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なまえ。
螢。此の名前は嫌いだった。
螢。男の子みたいだった。
螢。儚い命だった。
それに苗字は儚季。
もううんざりだった。
でもね、貴方に此の名前を呼ばれるたび好きになれるんです。
照れくさいですね。でも、案外気分はいいんです。
本当の両親に由来を聞けぬまま、両親はいなくなってしまったのですから、
由来なんて勝手に決めていいですよね。
多分詩詠さんに呼ばれるために、
覚えてもらえるために此の名前になったのですよ。
「螢」
「何ですか?」
「君の名前は呼びやすいし、響きが良くて好きだ」
「こんなことを言ってくれたのは、貴方が初めてですよ」