rest in peace.死者よ、安らかに眠れー2
「何アレ」
「墓だ」
「ハカ……あー、何となくわかるわ。死んだ奴の骨を置いてる所だろ」
「人間界で信仰されている宗教というものによってばらつきがあるが、ここはそうだな。墓石という石の下には肉体を焼いて残った骨が安置されている」
「ほうほう」
ソールに連れられて、俺は灰色の石がたくさん置かれている場所に来ていた。
「あの人間達は何をしてるんだ?」
俺はたくさんの墓の中の一つに花を手向け、会話している男女を指差した。
彼らからは俺達は見えていないし、声も聞こえていない。
「あれは……死んだ人間の生物上の……」
「は?わかるように言ってくんない?」
「……家族。死んだ人間の家族だろう」
「へえ」
「……」
「……」
いつも口数が少ないソールがいつもにまして無口なので、俺は退屈だった。
“最終確認“がどんなものか知らないが、なんだってこんな辛気臭い場所に来なきゃいけないんだ?
周りを見渡してもたんぼや畑ばかりだ。何処の田舎だ?ここは。
もっとごちゃごちゃした、人間も建物もひしめき合ってる場所にいた気がする。
でも……ここはここで、いいなと思う。
肉体を持っていたらきっと大きく深呼吸したくなるような場所だ。
「夏生、今日で三年やね。どうね?佐賀は良か所やろ?」
穏やかな口調で女性が墓に語りかけた。
「うん、良か良か」
隣の男性がそう言うと、女性は吹き出した。
「佐賀弁、板に付いてきたやない」
「そうやろ。ハハハ」
「夏生、お父さんもお母さんも仲良く暮らしとるけんね。ここで見守っとってね」
「ちゃんと聞こえたけんね、夏生……ありがとうって言ってくれたの、ちゃんとわかったけんね……」
……ありがとうって言ったの……ちゃんとわかって……。
何だろう、俺は……生きてもないのにあたたかいものが身体の内側から沸き上がるような感覚を体験した。
「ルース……ルース?」
「わっ」
肩に手を置かれ、俺は飛び上がりそうな程驚いた。
「ソール、ビックリしたあああ。死ぬかと思った。死んでるけど」
「それは悪かった。どうかしたのか?あの男女が何か?」
ソールはまた何か探るような目で俺を覗き込んだ。
「いや……」
振り返ると、墓参りを終えた二人はこちらに背を向けてゆっくりと歩いていた。寄り添うように、手をつないで。
なんかよくわかんないけど、その墓の下で眠ってる奴は死ぬ間際に゛ありがとう゛って言ったんだろう。
お父さんもお母さんもと言っていたからあの二人はきっと死んだそいつの両親……最期の言葉は、ちゃんと伝わってた。
良かったな。ナツキ……だっけ?男なのか女なのか知らないけど。
骨になったそいつにも、あの二人の言葉が、思いが届いてたらいいな。
「ルース……そろそろ行くが、いいか?」
ぼんやりと彼らの背中を見ている俺の肩に、ソールがまた手を置いた。
「うん、いいよ」
何をどう確認したのか俺にはわからなかったが、ソールはこれで確認は済んだと言った。




