。自分の物を置いてある場所へ。1週間の間に生活していたスペースである漫画や雑誌を置いてある場所へ。
『時間です、ゲーム終了です』
アルファが全体に聞こえるように言った。
それは神木にも聞こえていた。
すぐに帰ってきた神木の手にはタバコがあった。
「時間切れだね、神木さん。品物を俺に渡せてない、これは“詐欺行為”だね」
帰ってきた神木を嘲笑うかのように言い放つ久我。
『神木様、“詐欺行為”により“罰”を与えます』
アルファが持つ銃口は神木を狙う。
「お、おい待てよ?可笑しくないか?」
「何が?」
「、、、、、、まさか、お前、、、」
「ううん、違うよ。確かにタバコはこのレジの上に置いてたよ。でも、それは取ってない。それは“泥棒行為”になるからね」
「でも、俺は確かに置いたはず」
「もしかしたら」
神木の言葉を遮り言う。
「もしかしたら、誤って落ちたのかもしれませんね」
久我の足下には確かにあった。
神木が“貿易”で渡すはずだったタバコが。先程は気がつかなかったが、あったらしい。神木の足の死角に。
「、、、、、なるほどな。最初から俺を殺すつもりだったのか」
諦めた神木はアルファの方を見た後、もう一度久我を見る。
「最後に聞いていいか?」
「何を?」
「どうして俺を殺すんだ?このゲームのルール上俺も生き残れたはずなんだが」
「あぁ、それはね、、、、」
笑いながら久我は神木に言った。
「俺のことをガキって呼んだから」
その答えを聞いた神木は、
「ふっ、やっぱガキじゃねぇか」
の言葉を最後に命を失った。アルファの銃により。
『久我様、勝利おめでとうございます』
アルファは生存者である久我の元へ近づく。
『さすがですね。久我様なら無事勝利すると思っていましたよ』
「ん?」
『久我様については少し調べさせてもらいましたから。貴方は子供の頃にクラスメイトを死に追いやっていますね』
「何のことかな?」
『クラスで何度もイジメがあったはずです。しかし、どのイジメも死者が出ています。、、、、、イジメの加害者の』
確かに久我の生きてきた中でイジメの現場を見ることはあった。幸いに自分がイジメられることはなかったが。
『何をしたのですか?』
「うーん、何だが全部俺が悪いみたいになってるけど。俺は何もしてないよ」
そう、何もしていない。
「イジメをしている人たちに言ったんだ。『君たちがイジメをしていることは先生に言ったりはしない。俺は普通に生活をしたいからな。だから、勝手にどうぞ』とね。そして、例え目の前でイジメを行われていても黙っていた。見ていた。ずーっとね」
見ていた。目を逸らさずに。そして、黙っていた。告げ口も止めもせず。
すると、不思議だがイジメていた人たちはいじめを止めて次第に学校にも来なくなった。
『見ているのに止めない相手への疑心感と、いつ告げ口をされるのだろうかと感じるプレッシャー、それらがストレスになって追い込まれたのでしょう』
実際に死亡した5人の加害者は、全て自殺になっている。
彼らの残した遺書には、【日常から逃げたかった】と書かれていた。それはイジメていたことに対してなのか、自殺に対してなのかは分からない。しかし、彼らの自殺はとある人物の言葉が引き金になっていた。
『楽しい日常をありがとう』
イジメの現場を目の前にして、屈託のない笑顔で告げられた言葉は彼らにしては恐怖の一言だ。
日常を愛してる。そんな彼はある意味、異常でもあった。
「そんなことよりもさ、一つ聞いていいか?」
『何でしょうか?』
「このゲームの目的は何なの?」
共通点のない3人をこのようなゲームに参加させられた理由。それは、ゲームが始まった時から疑問だった。
『目的ですか?それは簡単です。悪人を選んでいるのです』
「悪人を選ぶ?」
『この社会で犯罪を犯した者は何かしらの罰を受けます。しかし、犯罪までとはいかなくても悪人はいます。例えば貴方のような人も』
「俺は罪を犯してないぞ」
『えぇ、そうですね。しかし、客観的に見たら異常者であり悪人にも感じれます。私たちはそのような悪人を選ぶためにこのようなゲームをしたのです』
「極限状態になると人は本性を現すってことか。で、何?悪人を選んでどうするの?罰を与えるのか?」
『いいえ、そのようなことはありません。今回のようなゲームを行う為には多額の費用がかかっていますから』
多額の費用。それならさらに疑問だ。
いったいこの後俺はどうなるんだ?
日常に戻れるのか?
『それでは久我様』
その久我の疑問はすぐに解消される。
『しばし、お別れです。貴方が無事選ばれることを心から応援しています』
その言葉を最後に久我は意識を失った。
あぁ、日常に帰りたい、、、
その願いは叶うのはまだまだ先のようだ。
勝者
久我和樹
敗者
小宮智史
神木竜司
〜コンビニ貿易編、ゲームクリア〜
はじめまして。
九条ハイネです。
この名前での1作目の作品が無事終わりました。
拙い文章ですが、ここまで読んでいただきありがとうございます。
一応、ここで完結ですが、
シリーズ物のつもりです。まだ伏線を全て回収していません。
これは1部でして、4部まで書くつもりです。
なので、これからも読んでいただくと嬉しく思います。
では、次回の作品。
【悪戦苦闘〜サンセットルーレット〜】
でもよろしくです。
ありがとうございました




