建国計画
「わあ、おいしー」
語尾にハートマークが付いていそうな感嘆の声を上げ、ルシフェルは苺を頬張った。
“主人“である美少女ルシフェルは“奴隷“である俺にファミレスで苺パフェを奢らせた。
そしてクリームを口の周りにつけたまま異世界について語り出した。
「フェアビューランドに私の王国を創りたいの。その為には、たくさんの命をあっちに転生させなくちゃいけない。村に住む人達、森には妖精がいて……あと、家畜なんかも」
「家畜って牛とか豚?それもこっちから転生させないといけないのか?」
「当たり前じゃない。魔法みたいにごちそうを出す訳にはいかないのよ。馬鹿ね、ナツキ」
パフェを奢らせた上、馬鹿呼ばわりするとは……可愛いから許す。
「今、フェアビューランドの住人は完全なベジタリアンなの。家畜類を確保しなくちゃ」
「はあ」
ズズズとコーラを啜る俺に向かってルシフェルは講義でもするように身振り手振りで説明する。
「ハンバーグ好きでしょ、ナツキ。今あっちに完全に移住しちゃったら、食べられないんだよ。だからナツキにはハンターになってもらおうかと思って。」
「はああ~?」
だからなんで俺……と不満を口にしようとすると、それを察知したルシフェルの手が俺の口を塞いだ。
「家畜は繁殖させるようにするから、ずっとこっちから送り続けなくても大丈夫。人間だってそのうち誰かと誰かが結婚して子供が生まれて増えていくでしょ」
「はあ」
「何か質問は?」
なんだか先生と生徒みたいなやり取りだ。ごっこプレーは嫌いじゃないのでノッてみる。
「はい。チート能力とかチート武器とか、そういうのないんですか?あるだろ、普通」
俺の言葉にルシフェルは首を傾げた。
「ちー?そんなものないよ。いいからさっさと働きなさい!」
チェッ、ないのか。ますますめんどくさいな。
俺が読んだことのある異世界モノは、大抵他を圧倒する能力を備えていて楽々と問題解決していく物語ばかりなんだが。
……まあいいか。俺が決めればいいんだ。
自分に都合のいい人間を選んで転生させればいい。
このルシフェルを出し抜くのはそんなに難しくないだろう。
彼女の下で働いているように見せかけて徐々に主導権を握り、新世界の神になるのもいいな。
悪くない、悪くないぞ。おもしろくなってきた。
「じゃあ、まずは人間からだな。ここには牛や豚はいないし……で、どうやんだ?」
俄然やる気になってきた俺にルシフェルは真顔で即答した。
「キスよ。転生を望む人間を捜して、キスで転生させるの」




