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たとえばこんなディストピア  作者: おきをたしかに
*キスから始まる異世界転生*
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楽園ー3

 俺の足元に石礫(いしつぶて)とそれによって頭部を割られたウサギがぐったりと横たわっている。

 街から来た男二人は俺に軽く会釈し、ウサギを拾い上げた。

「どうも、ナツキさん」

「さっさと血抜きしよう」

 一人が慣れた手付きで作業を始めた。

 ナイフで下から上へ腹を裂くと、まだ息があったのかウサギはビクンと痙攣し、そして動かなくなった。

 内臓を掻き出し、切り裂いた腹を草に押し付けてドクドクと流れ出る血液を大地に吸わせる。

 テキパキと行われる一連の作業を、俺はただ見ていた。

「皮を剥ぐのは街に帰ってからだ。さ、行くぞ」

「セシルが毛皮を欲しがってたな。今日はウサギ料理かあ~」

「いやいや、肉ってのはな、熟成期間が要るんだよ。だから晩飯は昨日の…」

 和気藹々(わきあいあい)と話しながらを街の方へ帰っていく男達。

 俺は何も出来なかった。

 あまりにも普通に、美絵子は狩られた。狩りは補食する為の当たり前の行為だ。

 彼らは知らないんだろう、あのウサギが元は自分達と同じ世界で生きていた女子高生だということを。

 知ってたら、あんなこと出来ない。

 やり直したいと言っていた美絵子はこっちに来られて幸せそうだった。

 だけど――――自分から望んでウサギになった訳ではなさそうだった。

 あんな小動物になれば当然人間や他の動物から“獲物“として狩られるリスクがある。

 ルシフェルの悪意を感じずにはいられなかった。

 俺は街の方へと(きびす)を返した。

「!」

「ナツキ」

 そこにルシフェルが立っていた。


◇◆◇


「ルシフェル……この魔女め!どの面下げてノコノコ出てきやがった。丁度いいぜ。これから街に降りて皆の前でお前の正体を暴いてやる。来いっ」

 腕を強く掴んでもルシフェルは微動だにせずに言った。

「それでいいわ。でも、その前にちょっとだけ付き合って」

 そう言って彼女は街とは反対方向へと俺の手を引いた。

「どこへ……?」

 ルシフェルが無言で指差した方向には、鬱蒼とした森が広がっていた。

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